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十八話


「ニャ? アーマリア様、何をしているのニャ!?」

「知らないわよ。なんか魔石に鎧が反応しただけよ。ポイズンスモークって武装が出てきたわ」

「武装? 魔石を武器にする事が出来るという事なのだろうか?」

「ちょっと試し打ちをしてみるわね」


 パンチ=って所が気になるので私はそのままパンチを意識して鎧を動かしてみる。

 すると小手の先の部分が引っ込み、バシュッと放物線を描いて紫色の弾を発射したわ。

 着弾すると、その場所に煙が立ち込めている。

 ……ボスを倒すと、その特殊武器が使えるようになるのかしらね?


「トライヘッドの頭が吐いていた毒にそっくりニャ。アーマリア様の鎧はいろんな事が出来るのニャね!」

「あの敵を相手にも神々しい力を振っていましたものね。何の不思議もありません」


 本当に凄い鎧ね。

 でも、この魔石は地上で売る事になると思うから家宝の鎧が吸い込んで取り出せませんじゃ困るのよ。

 出てきなさい。

 そう意識すると、カシャンと魔石が出て来て鎧の手に握られていた。


「取り出しも出来る様ね。はい、メイ。しっかり持っているのよ」

「迷宮を出るまではアーマリア殿が持っている方が効率的に使えそうであるが……」

「使用回数があるみたいなのよ。それに帰りなら使う様な魔物はきっと出てこないわ」

「そうだとは思うが……」

「魔石も重要ニャが、皮や骨もしっかりと持って帰りたいのニャ。トライヘッドは毒もあるから色々と売れる所が沢山なのニャ」


 と言う訳で私達はメイの指示通りにトライヘッドを解体していったわ。

 ただ、やっている途中でトライヘッドは黒い影みたいになって地面に溶けていってしまった。


「迷宮の魔物は解体出来る限界数があるって話ニャ。とりあえず十分確保できたから問題ないのニャ」


 なんとも迷宮とは不思議な仕組みで出来ているのね。

 まあ神様が封じられているくらいだし、不思議なのは当然かもしれない。


「階層主は定期的に再出現するそうニャ。上位冒険者はその周期毎に倒しに来る事があるって話を聞いた事があるのニャ」

「このような敵をアーマリア殿無しで毎度倒すのは骨が折れそうである」

「そうですわね」


 アルリウスとフラーニャが各々感想を言った。

 トライヘッド自体はそこまで苦戦する相手ではありませんでしたわ。

 ヴィヌムスがどこまでしてくれるかわかりませんが、階層主を倒した報酬が高いのであるなら毎度倒すことで私の服役が満期を迎えるのが近付くかもしれませんわね。

 そう考えると、階層主退治も悪くないかもしれないのですわ。


 なんて思いながら私達は来た道を戻って行ったのですわ。




「あ! あの方ですね。よくぞ戻ってくださいました。話は聞いております。どうかご同行して頂いてよろしいでしょうか?」


 地上に戻ってきて、迷宮の出入り確認を警備の兵士にしようとした所で……なんか派手なローブと司祭の帽子を被った方、更にその後ろにずらっと無数の聖職者が私達に声を掛けてきた。


「おっと、自己紹介が遅れましたね。私はこの迷宮都市の教会にて大司教をしている者です」


 なんか凄い人がやってきたわ。

 そんな人が私達に何の用なのかしら?

 まさか偉い人直々に打ち首に……なんて雰囲気じゃないわ。

 ニコニコしているし。


「えーっと?」

「屈強な鎧に身を固め、三人のリープッドを連れたパーティーがドリイームの迷宮から出てくると、迷宮に封じられていたはずの段位神ヴィヌムス様直々の神託を授り、お迎えにあがりました」


 なんか警備の兵士が信じられない者を見る目で、顔面蒼白になって私達を見ている。

 う~ん、どうすれば良いのかしら?


「知らぬフリをしなくて結構です。神託により、高位の司祭達は揃って、貴方達の姿を見せられております。これこそが段位神ヴィヌムス様の奇跡なのです」


 あー……顔まで記憶されているって事かしら?

