29 ゴブリンから得たもの
よりたくさんの方に読んでもらえるチャンスがあるという事で、ネット小説大賞にエントリーしてみました!
ステータスのHP部分を修正し、レベルアップ前の数値も表示しました。
『あらかた回収したな』
「大量」
『おう。魔石値が一気に200近く貯まったからな』
上位種が多数いたとはいえ、雑魚のゴブリンも100匹以上は確実にいただろう。
『しかし、魔獣が全然寄ってこなかったな』
「ん。楽ちん」
これだけ血の匂いが充満していて、魔獣が感じ取らないことはないと思うのだが。そばに寄ってくると、急に方向転換して去って行ってしまうのだ。知能が低くても、この惨状を目の当たりにすれば、恐怖を覚えるのだろうか。フランが言う通り、回収が楽に済んで良かったけどな。
『新しいスキルもいくつかあるぞ。しかも、面白そうなやつばかりだ』
今回の戦いで得た物で、1番大きいのは勿論フランの成長だ。ただ、それ以外にも色々手に入った。物理的にね。
折れたり錆びたりした物を除いても、鉄製、青銅製の武器が50本。防具も僅かにある。まあ、臭いし汚いしで、防具のほとんどは捨てることになったけどな。魔力を帯びたアイテムも少しあったのは、大きい収穫だ。詳しいことはあとで調べよう。
新しいスキルはこんな感じだ。
詠唱短縮、軽業、眷属契約、蹴脚技、蹴脚術、死霊魔術、毒吸収、毒魔術、斧技、不動心
ホブゴブリン・ダークメイジ、ホブゴブリン・ネクロマンサー、ホブゴブリン・グラップラー、ホブゴブリン・グラディエーターという4種から得たスキルだ。
まあ、問題もあったのだが。
『ホブゴブリンがいたな』
「ん」
新スキルを提供してくれた4匹は、ホブゴブリンだった。そのステータスは、以前に倒したゴブリン・キング以上だったな。という事は、すでにゴブリン・クイーンが生まれていて、繁殖が始まっているという事か?
『なあ、ゴブリンって、成長が早いのか?』
「うん。10日くらいで、大人になるらしい」
『まじで昆虫並みだな。だとすると、ヤバいんじゃないか?』
ホブゴブリンの大繁殖の可能性有りか。
『冒険者ギルドに報告に戻った方がいいな。俺たちだけで狩りたいところだが、放っておいたら大きな被害ができるかもしれん』
「ん」
とりあえず、ホブゴブリンの死体だけ回収しようとしたのだが――。
『フラン!』
「ん」
俺は突進するような速度で、フランに向かって飛びついた。フランは慌てず、俺の柄をガシッと掴む。
「あそこだ!」
「おい、これ全部ゴブリンか?」
「なんだこの惨状は……!」
『手間が省けたな』
冒険者たちのようだった。数時間前に助けた、駆け出したちの姿もある。彼らがゴブリンについての報告を行い、人員が派遣されてきたのだろう。
危ない危ない。もう少しで、勝手に動いている場面を見られるところだった。
「お嬢ちゃん! 大丈夫か!」
「怪我は?」
「大丈夫」
「これは……全部お嬢ちゃんが?」
「ん」
フランが頷くと、10人の冒険者たちは、一様に驚きの表情を浮かべる。
「この数を……1人で、だと?」
「それが本当なら、ランクE……。いや、狭い巣穴ではなく、大軍を1度に相手にするのは、ランクD冒険者並。いや、それ以上だぞ」
「え! ランクD?」
「まじで?」
なんか勝手に盛り上がっているな。確か、冒険者のランクは、モンスターの脅威度に合わせて決められるんだったか?
同じランクの魔獣を、十分に準備した上でパーティを組んで相手にして、死なないで対処できるレベル。それと、1つ下のランクの魔獣だったら、単独で相手にできるレベル、だったかな。
つまり、ランクEの冒険者なら、同ランクの冒険者4~6人でパーティを組んで、脅威度Eの魔獣1匹を狩れるレベルだ。そして、ランクFの魔獣なら、1人で討伐できなくてはいけない。
『え~と、ゴブリンは1匹でG、10匹でF、100匹でEだよな』
1人で100匹のゴブリンを倒したフランは、低く見積もってもランクDの実力があるってことか。しかも、今回は、100匹超えで、上位種を多数含む上、相手に有利な森林で同時に相手にした。それが、冒険者からの評価をやや上げているらしい。
リーダーらしきドワーフの男性が、仲間に説明してやっている。うんうん。フランが褒められてるのを聞くのは気持ちがいいな。もっと褒めていいんだぞ?
