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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

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37.私の意志を

 初対面の人だ。

 それでもわかる。

 この人は、私のことを快く思っていないことは。

 彼は私を疑うように見ている。

 

「見ない顔だが君は新任の使用人か?」

「はい。宮廷錬成師のアリアです」


 あちらから話しかけられ、私は丁寧に返答した。

 服装と態度から感じられる気品。

 間違いなく王宮の使用人ではなく貴族の方だ。


「錬成師か。確か宮廷付きの採用試験は先だったはずだが……君は誰かの推薦を得たのか?」

「はい。ユレン殿下に推薦して頂きました」


 誰に、を質問される前に答えた。

 答えなくても知っているはずだと予想して。

 実際に驚く様子はない。

 

「殿下の推薦とは珍しい。失礼だが生まれはどこの家だろう? 私も王宮に連なる五大貴族の当主として、我が王を支える者たちとは親密な関係を築きたいと思っているのだ」


 五大貴族の当主?

 ってことは、この人が話に出ていたガーデン公爵様なのかな?


「申し訳ありません。私はこの国の出身ではありませんので」

「そうなのか? ではどちらから来られたのだ?」


 彼は続けて質問してきた。

 家柄の次は出身。

 それも知っているような顔をしている。

 もう疑う余地もなく、この人が件の脅迫状に関係しているに違いない。

 ヒスイさんもユレン君も、心当たりがあると言いながら、その人物のことを何も教えてくれなった。

 確証が得られないままでは動けないとも言っていた。

 それほどの相手だから、下手な行動に出られなかったんだ。

 相手が五大貴族の一員とするなら、二人の発言の裏付けにもなる。


「どうしたのだ? 答えられないのか?」

「いえ……」


 答えるべきか否か。

 ユレン君には、下手なことを話さないほうが良いと言われている。

 私も同意見だ。

 言葉を間違えば非難される未来が見える。


 でも


「私は……」


 でも、それでいいの?

 このままお茶を濁して、誤魔化して、逃げて。

 ユレン君やヒスイさんに任せてしまって、本当にいいのかな?

 私はユレン君の力になりたくて、頑張る決意をした。

 それなのにまた頼って、迷惑をかけたままでいるなんて……


 駄目だ。

 私はユレン君に守ってもらうために王宮にいるんじゃない。

 彼のことを支えるためにいるんだ。

 この場所を選んだんだ。

 だったら――


「メイクーイン王国の出身です」


 立ち向かおう。

 この方がユレン君の味方だというなら、私が離れていくべきじゃない。

 これからも彼と一緒にいるために、私こそ味方にならないといけない人だ。

 自分の力で。


「メイクーイン王国……錬成師か。あまり良い噂は聞かないが」


 公爵様が国名に反応した。

 驚かない所を見ると、予想通り知っていたようだ。

 私の素性は王族とそれに準ずる地位の人たちには知られている。

 この人が五大貴族の公爵様なら、知っていても不思議には思わない。


「君は知っているかい? かの国で起きた不祥事について、どうやら錬成師が関わっているそうじゃないか」

「はい。噂程度ではありますが聞き及んでいます」

「そうか。一応確認しておくが、君も関係しているわけではあるまいな?」

「――!」


 返答を躊躇ってしまった。

 関係しているかどうかなら、私は関係者に入るだろう。

 ただ冷静になって考えれば、彼のいう関係とは、問題になった錬成師かどうかだと思う。

 なぜなら当事者であるメイクーイン王国の王族を除き、あの事件の真相を知っているのは……私を含めて四人だけだから。

 この人は知らない。

 ならば、応える内容はこれで良い。


「私は問題になった錬成師ではありません」

「そうだろうな。さすがにそうであったなら、殿下も推挙しないだろう。が、君の素性を知れば疑う者も現れる。君が疑われれば、推挙した殿下にも責任が生じる」


 ユレン君への責任。

 ついこの間、聞いたばかりの言葉だ。

 改めて実感する。

 ユレン君はこの国の王子で、責任のある立場なのだと。


「私は殿下の推挙に恥じない働きをしていきます。その成果をもって、私自身の証明とさせていただきたく思います」

「よい心がけだな。しかしそれは錬成師としての話であろう? 聞き及んだ話では、君は殿下とは個人的に親しくしているようじゃないか」


 唐突な話題変換。

 しかもそれを知っているということは、最初から私のことを認知していたという意味だ。

 最初のやりとりは挨拶のようなもので、 たぶんここからが本題。

 私は密かに気を引き締める。


「殿下は王子という立場のお方だ。その交友関係も立場に見合ったものでなくてはならない。君もそう思うだろう?」

「……はい」

「君がどういうつもりで殿下と接しているか知らないが、それを快く思わない者もいる。君と接することで殿下の信用を損なうようなら、控えるべきだと思うのだが?」

「それは殿下との接触を控えろと、おっしゃっているのですか?」


 返事はない。

 しかし否定もされない。

 この沈黙は肯定と取って良いだろう。

 今さら深く考える必要もない。

 この人が言いたいのは、私はユレン君の友人に相応しくないから、相応の距離感を保てということだ。

 友人のように親しく接さず、王子と宮廷の使用人として立場を弁えろと。

 

 私はこれまでの思い出を振り返る。

 ユレン君との出会いから、助けられた日のこと。

 そして今も、彼と一緒にいる時間は掛け替えのない宝物だ。

 失うなんて考えられない。

 失いたくないから、私は立ち向かう決意をした。

 

 だから私は、こう答えよう。


「申し訳ありません」

「その謝罪は、私の意志をくみ取ったと思って良いのかな?」

「いいえ、ご期待には添いかねる、ということです」

「……ほう」


 不穏な空気が漂う。

 公爵様の表情がこわばり、目つきが鋭くなる。

 それでも私は逃げない。

 自分の意志を伝える。

 

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