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陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。  作者: 沢田美


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陰キャ、青春群像劇に翻弄される ー貸されるのはあなたですー

 昼休み、俺はいつもの空き教室に座っていた。もちろん浅葱も隣にいる。

 

 俺は昨日LINEで送られてきた『大事な話』という言葉に気を取られながらも、弁当を開けて食べていた。

 

 大事な話……一体なんだろう。


 いつもなら何かしら話題をふっかけてくる浅葱だが、なぜか沈黙が続く。

 

 彼女も弁当を開けているが、ほとんど手をつけていない。

 

 空気が重い。


「ねぇ、高一くん」


「なんだ?」


 浅葱がどこかもどかしそうに声をかける。

 

 俺はそんな彼女に視線を向ける。そして、浅葱は俺を真剣な眼差しで見つめた。

 

 その瞳は、いつもの明るさとは違う――何か決意を秘めたような色をしていた。


「昨日LINEして知ってると思うけど、私ね。高一くんに……」


 浅葱が一度言葉を切る。

 

 深呼吸をする。

 

 そして――。


「お金貸してほしいんだ!!」


「……は?」


 思わず言葉が漏れた。

 

 お金? 貸してほしい?


「いや待て、なんで俺に金を借りるんだ!?」


「だって高一くん、優しそうだし!」


「優しさの問題じゃねぇよ! つーか、いくら必要なんだよ!」


「えっとね……五千円!」


「結構な額じゃねぇか!!」


 俺は思わずツッコミを入れた。

 

 浅葱は真剣な顔のまま続ける。


「実はね、最近ハマってるゲームがあって――」


「ゲーム!?」


「うん! で、課金しすぎてお小遣いが足りなくなっちゃって……」


「完全に自業自得じゃねぇか!」


「でもでも! 今ガチャが激アツなの! 限定キャラが出るの!」


「知らねぇよ! つーか、そんなことで大事な話とか言うなよ!」


 俺は頭を抱えた。

 

 昨日からずっと緊張してた俺がバカみたいじゃないか。


「えー、だって本当に大事なんだもん」


「お前の中ではな!」


「高一くんケチー」


「ケチとかそういう問題じゃない!」


 その時、教室の扉がガラリと開いた。


「あれ? 二人とも、ここにいたんだ」


 不知火先輩の声だった。

 

 俺と浅葱は同時に振り向く。


「不知火先輩……」


「何してるの? 喧嘩?」


「喧嘩じゃないです! こいつが俺に金を貸せって……」


「え、浅葱ちゃん、またゲーム課金?」


「また、って……先輩も知ってるんですか!?」


「うん。この前も由良に借りようとしてたよ」


「瀬良先輩にも!?」


 俺は浅葱を見た。

 

 浅葱は頬を赤くして目を逸らした。


「い、いいじゃん! 趣味にお金使うのは当然でしょ!」


「当然じゃねぇよ! 計画性を持て!」


「高一くん、お父さんみたい」


「お父さんとか言うな!」


 不知火先輩がクスクスと笑っている。


「二人とも仲いいね」


「「仲良くないです(ないよ)!」」


 声がシンクロしてしまった。


「ふふ、じゃあ高一くん。今日の放課後、体育館裏で待ってるから」


「え、あ……はい」


「大事な話があるの。じゃあね」


 不知火先輩はそう言って、教室を出ていった。


「……大事な話」


 俺は嫌な予感しかしなかった。


「ねぇ、高一くん」


「なんだよ」


「不知火先輩の大事な話って……もしかして借金の相談?」


「お前は全部金の話かよ!」


 俺は再びツッコミを入れた。

 

 浅葱は「えへへ」と笑っている。


「じゃあさ、三千円でいいから!」


「値下げ交渉すんな! つーか貸さねぇよ!」


「ケチー!」


「ケチじゃねぇ! 常識だ!」


 こうして、俺の昼休みは――予想外のギャグ展開で終わった。


 大事な話が金の話とは……。

 

 俺の青春ラブコメは、一体どこに向かっているんだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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