【番外編】鐘の音が鳴る【後編】
どうも。
前回のクリスマスのヤツですがアレ、当日にインフル&治っても今度は『保存ができない』というわけわかめな状況を3,4,5日ほど続けて……心が折れました。
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というわけで、お詫び的なので1つ――いや2つか? ともかく茶番をば。
正月に「コイツ文章下手だなー」とか言って目を通してくれれば、それで十二分にありがたいと、そう思いながら投稿。
では、
あけましておめでとうございます。
よいお年を。
「――なんて新年の迎え方をした兄さん、今の気持ちをどうぞ」
「……外気が冷たく感じなくて何よりですよ」
「…………」
「…………」
「…………」
刺々しい視線と寒々しい無言にいたたまれなくなって、ふと顔を上げた。
時刻は午前1時を廻る前といった戸頃か。寒々しい真っ暗な空に、重く低くな鐘の音が掻き響いていた。響く音に震わせられたのかのようにそよ風が頬を撫でてくる――が、ちっとも冷たく感じる事がなかった。左頬だけ。先程作られたばかりの紅葉だ。詳しくは言わない。
「新年、か……」
ポツリと呟きながら思い出す。
春前もだが、特にこの上ヶ崎市に来てから俺は人生レベルで様々な出来事を体験してきた。それはもう――箇条書きにしても原稿用紙が足りなくなりそうなくらいに、
チカ――大山智香と。
ミサ――三咲可憐と。
サチ――水無瀬幸と。
それから、妹の希(希)と。
そんな、しかし、『色々あるだろう今年』は『色々あった去年』になってしまった。
また、鐘の音が鳴った。発信源は『ここ』からすぐ――明日葉家を離れた俺達が今まさに向かっている場所だ。この緩くも傾斜がかなりあるこの上り坂の先にある、上ヶ崎市に唯一存在する神社・城上神社だ。城の跡地の上に建てられたから、しろかみじんじゃ。
「しっかし今年の兄さんは108なんてメじゃない煩悩を背負ってますからね」
「……みんなそんなもんじゃねぇの?」
「アンタと一緒にしないでよっ!」
「トール君とは違いますからっ!」
「変態と同格にしないでくれる?」
俺が妹に質問で返す一瞬後に、全く同じタイミングで他の3人に言い返された。
これはひどい。というか、当たりが強い。ついさっきできた紅葉――プチ騒動の件が尾を引き摺っているのが流石の俺でもわかり、白い息を重苦しく吐いた。
境内(?)の中に入ると、深夜にも関わらず既に長蛇の列が出来上がっていた。この近辺で唯一だからかもしれない。俺達一行は素直に最後尾に並んだ。
目的はやはりあの巨大な鐘だろう。見た事はないが、中の空洞部分でカプセルホテル以上の広さで生活できそうなぐらいの大きさだ。それをちっちゃな兄妹が、あるいはカップルが(チッ)、あるいは夫婦が(チッ)一緒に鐘の尊大な重低音を掻き鳴らしていた。流石に誰も108は打たないようで(そりゃそうか)、鳴らした人達は満足そうな顔で帰路に着き、次の番へと暗黙でバトンを渡して行っている。
「やっぱり兄さんの煩悩は余裕で108超えますね」
「……なんでわかるんだよ」
「目がギラギラしてましたし」
「そ、そうなのっ!?」
「そうよ、ってか知らなかったの?」
「トール君は完全に顔に出やすい人だもんね~」
「……今更過ぎるわ」
新年で初めて知った、『今明かされる衝撃の真実ぅ!』だった。チカとミサとサチも知っていたようで、苦笑いやら呆れやらといった表情をされた。ち、ちょっとショック…………。
いよいよ俺達の番だった。
「誰が先に鳴らしますか?」と尋ねてくる妹に、
「だったらどうせだしみんなで鳴らそうぜ」
という俺の提案に一同は満場一致した。
――と。
「――ぁ、」
呟いたのは一体誰だっただろう。
新年をいまだ黒に染めている夜空に。青白い光がキラリと横切った。1つだけじゃく、2つ3つ――いやもっとだ。数えられない。
「流星群ですか……何か祈っておきますか」
妹のその言葉に俺はハッとなって慌てて目を瞑った。
視界を空色にしながら、俺はある事を考えた。
「兄さん、何を願いましたか?」
数秒後の事。妹が尋ねて来た。瞼を開けば3人もこっちを見つめていた。視線を向けられるのに決まりの悪さにたじろいて、俺は無理矢理に話題を逸らした。
「そ、そんな事言うんだったら、お前らは何考えてたんだよ?」
「私はアレよ……って別に言う必要はないわよね」
「私はええっと……やっぱり止めときますっ」
「……ノーコメントで」
「私はですね、兄さんと――」
「あ、お前には訊いてない」
「そ、そんな……っ!?」
3人もそれぞれ思い思いのものを願ったようだが、やはりと言うべきか、みんなして黙秘権を行使してくれた。1人戦慄してるのは無視で。
「……んじゃ、鳴らしますか」
列から『早くしろゴルァアアア!!』的な――『圧』がかけられた気がするので、俺は咳払いを1つして、ぶら下がってる紐(?)(とにかく鳴らす時に引っ張るヤツ)を自分達の方へと引っ張って引き寄せた。
「そうね」
「そうですね」
「仕方ありませんね」
「うなー……、あでっ」
いまだボケーッとしてた妹のおでこに軽くチョップをお見舞いさせてこっちに意識を戻す。それからみんなで俺が引っ張ってきた紐をみんなで掴む。
そして、
「「「「「せぇー、のっ」」」」」
今年も無事に、鐘の音が鳴らす事ができた。




