17.オンリーワンな後輩の憂鬱
閑話休題。未だデブ研部室内。
「そもそもなんですけど、先輩はあの元部長さんのどこを好きになったんですか?」
「……だから、俺は好きなんて一言も」
「もう言っているようなものじゃないですか。あんな反応じゃ誰だってすぐに分かると思いますけど」
「仮にそうだとしても、お前に答える義務はない」
「そんなこと言わずに教えてくださいよぉ。茶化そうとかってわけじゃなくて普通に応援したいだけなんですから」
ダウトだ。目つきと雰囲気で分かる。
あわよくばからかうためのネタにしてやろうという気概が感じられる。
「だって今のところ謎でしかないですもん。元部長さん、顔見せだけしては帰っちゃうだけですし。絡む機会とか全然なかったじゃないですか」
「今のところはほぼお前のせいだけどな」
「確かに美人さんですし、スタイルもよさそうですし、男子受けよさそうな感じだってことは分かるんですけど……なんか言動が変わってるというか、かなり謎めいた人じゃないですか? 元部長さんって」
「どう考えてもお前の方が謎だらけだと思うんだが……」
「このままだとあたしの中で、先輩があのちょっと風変りな元部長さんの顔と体目当てで好きになった人、という認識になっちゃいます」
聞き捨てならない認識だった。思わず読みかけの小説から顔を上げる。
「万が一、いや億が一そうであっても詰られる謂われはないわけだが、そんな浅はかな男だと思われるのは癪に障るな」
「あたしだって先輩がそんな薄っぺらい理由で人を好きになるような人じゃないって信じてますよ? そもそもそんな理由だったらあたしに対してもアプローチしてるでしょうし」
「それはなにか? 自分の容姿が冴姫さんと同レベルだと主張しているわけか?」
「系統は違いますけど、いい線いってると思いません?」
「言っておくが、お前と冴姫さんじゃ月とすっぽん、女神とハエくらいの差がある」
「ちょ、人間ですらないんですかあたし! ていうかなんでよりによってハエ!?」
「ウザいから」
「ハエと同レベル……!」
むしろ簡単に潰せない分、ハエよりウザったいが。
さすがにそこまで言うのは酷かもしれない。
「いや、やっぱりハエよりウザいな」
「デリカシーの欠片もない追い打ちっ!」
「ああ、悪い。心の中に留め切れなかった」
「そんなあふれ出るほどウザいんですかあたしっ……でも、いいところもありますよね? ほらほら、こんなに絡みたがりで楽しい後輩女子なんて、そうそういなくないですか? ナンバーワンでなくとも特別なオンリーワンではありますよね? ねっ?」
昨日よりも更にウザいテンションだった。
それといちいち声がデカ過ぎる。隣の部室とかに聞こえていないか心配だ。
もし聞こえていたら、デブ研は漫才部にでも鞍替えしたのではとか思われるかもしれない。断じて違うが。
「はぁ~……酷いです先輩、こんなに可愛くて構いたがりな後輩を蔑ろにするなんて」
「人のフラグを折ろうとするのも大概だと思うが?」
「それは不可抗力ですよぉ。大体、可愛い女の子と部室に二人きりなんて、普通ならもっとドキドキしてもいいシチュエーションだと思うんですけど」
「まあ、ある意味ドキドキはしたけどな。冴姫さんにあらぬ誤解をされたんじゃないかって」
「……うー、先輩のいけず」
テーブルにぐてーっと突っ伏す志賀。
結局こいつがなにをしたくて絡んでくるのかは有耶無耶にされている気がした。
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