1262 強者3人
ドゴン!
強力な結界が張ってあるはずの鉄の大扉が、メコリと凹んだ。
さらに数度、金属がひしゃげる音が反響する。
そして、数秒の間が空き、一際大きな音が地下空間に響き渡った。
扉が向こう側から吹き飛ばされ、こちらへ向かって回転しながら迫ってくる。このままではアマンダや、抱きかかえられているペルソナ。目を覚まさないペルソナを回復し続けるマールに直撃コースだ。
俺やフランが咄嗟に動いたが、それよりも早く動いた人物がいた。
「ふん!」
白き衣を着こんだ褐色の人物がペルソナたちの前に飛び出すと、大剣で鉄扉を弾き飛ばしたのだ。
「ユヴェル」
「今の俺は配下。雑事は任せろ。それに、子供を守るのは、騎士の仕事だ」
「おお? 久々にユヴェルの騎士発言聞いたね! その鉄面皮で子供好きなんて意外~!」
オルドナの言葉に、ユヴェルがそっぽを向く。照れているのかね? ユヴェルはツンデレさんであるようだ。
それに今の身のこなし。俺やフランだって油断していたわけじゃない。魔力が近づいてきていることも悟っていたし、鉄扉にも余裕を持って対処しようとしていた。
だが、ユヴェルはそれよりも速かったのだ。
明らかに剣王としての実力が発揮されていた。やはり、フランと戦った時は手加減していたな。今、剣だけでやり合ったら、勝てるかどうかわからないのだ。
ユヴェルも、他の英雄ゾンビたちも、警戒の構えを解かない。
破壊された入り口の向こうから、禍々しい魔力を纏う凶悪な存在が姿を現したのだ。
「うがあああああぁぁぁ!」
「マレフィセント」
『憤怒が発動中だ!』
赤いオーラに包まれたマレフィセントを鑑定するが、神剣開放中であるせいか全ては見えない。だが、状態が憤怒だし、スキルにも憤怒が見えた。
ヘルを使っていると悪魔に精神が侵食されるらしいが、今は憤怒の悪魔に乗っ取られかけているらしい。
「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!」
般若のような表情のマレフィセントが、咆哮を上げながら突っ込んでくる。だが、憤怒に呑まれて暴走しているはずのマレフィセントは、ある一点を見て立ち止まっていた。
その視線は、アマンダが抱きかかえるペルソナに釘付けだ。
「ぺる……そな……」
微かに呟き、動きを止めるマレフィセント。
マレフィセントの瞳は黒と白が反転し、額には角が生え始めている。明らかに憤怒の悪魔と化しているが、まだ完全に乗っ取られてはいないらしい。
目を大きく見開き、ペルソナを見つめる。その表情はまるで、必死にペルソナから目を逸らさぬようにしているようだった。
「あ……が……」
必死に悪魔に抗うマレフィセント。
だが、そこに新たな影が突っ込んでくる。
「死ねぇぇぇぇ!」
『ラランフルーラ!』
入り口から次に飛び込んできたのは、怒りの咆哮を上げる少女であった。薄紫のトライテールを振り乱しながら、巨大な戟を叩き付けてくる。
「させない!」
「小娘! 生きていたかっ!」
以前に比べても、数段上の魔力を纏っていた。最早、神剣を開放した強者たちと比べても遜色ない強さだろう。
それでも、俺たちだって成長している!
竜の首さえ落とせそうなその斬撃を、守護神の盾を使って真正面から受け止めていた。衝撃が通ることもなく、ラランフルーラは反動で弾き返される。
勢いに身を任せ、フランから距離を取るラランフルーラ。
仕切り直し。誰もがそう考えたその不意を突くように、その影から何かが飛び出してくる。
それは、黒い魔力を放つ骸骨だった。
『今度は、ネームレス!』
あってよかった守護神の盾! 驚きの硬さで、強者の攻撃でも砕けません! まあ、消耗はかなりデカいが。
やはり、この2人の攻撃を受け止めるには、凄まじい魔力が必要であるらしい。俺が驚いたのは、ネームレスの攻撃力だ。
ラランフルーラは元々化け物じみた身体能力をしていたので、圧倒的な破壊力を持っていることは解っていた。
だが、ネームレスはそこまで一撃が重いタイプではなかったはずなのだ。それが、ラランフルーラの戟と変わらぬ威力の拳打を放っていた。
魔力を取り込んだことで、驚くほどに強化されているらしい。
「これも防ぐか!」
「魔剣ゼライセはどこにやった?」
「さあな!」
ネームレスはあの毒々しい姿の魔剣ゼライセを持っていなかった。隠しているのか、本当に所持していないのか。不気味だぜ。
「その仮面のガキをどうやって……。まあいい、ここで神剣使いもろともぶち殺せばいい話だからなぁ!」
ネームレスは、油断なく身構える。だが、すぐに不審の声を上げた。
「なぜ、貴様らはボーッと突っ立っている? そもそも、なぜここに……? そこの小娘どもを殺せ! 邪魔な神剣使いも殺せ! 疾く殺せ!」
ネームレスからすれば、英雄ゾンビはクランゼルを襲っているはずだし、フランを相手に戦っていないこともおかしく思えるはずだ。
でも、もうそいつらはお前の配下じゃないんだよ!
『アポロニアス、ルッカード、ジンガ、ヴィオレッタはラランフルーラを! ベガレス、ユヴェル、オルドナはフランとウルシと一緒にネームレスを! ロブ、ウィレフォ、テイワスはペルソナを守れ!』
俺の念話を聞いた英雄ゾンビたちが一斉に動き出す。ネームレスは最初は余裕そうに笑っていた。こちらに襲いかかると思ったんだろう。
しかし、英雄ゾンビたちは俺たちには目もくれず、ネームレスたちへと攻撃を加えようとしていた。
「な、に? 何をしている! 操られているだと? くそ! ふざけた真似をぉぉぉ!」
(師匠! ネームレス倒す!)
『おう!』
自分が用意した戦力で、倒されちまえ!




