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其の弐佰漆拾弐 強化

【さて、次に消えるのは誰だ?】

「主だ。アク」


 斬った半身を繋ぎ合わせ、手首を返して挑発。その間に奴へと迫り、小太刀にて手首を斬り伏せた。


【……ッ。再生した傍から斬られるか。煽ったり挑発する余裕なんかないな】


 その手首も繋ぎ合わせ、天へと飛ぶように逃げる。

 そんなアクへ闇と光、空間の歪みが迫った。


「正直、俺は激昂と言える状況にある。anger。だがここは敢えて声を荒げずに討ち仕留めるとしよう。KILL YOU」


「ああ。闇雲に怒っても思う壺……静かに怒り、確実に殺す」


「右に同じ。仇は討つがあくまで冷静にだ」


 イアン殿、トゥミラ殿、ザン殿の三人が目を据わらせて三つの攻撃を放出。

 空中にてアクは振り払い、改めて口を開いた。


【我の能力は、知っての通り物の無効化。そして単純に魔力等で強化し、星を砕く程度の破壊を生み出す。まあ、星と言っても大小ピンキリ。宇宙塵から恒星まで様々。基本はそれだ。四大元素はあくまでおまけ程度と考えていてくれ】


「それを今話して何になる。what。今までのやり方を見ていれば大凡おおよその能力は掴めている。ability。必要の無い情報だ」


【答えは単純……今から全てを終わらせようと考えた次第だ】


 告げ、踏み込み、イアン殿の眼前へ。

 咄嗟に闇で防御の態勢となり、拙者も奴との距離を詰め寄る。


【相変わらず厄介なのは鬼右衛門だ】

「……」


 手刀によって光で護られていたイアン殿の腕が切断され、鮮血が散る。

 ギリギリ間に合ったのもありてトドメまでは刺されず、アクの体を吹き飛ばして距離を置かせた。

 瞬時にザン殿が空間転移にてイアン殿を連れ、エルミス殿の元へ。光と鬼が付与されている彼女なれば、例え再生を無効化された状態であったとしても今まで通りの回復術へと昇格するだろう。


【フム、これもまた星の国のNo.8の功績だな。一挙一動が未来へ及ぼす影響は多大。仮に奴ではなく他の者が死していた場合、今の一撃でNo.1も死んでいた】


「…………」


 命一つが腕一本へと変わったか。

 ヨチ殿には助けられておるの。未来を見、最も生き残れると判断した世界が此処なのだろう。

 天晴れ。安らかにお眠り頂きたい所存。


【なれば我も未来を見、最も多くの人数を殺せる世界に行こう。最適解は戦闘全てを無視しての初手星爆破だが、それでは面白味が無い。楽しんだ上で星爆破へ移行するとしよう】