 私の場合は顔じゃなくて鎧っぽいけど。


「そうニャ! ドリイームの迷宮10階の階層主を倒した時に段位神ヴィヌムス様が姿を現したのニャ」

「ええ、その際に冒険者ギルドの者に紛れ込んでいた邪神の使徒と遭遇し、討伐したとの話も神託で授かっております。どうぞこちらへ」

「わ、わかりました」


 そんな訳で私達は大司教とその配下の皆さんの案内で迷宮都市の教会へと案内された。

 荘厳な雰囲気のある大きな教会ね……神学に関してアーマリアは真面目に勉強してきた訳もなく、こう言った施設を利用する様な事も無いので、本当、発見の連続よ。

 この大きな教会……神殿とも呼べる場所に案内された所で大司教は振り返って私に握手を求めてくる。


「よくぞ段位神ヴィヌムス様を解き放ってくださいました。教会を代表して感謝の言葉を述べます。お名前は……アーマリア様、メイ=クーン様、アルリウス様にフラーニャ様でよろしいのですよね? ギルドに確認をしました」

「あ……はい」

「そうニャ」

「間違いない」

「ええ」


 私達が答えると大司教は満足した様に頷く。

 あ、ずっと鎧を着ているのは失礼よね。


「失礼しますわ。まずは顔を見合わせるべきですわね」


 私は家宝の鎧に膝をつかせて鎧から降りる。

 すると大司教様とやらは私の顔をマジマジと見つめるわね。


「これは見目麗しい絶世の美女でしたか、さすがは神を解放した聖女様であられる」


 ……聖女だなんて言われちゃったわ。

 犯罪者の悪女なのにね。


「まずは報償……結果的な報告になりますが、お聞きください。皆様はそれが一番気になっていらっしゃる事であろうと思われます」


 こう……色々と興奮して言いたい事が無数にあると言った様子ね。

 大司教という割に落ち着きを感じさせないわ。


「まず段位神ヴィヌムス様解放の功労者であるアーマリア様は犯罪服役者との事でしたが、此度の功績によりその罪を完全に償ったとの判断を教会とギルドは判断し、更に貴族の爵位、土地……その全てを与えられる事になるでしょう。現在、アルム国との協議を進めている段階です」


 わー……もしかして前世を思い出す前の状態か、それ以上の爵位を与えられそうになっている感じ?

 しかも犯罪服役者も免除されるとか。


「あまりにも美味しい話過ぎませんこと?」

「それほどまでの功績だという事をご理解ください」

「そんなにですの?」

「ええ……何せ、人々に光明を指し示す程の大きな功績! むしろまだ足りない程でしょう。世界を一変させるほどの功績なのです!」


 あの神様を解放させることがねぇ……今一つピンとこないわ。

 いえ、封じられていた神様を助けたのだから、褒められる行ないだとは思うけれど。


「アーマリア様は神学に詳しくないご様子……ならばご説明してもよろしいですか?」

「ええ」

「そうですね……まず太古の昔、この世界は沢山の神様がおられました。その神様の加護のもと、この世界の者達は平穏に過ごしていたと語られております」


 大司教はそれから色々と話し始めた。

 なんでも神様がまだ沢山いた時代……邪神と呼ばれる存在が現れ、平和な世界が争いの時代へと突入した。

 邪神に対抗すべく、神々が一丸になって挑み、最終的には邪神を封じ、迷宮という場所が生まれたのだとか。


 ただ……その際、邪神は無数の神々を道連れにし、多くの神々も一緒に封印されてしまったそう。

 その影響で道連れにされた神々の加護が途絶えてしまった。

 人類の歴史はここで大きく衰退し、残った神々の加護を受ける事でどうにか平和を維持していき、現在に至る。


「その失われた神様の加護が本日、蘇ったのです! この事により、世界中で段位神ヴィヌムス様の加護が新たに……全人類に掛りました。皆様、自身のカードをご確認ください」


 言われて私達は自分のカードを確認するわ。


 ―ランク 段位4 アーマリア


 ……?

 段位って項目が追加されているわね。


「段位?」

「そうです! この段位とは段位神ヴィヌムス様の加護に他なりません。この加護の力により、人々はこれまで恐れ、脅威だと認識していた魔物に対抗する術を獲得した事に他ならないのです」


 滅茶苦茶大声で大司教が言い切った!


「段位を上げる術は魔物を倒した際に得られる魔素などから換算した代物であり、段位が上がることで今まででは出せなかった強靭な力を特に道具を介する事無く使えるようになると語られております。これは太古に失われた力なのです!」


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