21.王女殿下はお怒りです
さて、ようやく着いた人生で初めての異国の地。
着いて早々、兵士たちに囲まれてどうなることやらと思っていたのですが――。
「まさか、独房のような小部屋に軟禁されるとは」
「私たちはゲストじゃないからね。招かれざる客には容赦ない御方なのさ。ライラ殿下は」
現在、私とフェルナンド様はナルトリア王宮の簡素な小部屋の中に拘束中です。
用事があれば呼びに来るとのことですが、こんなところで待たせなくても良いではありませんか。
「お茶くらい出してくれると思いましたのに。檻の中とはこんなにも殺伐としているのですね。イザベラお姉様はこんなところに何日も――」
「シルヴィアは強いね。普通、こんなところに閉じ込められたらもっと動揺するんじゃないかな?」
「動揺はしていますよ。でも、フェルナンド様が落ち着いていますから、何とかなるのではと思いまして」
フェルナンド様は私が妙に落ち着いている様子を見て、不思議そうな顔をしますが、それは彼が平気そうな顔をしているからです。
こうなることくらいは予測していたんでしょう。
軟禁すると凄まれたときも、いつもどおりの表情でした。
「私はライラ殿下の人となりを知っていたから、このくらいは予め覚悟はしていたんだよ」
「でも、いずれ出してもらえると信じているんですよね?」
「あの人はなんの恨みもない私たちを殺すような趣味はないからね。大方、脅しをかけるのと同時にアルヴィン殿下と口裏合わせするのを封じたかったんだ。だから私とシルヴィアも別々に呼ばれるだろう」
フェルナンド様は尋問中に口裏合わせさせないために、私たちを軟禁すると仰せになります。
なるほど。アルヴィン様が嘘をついても私たちが矛盾する返答をすればバレてしまいますからね。
でも、軟禁するなんて酷いです。お水くらい出してほしいです。
「シルヴィア・ノーマン。ライラ殿下がお呼びだ。出てくるがよい」
「はい。……フェルナンド様、行ってきます」
「正直に話せばいい。ライラ殿下は何よりも嘘を嫌う」
そうこうしているうちに、私の名前を呼ぶ兵士が部屋の鍵を開けました。
やっぱり、フェルナンド様とは別々ですか。
嘘をつくなと言いますが、果たしてどんなことを聞かれるのやら――。
「シルヴィア・ノーマン。貴様はあの、大賢者アーヴァイン・ノーマンの孫娘らしいな」
「あ、はい。ライラ様は祖父のこと、ご存知なのですね」
「周辺国の英雄の名前くらい覚えていなくてどうする?」
「す、すみません。ライラ様に英雄などと言われて祖父も喜んでいると思います」
圧が凄い。
とにかく圧力が凄いのです。
ライラ様から迸る、殺気にも似たような覇気が真正面から私を捉えて……悪いことをしていないのに謝ってしまいました。
「で、浮気女であるイザベラ・ノーマンも大賢者の孫娘なのだろう?」
「は、はい! 私とイザベラは姉妹ですから」
「アルヴィン殿が言うには、な。貴様がイザベラからフェルナンドを寝取ったから、それを慰めるために、イザベラに接吻したらしいのだ。貴様は姉の婚約者を奪った不届き者なのか?」
アルヴィン様~、私のことを売ったのですか?
まったく、酷いじゃありませんか。嘘ごとをこういう時にライラ様に吹き込むなんて。
「嘘です、嘘です。そんなの嘘です。確かに姉のイザベラとフェルナンド様は婚約していましたが、姉の方から婚約者という立場を代わってほしいと言われました」
「ふーむ。では、イザベラがアルヴィンに嘘をついた事が全ての元凶と申すか。ならば、イザベラ・ノーマンをここに連れて来い! 彼女からじっくり話が聞きたい」
ああ、ライラ様が思った以上に冷静で、そもそもお姉様が嘘を言っていなかったら、この事件は起こっていないことに気付いてしまいました。
でも、大丈夫。お姉様は投獄中だから、この国に来ることは出来ないはずですから。
良かったですわね。お姉様――。
イザベラとライラの対面は近い……!
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