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【WEB版】錬成師アリアは今日も頑張ります ~妹に成果を横取りされた錬成師の幸せなセカンドライフ~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一章

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11.王宮の錬成師

 王座の間で話を終え、私たちは部屋を出る。

 丁寧に礼儀正しくお辞儀をして扉が閉まった所で、ユレン君がニコリと微笑む。


「良かったな。これで正式にうちの錬成師だ」

「うん。ありがとうユレン君」

「俺はただきっかけを作っただけだよ。君が選ばれたのは、君がすごい錬成師だからだ」

「そ、そうかな?」


 ユレン君は何度も私を褒めてくれる。

 昨日と今日で、一生分くらい褒められたような気がするよ。


「そんなに自分を卑下しちゃだめだよ」

「ヒスイさん」

「ユレンも陛下も、身びいきで宮廷の役職を任せたりしないさ。ユレンの言う通り、間違いなく君の実力で選ばれているよ」

「そうそう。だからもっと自信持てって」


 二人とも優しい言葉をかけてくれる。

 何度も、何度も。

 お陰で少しずつだけど、自信が湧いてきた気がするよ。

 私たちは王城の廊下を歩く。


「あ、あの、今ってどこに向ってるの?」

「王宮だよ。君の仕事場を案内しようと思ってね」

「ここも王城と王宮で分かれてるんだ」


 王城は陛下や王族が住まう場所であり、王宮は王族を含む多くの者たちが働く場所。

 それぞれに役割が有り、宮廷付きが多く働いているのは王宮のほうらしい。

 中でも錬成師は、王宮の端に部屋を用意されていた。


「今働いている錬成師は……確か七人だったか?」

「ああ。室長以外は全員雇って二年以内の新人だ」

「そうそう。だから言っちゃえばアリアのほうがベテランの錬成師なんだよな」

「べ、ベテランって。私も宮廷付きになったのは一年くらい前だよ?」


 錬成の勉強を始めたのはもっと前だけど。


「その前から十分な実力はあっただろ? うちは人材が不足しててさ。錬成師を雇う最低条件も、錬成台が使えること、なんだよ」

「そ、それって……」


 本当に最低条件だ。

 錬成台が使えなければ錬成師にはなれない。

 逆に使えるのなら錬成は出来る。

 ただし、知識や経験が必要なこの職業で、使えるという程度はあまり意味をなさないけど。


「そういうこと。半分以上が素人で、錬成術のことなんてほとんど知らなかったんだ」

「だから室長さんが一人で指導してる。俺たちじゃ手伝えないし大変そうだったよ」

「俺は手伝ったぞ? 一応これでも錬成術は使えるし、その勉強もしてきてたからな。実はその時にアリアの話もしたんだ」

「へ、へぇ~」


 つまり室長さんも私のことを知っているのか。

 全く知らないよりは良いけど、今から会うのは緊張する。

 前の王宮では放置され、ほぼ一人で仕事をしていたから、上司部下の関係性がイマイチわからない。

 怖い人だったらどうしようとか。

 気が合わなかったら……みたいなことを考えてしまって、少しだけ歩くペースが落ちる。

 それにもユレン君は気づいてくれたようだ。


「安心していいぞ。あの人は気が良いから、きっと仲良くなれる」

「ほ、本当?」

「ああ」

「俺も保証するぞ。酒癖は悪いけど」


 ヒスイさんはやれやれと身振りを見せる。

 何か以前にお酒関係でよくない目にもあったのかな?

 ユレン君は大丈夫だと言ってくれたけど、ヒスイさんの反応を見ていたらまた不安になってきた。

 それから王宮に移動して、廊下を真っすぐに歩いていく。

 宮廷付き錬成師室と書かれた札と、金色の枠で囲われた豪華な扉の前に到着した。


 トントントン。


 ノックしてから扉を開ける。

 

「いらっしゃーい、って殿下にヒスイちゃんじゃない?」

「邪魔するぞ」

「ちゃん付けはやめてくれよ……」


 お酒を飲むという話を聞いて、私は勝手に三十代くらいの男の人を想像していた。

 だから驚いてしまった。


「女の人?」

「ん? そっちの可愛い子は? 殿下のガールフレンドかな?」

「なっ……」

「はっはは! いきなり見抜かれたなユレン」


 大声で豪快に笑うヒスイさん。

 ユレン君は顔を赤くして彼をジト目で睨む。

 私はというと、どう反応していいのかわからなくて固まっていた。

 すると――


「おほんっ! 彼女は新しい宮廷錬成師だ。ほら、前に話した凄腕の」

「ああ! あの殿下がべた褒めしてた異国の錬成師か! ついに奪い取ってきたわけだね!」

「ちょっ、奪ったとか人聞きの悪いこと言わないでくれるか!」

「まぁあながち間違いじゃないだろ」


 ヒスイさんがうんうんと頷く。

 今更だけど、とても王子様と部下の会話には見えない。

 ユレン君とヒスイさんは仲の良い友達みたいだし、室長さんも近所のお姉さんみたいな振る舞い方で。

 なんだか調子がくるってしまうな。


「えーっと、確かアリアちゃんだったよね?」

「は、はい! 今日からお世話になります」

「うんうん! 聞いてた通り真面目そうで良い子だね。それに可愛いし」

「か、ありがとうございます」


 そういう室長さんも綺麗な人だった。

 淡いオレンジ色の長い髪に、肌は透けるような白でこまやかだ。

 大人の女性、という言葉がぴったりと似あう。


「君が作ってくれたポーションは素晴らしかったよ。あれは奇跡のポーションだ!」

「き、奇跡って大げさでは?」

「そんなことないよ~ あれのお陰で何万という人が助かったんだ。私たちじゃ到底たどり着けなかった領域に君は至っている。わかるかな? 私たち錬成師にとって、君は一つの目標を示したんだ」

「目標……」


 私が誰かの目標になる。

 そんなこと考えもしなかった。


「そんな君と一緒に働けるなんて光栄だよ! 私は室長のラウラ、これからよろしくねアリアちゃん」

「はい!」


 ユレン君の言う通り、室長さんは気の良い人みたいだ。

 この人と一緒なら働いていけそうだと、出会って数分で思えて安心した。

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