ただ、フランはそう言った評価はあまり気にならないようだ。ドワーフの言葉を遮って、ホブゴブリンの死体を目の前にドサッと置いた。
「これ」
「これは、ホブゴブリンか?」
「あっちにも」
「しかも、4匹?」
「すでに、巣穴の外に、ホブゴブリンが出ている段階か!」
どうやら、結構ギリギリの事態らしい。このまま放置しておけば、10日以内に、ゴブリンスタンピード、つまりゴブリンの侵攻が起きるという事だ。
「おっと、すまない。自己紹介がまだだったな。俺はエレベント。アレッサのD級冒険者だ。名前を伺ってもよろしいか?」
「フラン」
「旅の方かな? ここでゴブリンを食い止めてくれたこと、感謝する」
「? 私はアレッサの冒険者」
「む? いや、わしはアレッサに10年以上いるが、お嬢さんを見た記憶がないが……」
これだけ小さくて美少女で、しかも強いフランを、見逃すわけがないという表情だな。エレベントのパーティメンバーらしき、3人の男たちもうなずいている。もう一つの、獣人たちで構成されたパーティも、同様の反応だ。
「登録したのは昨日」
「は?」
「うそ! じゃあ、ランクは?」
「G」
「はぁぁ? これだけ強くて、G? 何の冗談だ!」
「いえ、必ずしもランクと強さは一致しません。エルフなどの中には、森の中で長年修行して、人間界に出てきて冒険者登録をした結果、ランクGなのに、実際はD相当という者もいますから」
「な、なるほど」
「そうだよな~」
「もう、フランさんたら人が悪いんだから!」
ああ、結局そういう結論なんだな。見た目は幼くても、成長の遅い長命種族なら、実は10数年修行をしてきましたという設定が成り立つからな。
『こいつら、勝手に納得したけど、訂正しなくていいのか? きっと、フランのことを、若作りだけど実は年増って思ってるぞ』
(別に)
清々しい程、自己評価が気にならないらしい。残念。こいつらが驚く面が見たかったのに。まあ、説明するのも面倒だし、いいか。
「と、とにかく、クイーンのいる巣穴は、俺たちだけじゃ手に負えない。一旦ギルドに戻ろう!」
「そうだな。悪いんだが、フランさんにも一緒に来てほしいんだがね」
「分かった」
「助かる。じゃあ、戻ろう。事態は一刻を争うからな」
「おう!」
名称:フラン 年齢:12歳
種族:獣人・黒猫族
職業:魔剣士
状態:契約
ステータス レベル:6→12
HP:80→189 MP:71→115
腕力:45→92 体力:34→74 敏捷:46→82
知力:30→50 魔力:36→62 器用:47→63
称号
解体王、回復術師、スキルコレクター、火術師、料理王
〈New〉一騎当千、ゴブリンキラー、殺戮者
フランのステータスはこんな感じだ。ステータスの上りがメチャクチャいい。さらに、称号が3つも!
一騎当千:1戦で、同格以上の敵を、単騎で100体以上退けた者に与えられる称号。
効果:HP+20、腕力+20、体力+20。スキル・不退転を獲得。
ゴブリンキラー:同一戦場内において、ゴブリンを100匹以上葬った者に与えられる称号。
効果:スキル・ゴブリンキラー獲得
殺戮者:同一戦場内において、100の命を刈り取った者に与えられる称号。
効果:敏捷+10。スキル・精神安定を獲得。
スキル
不退転:逆境において、恐怖無効、回復速度大上昇を得る。
ゴブリンキラー:ゴブリンに対して、ダメージ上昇
精神安定:殺傷に対しての、精神的ハードルの低下。その後の、精神の安定効果。
いいなぁ称号。俺も欲しいぜ。剣の体のせいなのか、俺は称号を得られないみたいだからな。それにしても、一騎当千だけが凄まじい。獲得条件も難しいが、これだけでも微チートなんじゃ? っていう効果だ。
あと、重要なことに気づいたな。今更だが、フランが独自に得たスキルは、俺のセットスキルに含まれない。
フランが有用なスキルを覚えてくれれば、俺のセットスキルも色々付け替えることができるだろう。
冒険者と共に町へと向かう道すがら、フランにステータスを教えてやる。
(一騎当千? 激レア)
『そうなのか?』
(英雄の称号!)
あのフランが興奮気味だ。それだけ嬉しいんだろう。
「なあ、お嬢ちゃん、パーティは組んでないのか?」
「パーティ?」
「おう。もし、誰とも組んでないなら、俺たちと組まんか?」
なんと、エレベントからの勧誘だ。その眼は、本気っぽい。しかも、その言葉を聞いた他の2パーティも、声をかけて来たではないか。
「ちょっと待った。俺たちだって、狙ってたんだ」
「抜け駆けはいけません。優秀な冒険者は、どのパーティだって欲しがっているんですよ」
なんか、嬉しいな。フランのことが認められたみたいで。
『だってよ? どうする?』
(私のパーティは師匠)
『俺のことを隠して、他のパーティに加わることも可能だぞ?』
(いい。師匠がいる)
『そうか』
まあ、俺の能力を見られるわけにはいかないからな。パーティを組むのは難しいだろう。
今はね。




