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276 ベスティア王城


 グエンダルファを案内役に、冒険者ギルドを出発して20分後。


 俺たちは王城の前にいた。


『でかいな~。さすが一国の王城』


 ギルドからの道中でも見えてはいたが、改めて門の前から見上げると、その威容に圧倒された。王都ベスティアを囲む壁もかなりの高さがあったが、王城の壁もそれに負けない重厚な造りをしている。


 グエンダルファの説明では、いざと言う時は王城そのものを要塞として籠城できる造りになっている様だ。


 壁の周囲に張り巡らされた水堀も、戦時を意識してなのか、かなりの幅があった。それに深そうだ。


 堀に掛けられた跳ね橋の脇に控えている門番兵にグエンダルファが何かを手渡している。どうやら身分証の様だ。するとグエンダルファだけではなく、フランもそのまま通してくれるという話になった。


「黒雷姫殿の身分は、ギルドが証明しているので問題ない。王への謁見も即日できるレベルの身分証だ」


 手紙を持ってきただけで随分と信頼されたものだと思ったが、フランを取り込みたいという思惑もあるんだろうな。


 フラン自身はまだよく分かっていないが、獣人国内での注目度は凄まじいものがある。何せ、進化できないと言われていた黒猫族なのに進化しているという、正に伝説的と言ってもよい存在だ。獣人国を旅してみて、その影響力はよく分かった。


 そのフランの信頼を得ておくと言うのは、今後何らかの利益を生む可能性も高い。


 獣王が身分証を発行してくれたのも、同じことを考えているからだろう。いや、獣王は何も考えていないかな? ただ、護衛兼参謀のロイスあたり絶対に考えていたと思う。


 その思惑を後押しする訳ではないが、俺たちは獣王からもらった身分証を出すことにした。王城という未知の場所に入るにあたり、より上位の者の許可があった方が安全だろうと考えたのだ。王城内で何か不測の事態が起きないとも限らんし。


「これ」

「これは……少々お待ちください!」


 王城の入り口にも、身分証が本物かどうか判別する道具があるらしい。兵士が渡された身分証を水晶の様な物にかざしているのが見えた。その後、丁重な態度で身分証を返してくる。


「お、お返しいたします。お、お通り下さい」

「まさか獣王の印が押された許可証を持っていたとは……俺は必要なかったな」

「そんなことない」

「そう言っていただけると有り難いが……」


 グエンダルファは自分があまり役立っていないと思ったようだが、フランが言う通りそんなことはない。


 俺たちだけだったら、絶対に疑われていただろう。許可証が本物かどうか、もっと長時間拘束されていたはずだ。それが回避できただけでも、十分有り難かった。


 態度も驚くほど変わったし。犀族って言うのは、それだけ実力主義なんだろう。ゴドダルファもグエンダルファ程酷くはないが、フランに負けた後に世話を焼いていた。


 そして門をくぐると、再び大きな壁が目に入る。


「また壁」

「その向こうが城になっている」

「どういうこと? じゃあ、ここは?」

「ここは主に、兵士や使用人の詰め所や住まい、出入りの商人の取引所などが設置されている場所だ」


 なるほど、王城で働く王侯貴族以外の人間が集まる場所ってことね。


「この壁の向こうが、真の王城と言えるだろうな」

「どうやって入る?」

「こちらだ」


 壁に沿って少し歩くと、表門に負けないくらい大きな門が見えてきた。グエンダルファはその脇にある屋敷に入っていく。


 そこは王城に入る際の受付だった。入り口と同じ様に複数の兵士が常駐しており、王城の中に入るためにはここで申請せねばならないようだ。


「キアラ師匠にお目にかかりたい。取り次ぎを頼む。グエンダルファと黒雷姫が来たと伝えてくれれば分かって下さるだろう」

「分かりました。少々お待ちくださいませ」


 俺たちはそのまま兵士の案内で、それなりに豪華な個室へと通された。この受付の建物が屋敷サイズなのは、客室が複数用意されていることが理由らしい。


 取り次ぐ相手によっては長時間待たされる場合もあるだろうからな。客の中にはそれなりの有力者もいるだろうし、その辺で立って待ってろとは言えないんだろう。


 召使さんがお茶と軽食を持ってきてくれたが、フランたちによって一瞬で食べつくされてしまった。グエンダルファもその巨体に相応しい食べっぷりだな。


 ふかふかのソファに腰かけながらしばし待つ。すると、グエンダルファが感心したようにボソッと呟いた。


「やはり黒雷姫殿の名は凄まじいのだな」

「どういうこと?」

「この部屋は貴族の、それも上位者用の部屋だ。先程の茶と菓子も、かなりの高級品だろう」


 へえ、そうなのか。部屋はともかく、グエンダルファにそんなことが見極められるのが意外だな。フランもそう思ったようで、グエンダルファをまじまじと見つめる。


「そう不思議そうな顔をしないでくれ。これでも、族長に連なる家系の長子だ。若い頃はそれなりに御曹司をしていた事もある。すぐに飛び出して冒険者になってしまったがな」


 意外にも貴族的な幼少期を過ごしたらしい。いやー今の姿からは想像もできないな。冒険者になったのは、ゴドダルファの後を追ってなんだろう。


 グエンダルファの意外な姿を知ったところで、召使ではなく女官風の女性が2人を呼びに来た。その後に付いていくと、いよいよ王城の内部に入ることが出来る。


「キアラ様はこちらのお部屋でお待ちです」


 結構入っていくな。途中何度か大きな扉を通ったし、王宮でもかなり奥に位置する場所なんじゃなかろうか?


「以前なら郊外の演習場に行けば気軽に会えたんだがな。お体の調子を崩されてからは、王城の奥に与えられた居室でお休みになられていることが多いんだ」

「調子が悪い? 大丈夫なの?」

「お歳も召しておられるので心配ではあるが、こうしてお会いできると言う事は、深刻な状況ではないはずだ」


 70歳近いんだしそれも仕方ないのだろう。


『いよいよだな』

「ん」


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