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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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62.お仕事開始!

 奇病に感染した人たちは、アッシュ殿下が所有する建物に隔離している。

 隔離と聞けば押し込められているように思うけど、実際は少し違う。

 医療の提供はもちろんのこと、衣食住に娯楽など、快適な生活が送れる体制が整っていた。

 少しでも不便がないようにという配慮。

 すべてアッシュ殿下の心遣いだ。

 私たちにも仕事用に部屋を貸してくれたり、錬成に使えそうな素材を一通り準備してくれたり。

 細かな所で気を利かせてくれている。


「アッシュ殿下って見た目はごっついのにマメですよね~」

「そういう人だよ、兄上は」


 私は二人と一緒に街を歩いていた。

 街の散策、というわけじゃなくて、ある場所に向っている。

 綺麗な街だし、せっかくなら観光したいという気持ちはゼロではないけど。


「……誰もいないね」

「ああ」


 殺風景な景色を見せられたら、遊んでいる気分にはなれないよ。

 私たちは歩みを速める。

 向かった先は、アッシュ殿下が所有する建物の一つ。

 ここには奇病になった方で、比較的時間が経過している方々が暮らしている。


 中はとても綺麗で白く、殺風景な街中よりも静かだった。

 お部屋が一つずつ用意されていて、中で彼らは生活を送っている。


「こんにちは」


 返事はない。

 亡くなられているわけではないが、危険な状態なのは明らかだった。

 呼吸は浅く短い。

 発熱が続き、急激に体力が消耗されていく。

 茨の紋様はすでに全身を覆い隠そうとしていた。


「酷いですね」

「ああ。アリア、他も確認しに行こう」

「……うん」


 この場で何かしてあげたい。

 そんな気持ちを押し殺して、次へ次へと病室をまわっていく。

 重篤な症状の出ている方々ばかりで、まともに会話をすることも出来ない。


「次で最後の部屋だ」

「ちょっとでも話が出来るといいですね」

「うん、でも……」


 難しい気はしている。

 フサキ君も期待薄でただ口にしただけだった。

 私たちは最後の扉を開け、挨拶をする。


「こんにちは」


 すると――


「いら……しゃい」


 返事が返ってきた。

 病室のベッドで横になっている彼が、虚ろな眼差してこちらを見ている。

 私たちは急いでベッド横に駆け寄った。


「突然失礼します。私は王宮から派遣されてきました錬成師のアリアと言います」

「……錬成師……さんかぁ」

「はい! 少しだけお話を伺えませんか?」

「……ああ、いいよぉ」


 彼は虚ろなままに答える。

 あまり意識がハッキリしているとは言えない状態だ。

 今にも寝入ってしまいそうなほど瞼も半分閉じている。

 長く難しい質問には答えられないだろう。

 そう理解した上で、私は一つだけ大まかな質問をしてみることに。


「この病気になって何か変わったことはありませんでしたか? 気付いたことでもいいので何かあれば教えていただきたいです」

「気づいたこと……熱くて、怠くて、暗いんだ」

「暗い?」


 発熱と倦怠感からくる発言はわかる。

 だけど暗い?

 そんな症状は聞いていない。

 視覚にも何らかの症状が出ているということなのか。

 私が考えていると、彼は続けて語り出す。


「夢を……見るんだ」

「夢?」

「そう……夢だ。暗い森の中で、真っ黒な塊が居座ってる……そいつが……ゆっくり近づいてくるんだ。あれは……魔物……」

「魔物?」


 それを最後に、男性は眠ってしまった。

 声をかけたが目を覚まない。

 どうやら体力の限界が来てしまったようだ。

 当分は目覚めない。

 いやもしかすると、このまま最後まで目覚めない可能性も……


「ありがとうございます」


 私は彼にお辞儀をして部屋を去る。

 それから急いで屋敷に戻り、彼が話してくれたことをアッシュ殿下に伝えた。


「魔物か……そう言ったんだな?」

「はい」

「俺たちも聞いていました。間違いありませんよ兄上」

「そうか、魔物……」


 アッシュ殿下は難しい顔で考えだす。

 所詮ただの夢だと言ってしまえばそれまでだが、私は直感的に無関係ではなさそうだと思ってしまった。

 たぶん私だけじゃなくて、ユレン君やフサキ君も、

 そしてアッシュ殿下も、彼が残してくれた言葉を材料に頭を捻る。


「魔物がこの病に関係してるって可能性があるってことなのか?」

「はい。私もそんな気がします。実際に魔物が原因で広まった病はいくつもあります」

「なるほどな。確かに魔物の数が増えた時期とも重なる。最近ますます凶暴化してるのも無関係じゃないのかもしれねーな」


 そう言ってアッシュ殿下は椅子から立ち上がる。

 

「俺はこれから魔物の対処に行ってくる。お前たちは引き続き頼む」

「魔物の対処っていうのは倒しに行くんですか?」

「ああ、倒してもキリなく増えやがる。まったく困ったもんだぜ」


 やれやれと両手を振るう殿下。

 日に日に数が増し、凶暴化しているという話が気がかりだ。


「あの、もし可能なら倒した魔物の死体を持って来ていただけませんか?」

「ん? おういいぜ。それくらいお安い御用だ」

「ありがとうございます」

「気を付けてくださいね、兄上」

「おう」


 そうしてアッシュ殿下は魔物退治に出て行った。

 私たちは用意してもらった部屋に向かい、錬成台と向き合う。

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現時点でも構いませんので、ページ下部の☆☆☆☆☆から評価して頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします!!

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