47.私の憧れ
昔は魔術師同士の決闘というものはよくあったらしいです。
決闘とは即ち、命の取り合い。どちらかが死するまで、戦いを続ける。
そんな野蛮なことを観衆たちが見守る中で国同士の代理戦争のような形で繰り広げられていたとのことでした。
我が家が貴族に仲間入りしたのは、ご先祖様が多くの流血を糧に生き残ってくれたからだと、お父様はよく仰っていました。
「殺意を込めたいい魔法でしたよ〜〜。温室育ちのお嬢様にしては……」
イザベラお姉様の不意討ちを簡単に躱したティルミナ。
お城の中庭で炎を放ったので、花壇は焼かれてしまい、焦げた匂いが鼻にツンときます。
「まだ余裕そうな顔をされていますわね。……魔炎! 魔雷!」
連続して魔法を放つイザベラお姉様。
私も彼女ももっと規模の大きな魔法も使うことは出来ますが、周りにはまだ人の気配がするので、巻き添えを出さないように力を調節しています。
「ふふふふふ、捻くれた性格なのに素直ですね〜。やっぱりあなたは二流の魔術師です〜〜」
「あ、当たらない!? こうなったら――」
「一流の魔術師を目の前にして、遅すぎなのですよ〜〜」
イザベラお姉様の魔法を躱し続けているティルミナ。
それに苛立ちを覚えた彼女は大規模な魔法を使うために魔力を集中させますが、ティルミナはその一瞬のスキを突いて――。
あまりにも静かに、そして風のように早く……ティルミナはお姉様との距離を縮めます。
「あなたは可愛い子ですから〜〜。もっと美しくしてあげます〜」
「――っ!?」
「お姉様……!」
ティルミナはイザベラお姉様を氷結魔法で氷像に変えてしまいました。
瞬きするほどの刹那の出来事です。
「ふふふふふ、意外ですよ〜〜。妹ちゃんって、結構ドライな性格なんですね〜〜」
「……ドライな性格ですか?」
「だってほら〜、お姉ちゃんが凍らされるまで〜、黙って見ていたんですよ〜。棒立ちで〜〜。必死でお姉ちゃんが魔法を使っているのも、ボーッと見ているだけだし〜。薄情者じゃないですか〜〜」
そういうことでしたか。
それなら、ティルミナはお姉様を侮りすぎですよ。
私に目立った動きをするなと言われたのはイザベラお姉様なのですから。
「ティルミナさん、あなたは魔力の揺らぎを感知して魔法を躱しています。魔法というのは体内の魔力を糧に発動させるので、そのときにどうしても魔力が術者から漏れてしまって、魔法よりも早く波として伝わってしまいますし、使った痕跡としても残ります」
「それは基本ですね〜〜」
「あなたも使った手なんですよ。先程、ニックさんの魔法の痕跡に隠して自分の魔法を使いましたよね?」
「えっ? ――っ!? い、いつの間に!? 銀色の枷が――!?」
ようやくティルミナは気付いたみたいです。自分の手足に銀色の錠が付けられていることに。
そして、イザベラお姉様が闇雲に魔法を連発していなかったということと、自分の魔法を囮にして、私の魔法に気付かせないようにしたことを。
「そ、そんな〜〜。人間、一人ひとりの顔が違うように、魔力の痕跡も若干の違いがあります〜〜。百年以上もキャリアがある私がそれを見逃すなんて〜〜!!」
「……ずっとお姉様を見てきましたから。魔法くらい真似出来ますよ」
両手両足を拘束されて動けなくなっているティルミナはようやく慌てたような表情をします。
私はイザベラお姉様に憧れていました。
何でも真似をしたかった。持っている物も、魔法も、気高さも……。
「だけど〜〜。良い子ちゃんに私が殺せるかしら〜〜。だからさっき、あなたが陽動って言われていたんじゃないの〜〜?」
「再生魔法……!」
「……そうね。この子には無理でもわたくしなら出来ますわ!」
「――っ!?」
人に再生魔法は使えませんが、氷なら別です。
お姉様とて修行した身。凍らされてすぐに意識を失うなんてあり得ません。
「雷鳥の爪――!」
「ぎゃああああああああああ〜〜〜〜!!」
イザベラお姉様の放った雷鳥はティルミナの身体を容赦なく穿ちました――。
ティルミナとの戦い……決着!?
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