表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/84

60.辺境の奇病

 馬車に揺られ、山を越え、川を越え。

 遠いという話は聞いていたけど、想像以上に長い道のりを進んだ。

 馬に跨って行かなかった理由は距離だ。

 途中停泊も含めて一週間と半日。

 とても馬に跨って振動に耐えながら移動できる距離じゃない。


「もうすぐ領地だ。降りる準備をしておけよー」


 先頭の馬車からアッシュ殿下の大きな声が響く。

 後ろに続く私たちの馬車も、彼の掛け声に合わせて微加速する。


「……やっと着くんだ」

「疲れたか?」

「大丈夫! っていいたいけど少し疲れたよ」

「無理ないさ。これだけ長い時間を移動に使ったのは初めてなんだろ?」


 私はこくりと頷く。

 森を駆けまわるほうがずっと楽だ。

 ただじっと座って不規則な振動を感じていることが、これだけ身体にくると知らなかったよ。


「二人は平気そうだね」

「慣れてるからな」

「オレもよく遠出とかしてたんで平気ですよ!」


 二人ともタフだな~

 アッシュ殿下は見た目通り体力がありそうだけど、二人は細いしそんな風には見えないのに。

 私だけ疲れていることが恥ずかしい。

 というより情けないな。


「現地で挽回しなきゃ」


 現地についてからが本番だ。

 到着してテンパってしまわないように、今から頭の中で段取りを考えておこう。

 まずは――


 さらに揺られ数十分。

 私たちはアッシュ殿下が管理するアイル領に入った。

 アイルというのはアッシュ殿下の前に領地を管理していた貴族の家名らしい。

 子供に恵まれず後継がなく、今はもう存在しない貴族の。


 馬車が停まる。

 

「この村で一旦降りるぞ!」


 アッシュ殿下の掛け声が聞こえて、私たちも馬車を降りる。

 到着したのは小さな村だった。

 囲いはなく、森で囲まれている。

 家は数軒、一桁しかないし、人もあまり見かけない。

 目的地はアッシュ殿下の別荘だと聞いていたけど、見た所それらしいものはない。

 ユレン君がアッシュ殿下に尋ねる。


「兄上、ここは?」

「ここが最初に奇病の発生者が出た村だよ」

「なるほど、だから停まったわけですか。おかしいとは思っていたんですよ。この道は兄上の別荘から少し外れている」

「ああ」


 殿下が私に視線を向ける。

 

「いろいろやることはあるだろうが、まず実際の状況を見たほうがいいだろ?」

「はい!」


 私も同じことを考えていた。

 到着して最初にすることは、奇病の症状や状況を実際に見て知ること。

 すでに情報としては聞き及んでいるけど、聞いた話より自分の目で見て確かめたことのほうがわかるかもしれない。

 その場で原因がわからなくとも、奇病を知る人に話を聞きたかった。

 殿下は私がそう言うと見越して進路を変えていたらしい。


「良かったですね、姉さん」

「うん」


 お陰で考えていたよりスムーズに進められそうだ。

 さっそく私たちは街へはいることになった。

 同行していた騎士たちは村の外で待機。

 村に足を踏み入れたのは私たち四人だけ。

 大きな村じゃないから、大人数で押しかけても邪魔になるだけだと殿下は言った。


「おぉー、アッシュ様が戻られたぞ」

「本当だ! アッシュ様、戻ってきていただけたのですね。見捨てられてしまったかと」


 ぞろぞろとお爺さんやお婆さんが家から出てくる。

 殿下を見ると嬉しそうに歩み寄ってきた。


「見捨てるわけないだろ? みんな大事な領民だ。ちょっくら王都に戻って助っ人を呼んできてたんだよ」

「助っ人……ですか?」

「おう! 頼りになる助っ人だぜ? 宮廷錬成師のアリアだ」

「こんにちは」


 殿下の紹介は少々オーバーだったから緊張する。

 私はユレン君に見習って、出来るだけ明るい笑顔を作る。

 するとみんな、穏やかな笑顔で応えてくれる。


「おーおー、宮廷の錬成師様か! これは心強い」

「お若いのに凄いねぇ。将来有望だ」

「ありがとうございます」


 温かい言葉を貰ったお陰で緊張は解れた。

 挨拶は終わったし、さっそく仕事を始めようとする。


「アリアにはしばらくこっちで病気のことを調べてもらう。そのために質問に答えて欲しいんだが構わないか?」


 私が殿下と目を合わせると、意図を察して村の人たちに説明をしてくれた。

 村の人たちは好意的に答える。


「もちろんですよ」

「なんでも聞いてください。ワシらも力になりたいんです」

「ありがとうございます」


 良い人たちだ。

 きっとそれだけ殿下が信用されているからだろう。

 

「ではいくつかお尋ねさせてください。その病気にかかったことがある方は、この中にいらっしゃいますか?」

「いいや、ワシら老人にはかからないようでね? ここにいる者はみな元気だよ」


 聞いていた通りだ。

 どうやらお年寄りに奇病は感染しないらしい。 

 確認を済ませて次の質問へ続く。


「最初に感染した方はどんな様子でしたか?」

「苦しんでたよ。体中が熱くて怠くて痛いと泣いていた。まだ子供だったからねぇ」


 発熱と倦怠感、それから全身の痛み。

 症状はどれも聞き覚えのある物ばかり。

 その中で最も重要で特徴的なのは……


「茨の模様が浮かび上がると聞きましたが、最初はどのくらいの大きさでしたか?」

「最初は気づかなかったよ。たぶん背中かな? 気付いたら上半身を覆っていて、あっという間に全身に広がっていったんだ」

「見つけてからどのくらいでしたか?」

「二日だったかな」 


 二日……末期まで進行すると急激に症状が重くなるのか。

 そうなる前に対処しないと。

 最初の感染者は十歳の子供だったそうだ。

 その子供は、すでに亡くなっている。

いつもご愛読ありがとうございます!

読者の皆様に大切なお願いです。

ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります。

現時点でも構いませんので、ページ下部の☆☆☆☆☆から評価して頂けると嬉しいです!

文字数が多くなるほどにモチベーションの維持は難しくなるもので。

ポイントやランキングといった目に見える変化のお陰でなんとか頑張って執筆できている感じです。


国渡りの錬金術師も連載中です。

よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿してます! 下のURLをクリックしたら見られます

https://book1.adouzi.eu.org/n7004ie/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

5/10発売予定です!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000



5/19発売予定です!
https://m.media-amazon.com/images/I/71BgcZzmU6L.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