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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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55.第二王子

 錬成台に乗せられた素材。

 見知った素材に加えて、先日採取した七ノ葉草もある。

 半分は栽培用に種に変えて、残りは錬成の材料に使っている。

 といっても数が足りないな。

 本当はもっと採取しに行きたいけど、この間の一件もあって、しばらくは王宮の外に出られないし。


「いつになったら許可出るのかな~」

「騎士を十人も連れて行けば許可も下りると思うぞ?」

「それはちょっと……ってユレン君!」


 いつの間にかユレン君が隣にいた。

 

「お邪魔してるよ? アリア」

「もぉ~ 驚かさないでよ」

「いい加減慣れてくれ。いつものことだろ?」


 それは確かにそうなのだけど。

 不意に後ろとか隣にいたり、声をかけられるとビックリするよ。

 今日は扉を開ける音も聞こえなかったし。

 そんなユレン君はアトリエ内を見渡す。


「今日は一人か?」

「うん。フサキ君ならイリーナちゃんと一緒にいると思うよ?」

「そうなのか? 何か予定でもあったか」

「ううん。お休みなんだからお友達と遊んできなさいって、私からお願いしたの」


 イリーナちゃんの純粋な思いを受けて、フサキ君も自分を大切にすることを決めたらしい。

 そうは言ってもすぐには変わらないから、私も手伝えることはしようと思って。

 仕事が休みの日くらいは、ちゃんと子供らしく遊んでもらわないとね。

 今頃は二人でお話し中かな?

 きっとイリーナちゃんも喜んでくれていると思う。


「フサキも良い方向に進んでくれたみたいだな」

「うん。イリーナちゃんのお陰だよ」

「そうだな。でも驚いたよ。俺よりも先に本人から事情を聞いちゃうんだからさ」

「あははははっ、あれは成り行きで」


 知りたくなったから聞いてしまった。

 ユレン君も別の日に、公爵様から話を聞いたそうだ。


「フサキの過去を考えたら、今みたいに自分を追い込むのもわかるんだけどな」

「そうだね。私なんて特にわかるよ」

「だろうな。だから心配だったのもあるんだろ?」

「うん」


 心配だった理由は他にもあるけど、概ねそれで合ってる。

 自分と似ていた、とか烏滸がましくて言えないな。

 とにかく良かった。

 彼が自分を大切にしたいと思えるようになって。


「……で? そんなアリアは休日もせっせとお仕事か?」

「うっ」

 

 作業中の錬成台。

 並べられた素材と、散らばった研究資料。

 私が手に持っているのも、素材のチェックリストだったり。

 どこからどう見ても仕事中。

 ユレン君はちょっぴり意地悪な笑顔で言う。


「自分を大切にしてほしいってフサキには思っておいて、当の本人はどうなのかな~」

「うう……」

「確か俺、休日くらいしっかり休めって言った気もするんだが?」

「……そうだったね」


 言われた記憶がある。

 それも割と最近の記憶だったり。


「他人を心配する前に、まず自分も休まないとな」

「ご、ごめんなさい」

「アリアらしいけどな」

「そ、それを言われると返す言葉もないよ」


 前から成長していないと言われているようなものだ。

 自分ではわかっているつもりでも、誰かに言われないと止まれないこともあって。

 私の場合は、ユレン君がよく気付かせてくれる。


「熱心なのは良いことだけどな。君がフサキを心配するように、君のことを心配に思っている人もいるんだ。俺とかな」

「う、うん。気を付けます」

「本当に気を付けろよ? 今日は休みなんだろ?」

「そうなんだけど、休みの日にすること……なくて」


 言い訳になってしまうけど。

 外にも出られないし、他にやることもなかった。

 気付けば普段通りアトリエに足を運んでいて、最初は片付けでもする予定だった……ような?

 

「だったら俺が話し相手になるよ。ちょうどフサキとイリーナもそうしてる頃だろうしな」

「えっと、じゃあお願いしようかな」


  ◇◇◇


 ユレン君に連れられ、王宮の談話室に移動して。

 アトリエで話せば良いと思ったけど、ユレン君には……


「あそこで話してると仕事始めそうだからな」

「た、確かに」


 その通りだったので移動することに。

 初めて入る部屋だったから少し新鮮さもあった。

 談話室というだけあって、机を挟んで椅子が向かい合うようにいくつも並んでいる。

 大人数が一緒に話し合えるような造りだ。

 今は私とユレン君しかいないけど。


「フサキ君が生まれた場所って、今はどうなってるのかな?」

「いきなり聞きたいことがそれか?」

「ごめん。なんだか気になって」


 最初の話題としては重かったかも。

 口にしてから反省する。

 でもやっぱり知りたいことだ。


「別にどうもなってないけどな。元からあそこは人が平和に暮らせる場所じゃなかった。国同士の境になっていたし、争いは起きやすい」

「じゃあ今も変わってないの?」

「変わったかと聞かれれば、多少は変化したよ。今は俺の兄上が担当しているし」

「ユレン君のお兄さん?」


 さっきより別の意味で気になる単語が飛び出してきた。

 そういえばユレン君、お兄さんがいるんだよね。

 第三王子だし、上に二人?


「そのお兄さんってどんな人、なのかな」

「うーん、アッシュ兄さんを一言で表すなら~ この国で一番強い人かな?」

 

 セイレム王国第二王子、アッシュ・セイレム。

 彼は王国一の剣士であり、魔法使いでもあった。

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