表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウザいけどカワイイ後輩と四六時中ダベる日々。  作者: かるたっくす
2年・春――後輩、ときどき押しかけ新妻的な日々
11/57

11.そういうこと言う人、嫌いです



「ほらほら、冷めないうちにどうぞ。先輩のご飯食べちゃったお詫びですから」

「そうか。まあ、それなら食べざるをえないな」

「そんな、不本意ながらみたいな言い方しないでくださいよぉ。スーパーのお総菜よりはおいしい自信ありますから」

「へえ……それじゃまあ、いただきます」


 まんまと志賀の思惑通りに進んでいることは気に入らないものの、空腹には抗えない。

 とりあえず一口食べてみた瞬間、俺は確信した。

 ……うん、これはうまいカレーだ。


「お味はどーですか、先輩?」

「ん? ああ……」


 思わず、感嘆の言葉を素直にこぼしかけた。

 けれど見つめてくる志賀の顔があまりに得意げだったので、なけなしの素直さが喉の奥に引っ込んでいく。


「食べられないこともないかな」

「ふふっ、そうですか。それならよかったです」

「……本当にいいのかよ。こんな適当な感想で」

「はい。先輩の顔を見つめていれば、本当はどう感じてくれているのか分かりますから」


 読心術者かお前は。

 しかしそう言われると、なるべく顔に出さないよう無愛想を心がけてしまいたくなる。


「ここでクイズです。このカレーの隠し味はなんでしょう」

「なんだ藪から棒に。そんなの分かるわけないだろ」

「えー。じゃあもっとよく味わって食べてくださいよ」

「隠れているから隠し味なんだろ。味わって食べて分かるようなら隠れていない」


 俺の正論に、志賀はたいそうつまらなそうな顔をして、


「仕方ないですねぇ……先輩なら絶対分かってくれると思ったんですけど」

「俺なら?」

「正解は、『可愛い後輩のたっぷりな愛情』でしたから」


 にっこりと笑って答えを明かす志賀。

 今回に限ってはからかっているところではなさそうだが、それだけに余計謎だ。


「それのどこが、俺なら絶対分かるってことになるんだ」

「え? だって最初に言ったじゃないですか。『愛情たっぷり』の手作りカレーだって」

「ああ、なるほど」


 思いのほか論理的だった。これは一杯食わされたかもしれない……色んな意味で。

 その後は黙々と食べ進め、すべて平らげてしまった。ジャガイモが入っていないタイプのカレーだったためあっさりめだったが、個人的にはこの方が食べやすくて好きかもしれないと思った。


「ごちそうさま……まあ、一応礼は言っておく」

「ふふっ、お粗末さまでした。気に入っていただけました?」

「まあ、おいしかったよ。意外と料理上手なんだな」

「意外とは余計ですっ。でも、お口に合ったのならよかったです。先輩の胃袋はがっちりと掴んでおきたいですし」

「なにがお前をそこまで駆り立てるんだ……」


 部屋が隣になったのは、一人暮らしをする口実に利用されたと見ていい。

 しかし、わざわざ俺と同じ部活に入ったり、ここまで俺に絡んできたりする理由が分からない。

 部室で訊いた時には――恨みがある、なんて言っていたが。


「じゃあ先輩、今日のところはこれで失礼しますね。あたしも色々あって疲れてしまったので」

「え? いや、まだ訊きたいことが山ほど――」


 そう言いかけた俺の口元に、志賀の細い指がぴとりと当てられる。


「ダメですよ先輩。女の子をこんな時間まで引き留めるなんて」

「……こんな時間に上がり込んできたのはどっちだよ」

「そういうこと言う人、嫌いです――なんて冗談はともかくですね、積もる話はまた明日にでも。安心してください。明日はもっと先輩に気に入っていただける料理、作ってきますので」

「――っ」


 単なるからかいとは思えない、柔らかな微笑みに不意を突かれる。

 志賀は空になったカレー皿とともに、「また明日~」と退散していった。

 静けさを取り戻した部屋の中で、俺は正気を取り戻し、


「……ていうか、明日の晩も作る気なのか?」



ブックマーク20件ありがとうございます

ご評価(下記の☆)やご感想の投稿もお待ちしております~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