「させぬ」


 踏み込み、跳躍。斬り伏せ、アクは宙を舞ってかわす。

 ヴェネレ殿らとエスパシオ殿らも依然として攻撃を仕掛けておるが、それらは意に介しておらぬな。

 だが、対応が別の者も居る。


「お主は人を殺し過ぎじゃあ!」

【面倒だな。魔族……! しかもまだ1人だけだ……!】


 サン殿。

 闇魔法を撃ち込み、アクは空間から転送。別の次元にて爆発させる。

 サン殿の闇魔法だけはどうする事も出来ないのか、確かな効果が及んでいるようだ。


【ワープゲートも持たないな。少し危険だが相殺を狙うか】

「……」

【……ッ! 気を取られるとすぐにお前が……!】


 サン殿の方へ意識を向け、その隙を拙者が斬る。

 本人も理解しておるようだが理解を遂行に移すのはまた難儀。特に己の実力へ絶対的な信頼を置いているこの者はの。

 後は拙者も理解を遂行に移さねばならぬ。再生を無効にする鬼神にて頭をねれば良いと分かっているのだからな。

 これまた難儀な在り方よ。


【狙いを改めよう。防御面で厄介な光魔法か、攻撃が厄介な闇魔法か。鬼はこの際大した問題ではない。脅威的ではあるが、範囲が段違いだ】


「……」


 そして拙者は低く見積もられている様子。

 それも当然。決定的な一撃は与えられておらず、全人類と星を護る光魔法や転移させるしか方法の無い闇魔法と違って成果が挙げられていないのだから。

 鬼神纏の効果は奴へ癒え難い手傷を与えられる事。だが見ての通り奴は傷口に魔力を詰めて埋める形で治しておる。

 有効手段であれど、イマイチ鬼神の本領は発揮されておらぬ。


【決めた。やはり闇魔法だ。光の防御があるとは言え、隙を突けば分身で殺せる事も立証済みだからな】


「……」


 次なる標的はサン殿。

 これ以上仲間を失う訳にはいかぬ。

 未だに動いておる分身は即座に切り裂きて消し去り、彼女の方へ向かったアクを刀で阻止する。


【お前は後だ。邪魔をするな】

「……自ら斬られたか」


 刃を通り過ぎ、己の体を両断して進む。

 即座に治せるからこそある程度の傷は受け入れるつもりなのだろう。己の犠牲を厭わず向かう存在というのは厄介極まりない。失うモノがなく、全てを気にせず良いのだから。


「邪魔せぬ訳にはいくまい」

【面倒だな!】


 移動しながら刃を交え、サン殿への攻撃を避ける。

 此奴が分身体という事は無さそうよの。本気で止めるつもりの拙者と互角に渡り合っておる。

 だが狙いが狙い。現状では集中出来ている拙者の方に軍配が上がろう。


「……」

【チィ……!】


 手足を裂き、魔力で新たなそれを作る。

 瞬時に貫き、一方で力を撃ち出し、互いの体を吹き飛ばした。

 これはマズイの。吹き飛ばされた方角。サン殿の方へアクが向かってしまった。


【取った!】

「負けぬぞォ!」


 すれ違い様に両者が攻撃。サン殿が膝を着いて倒れ、アクはそちらを振り向いた。


【……一体どういう事だ?】

「……!」


 アクが振り向いたのは、上半身のみ(・・・・・)

 下半身は分かれており、ズルリと滑るように地に落ちた。

 サン殿は傷を負いつつ口を開く。


「ケホッ……聞いた話だと……光魔法は纏えるようじゃな。だったらわらわの闇魔法も纏えるハズじゃ……まだ色々足りなそうな妾は自分に闇魔法を付与したに過ぎない! 攻撃力アップじゃ!」


【成る程。確かにそうなるな。今までの理屈なら、闇魔法も光魔法と同様、その身に纏えると言うもの。これがお前なりの目覚めか】


「そうじゃ!」


 曰く、サン殿は闇魔法を纏ったとの事。

 今までに鬼と光。この力を纏う様を見届けた。故に自分もそれが可能なのではないかと確かめ、今に至る。

 サン殿の実力はる事(なが)ら発想力も高いの。機転が利き、臨機応変に対応致す。よく周りを見ておる証拠よ。


「じゃからわらわの力も皆に与えるぞ!」

「……! これがサンちゃんの……!」

「……! 凄い力だ。strong power」

「成る程の」


 拙者の体にも闇が侵食する。

 今までに無いような形容し難き力。光魔法が“守護”とすると闇魔法は“破壊”。鬼と掛け合わせる事によってより強大なモノになったと実感した。


「今なら貴方に勝てそう。──“ファイアボール”!」

【……!】


 ヴェネレ殿が掌を翳し、杖がないので初級の炎魔法を放出。

 その火球に光と闇が纏わりて異形とし、鬼の力が上乗せされて灰色の焔がアク目掛けて直進した。


【……ッ!】


 アクですら反応する事がかなわず、灰色の轟炎に飲み込まれる。

 それによって周囲が包まれるかと思われたが広がった範囲は収束。内部から破裂し、アクへ一点集中の傷を与えた。


【……な、なんだこの力は……! 初級魔法が恒星以上の高熱。軽く見積もって100億度以上……! なのにこの星や周りは飲み込まず、我にのみ与えるか……!】


「随分と説明口調よの」


 アクが珍しく困惑の色を見せ、驚愕する。

 本来なれば周囲への影響が凄まじい程の力らしいが、その全てを一点に集中して影響は与えずアクのみを焼き尽くす。

 闇魔法の付与は拙者らの想像を絶する力のようだ。


【成る程な。とてつもないパワーアップ。通常の何十乗の威力かも分からないな。我の成長のみで追い付く事も難しそうだ】


 変わらず驚きながら説明しているが、その隙は見逃さず畳み掛ける。

 拙者は踏み込み、他の者達は遠方にて魔力を込める。


【前言撤回するか。最適解を遂行する】

「……!」


 魔力を込め直し、地上に向けて其の力を解放する。

 先程申していた星ごと消し去るつもりか。男に二言とは情け無し。

 星へ魔力を撃ち込んだ直後、


【……!】

「よく合わせたね。ザンちゃん」

「利害の一致だ。水の騎士団長」


 別空間へと移動し、アクの放った魔力はそこで大爆発を引き起こした。

 如何程の威力かは存ぜぬが星を砕く程はあったのだろう。エスパシオ殿とザン殿が空間を移動させる事で阻止したようだ。


【光と闇。鬼が合わさり我の無効化を一時的に打ち消したか。まんまと空間を転移させられてしまった。そんな魔法の影響でこの空間を破壊するのも大変だ。本来なら楽に砕けると言うに】


「此処なら戦いやすいだろう。人質……ならぬ星質を避けられたのは良い傾向だ」


【成る程な】


 エスパシオ殿の言葉へ返し、魔力の球を形成。それを空間へと落とし、直後に白い光が照らす。

 熱と衝撃が一気に伝わり、辺りは飲み込まれた。


【今此処で超新星爆発を引き起こした。しかし、2つの光魔法。鬼の力。闇魔法。それによる防壁もあり、この空間は耐えられるか】


 またなんたら爆発とやら。好きよのその言葉。

 無論の事他の者達はそれを防ぎ、前に立つアクへ皆が構え直す。


【そう殺気立つな。戦意は喪失した】

「そう言う事は、また仕込んだ分身を消してから言え」

【二度は食わないか。残念だ】


 仕込まれた分身体を切り防ぎ、消失。各々(おのおの)が向き直り、臨戦態勢の形は崩さぬ。

 闇魔法の付与にて更なる強化を経た拙者らと依然として成長を続けるアク。場所を転移し、周りの心配が無くなったので存分に力を振るえよう。


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