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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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77.勘違いされたくない?

双葉社Mノベルスfより第一巻が発売されます!

イラストレーターは『ぽぽるちゃ』先生!

3/14発売ですので、ぜひぜひお楽しみに!


 思わぬ質問に、私の身体がビクッと震える。その反応で彼は何かを察したのか、眉をひそませ続ける。


「やっぱりそうなのか?」

「えっと……」


 ユレン君が落ち込んでいるように見える。まさか……知っているの?

 アッシュ殿下の秘密に気づいている?

 ううん、そんなはずない。殿下は誰にも話していないと言っていた。あの発言に嘘はなかったと思うし、ユレン君が知っていたならもっと大袈裟に反応すると思う。

 私が見てきたユレン君なら、大切な家族が命を削っている事実を放置するなんてありえないから。だとしても今の発言はどういう……。


「まぁ興味は出るよな。兄上は強くて優しいし、その上魔法なんていう特別な力まで持っているんだから惹かれて当然か」

「……ん? え?」


 なんだか思っていた反応と違うような気がする。少なくとも、重たい雰囲気とかは感じなくて、ただユレン君が落ち込んでいる。


「あの……ユレン君? なんの話?」

「ん? いやだから、兄上に気があるから魔法のことを調べてるんじゃないのか?」

「……えぇ!?」


 どうしてそうなったの!?

 私はビックリしすぎて書斎中に響くほどの声をあげていた。そんな方向の勘違いは予想外過ぎるよ。


「違う違う! そんな大それたこと思ってないよ!」

「え、でもタイミング的に……」

「確かに魔法に興味が湧いたのはアッシュ殿下とお会いしたのがきっかけだよ? もちろん素敵な方だとも思ったけど、それ以上はないよ!」

「そ、そうなのか? じゃあ俺の勘違いだったか」


 私はうんうんと勢いよく縦に首を振った。勘違いというより早とちりだ。ユレン君の中で話が飛躍しすぎているよ。

 とにかくこれで誤解は解けてくれただろう。大きな声を出したから、心臓もうるさくて呼吸も乱れている。私は深呼吸をして自分を落ち着かせる。するとユレン君はそんな私を、じっとっとした目で見ていた。


「ど、どうしたの?」

「いや、珍しく大袈裟なくらい否定したなと思って……やっぱり何かあるんじゃないか?」

「ないよ、ない!」


 確かに必要以上に激しく反応してしまったと思う。私らしくは……なかったかな?

 冷静に考えると、どうしてあんなに慌てたのだろうか。アッシュ殿下の秘密に関わることでもないのに焦り過ぎた気がする。

 どうしてあんなに必死に否定したのか……勘違いされるのが嫌だったから?

 誰に?

 ユレン君に?

 どうしてなのか……答えはハッキリ出ない。


「少なくともユレン君が思ってるようなことじゃないよ」

「……じゃあ他に何かあるのか?」


 しまった。言い方を失敗した。今の言い方だと、他に隠していることがありますよと思われても仕方がない。ユレン君が私のことを訝しむように見つめる。


「何もないよ。ただ魔法について興味が湧いただけだから」

「……ならいいけど。心配させるようなことだけは……しないでくれよ?」

「うん」

「力が必要になったら相談してくれ。一人で考えるよりも、誰かに意見を聞いたほうがいいこともあるからな」

「うん、知ってる」


 勘違いは解けたけど、ユレン君には心配をさせてしまったみたいだ。今のやり取りで、私が何か悩んでいることを察したのだろう。そしてその内容が、自分には伝えられないことだとも理解したに違いない。

 私は開いていた本を閉じてテーブルに置き、読み終わった本と重ねて持ち上げる。


「よいしょっと」

「もういいのか?」

「うん。いろいろ読んだけど、ここにある書物じゃわからないからね。今日はここまでにしようかなって」


 本音を言えば、もう少し調べていたいという気持ちはあった。だけど、このままユレン君と二人でいたら、私は余計なことを口にしてしまいそうだから……。


「手伝うよ」

「ありがとう」

「いいさこれくらい。この後はどうするんだ? まさか仕事したりは……」

「しないよ。特に予定はないから、街にでも行こうかな」


 王宮にいるとユレン君と会う機会が増えるし、アッシュ殿下もまだいらっしゃる。こんな話をした後だから、二人とは顔を会わせにくいよ。

 二人で本を片付け終わり、テーブルの上が綺麗になる。


「じゃあ私は行くね。ユレン君は調べもの頑張ってね?」

「ああ。仕事がなければ俺も一緒に行くんだけどな。残念だ」

「そうだね……」


 残念……か。今は複雑な気分だけど、普段の私ならきっと同じように思っただろう。どうせ街に行くならユレン君も一緒に……。


「だったら今度休みが同じ日に……一緒に行けたらいいね」

「――そうだな。その時は俺から誘うよ」

「うん! 楽しみにしてる」


 私が笑顔で返すと、ユレン君も嬉しそうに笑ってくれた。今日初めて見せる彼の笑顔にホッとしながら、私は書斎を後にする。

 バタンと音を立ててしまった書斎の扉を背にして、私は天井を見上げた。


「……早く来ないかなぁ」


 驚かされたり慌てたり、短い時間で忙しく変化した私の心も、最後は期待と嬉しさで溢れていた。どんな話でも、どんな場所でも、ユレン君と過ごした後はいつもこうなる。

 彼の声が、言葉が、私にとって何より心地いい。

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