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そうそうこの世界では魔法が使える。体内の魔力を使って何らかの力を行使する魅惑の力だ。それを知った時は嬉しかったなぁ。
でも魔法の威力とかは、魔力保有量によって違うから一般的に魔力保有量の少ない人族の因子が強い民は大変だ。
父上の前の前の前の前?世代くらいから色んな種族が婚姻を交わすようになったから、純粋な人族ってのは今は存在しないと言われてる。けれど、保有量には差があるから、保有量の少ない者達は効率を重視して魔術を使うんだ。けれど、魔術が魔力保有量の少ない者達の専売特許ってわけでもなく魔力保有量の多い俺らも魔術陣や詠唱ってのを習うし使う。人族の国が編み出した魔術とは系統が違うらしくて人族の因子しか持たない人達には使えない。彼等は妖精族が扱う精霊魔法を基本に数字や文言などを使って分かりやすく読解し、自分達の体内にある魔力を用いて顕現させ、魔法のような力が使えるようにした。それが彼らの言う魔術だ。数字と記号を図形としたのが魔術陣で、紙や杖、宝石とかあらゆるモノに描くことで魔術が発動出来る。数字と記号を言葉で表し唱えることで魔術を発動させる術を詠唱って言うんだけど、威力を上げるほど詠唱は長くなるし、魔術陣は複雑になる。多くの魔術陣を書き残し保存するために人族が編み出したのが紙だ。その技術も曾々祖父の時代には此方にも伝わっている。なお、此方で作られた紙は存在するだけで彼方では魔力を帯びているらしくかなり高額らしい。たまに人族に成り済ましたラーネポリアの商人が人族の国に向かい人族の使う日用品などを仕入れてくる。彼方の世界の魔道具は使ってる者達の魔力がそもそも小さいのにちゃんと動くから燃費がいいんだ。我が国の魔道具開発局は良いものを作るけど魔力保有量の大きい者にしか扱えなかったり、大掛かりだったりする。もっと魔道具が身近なモノになれば民だって生活しやすいだろうに。扱いやすい魔道具と言えば、人族産のものをさすけど、国内での流通量が圧倒的に少ないから高額になりがちだ。けれど人族の国の魔道具以上に使いやすいものが近い内にラーネポリアに流通すると思う。俺の弟によってね。
話が逸れた。
えーと、紙に書かれた魔術陣は一度使うと燃えるし、石や金属に刻まれた魔術陣は、復活の呪文をやらを唱えることで効果が復活する。でもまぁそれなりに魔力を消費してしまうから、紙に書かれた使い捨ての魔術陣を人族は使うんだって。
人族の国に魔術と言うものがあると知った此方の魔法研究者はあらゆる魔法も魔術と同じように書き記すことが出来るのではないかと考えた。
魔法って言うのはイマジネーションが全てだから、“火”と思っても使う人によって威力も色も違う。大きすぎる“火”は生活するには強すぎるし、弱い“火”は戦うには不向きだ。
その威力や持続時間なんかを平均的なものにしたり、強めたり、弱めたりするのに使う手段として魔法陣や呪文が編み出された。
魔法陣や呪文を使って魔法を発動すると魔力消費量が格段に節約出来るってのも研究者達によって分かったことだ。
魔術は、人族の叡知がもたらしたものだ。
人族至上主義論者などは多種族の因子が強い者は人族の叡知を使うなら使用料を払えなんて言ってるらしいけど魔術の発明に寄与した人族の学者の一族は今では人族の因子より魔族の因子が強い一族になっている。
ラーネポリアにいる人族至上主義論者達だって、多種族との婚姻を繰り返してて人族の純血種は存在しないんじゃないかな。
話は変わって、最近俺は旅に出たい欲求が毎日増強している。これはヤーヌ曰く、性分ってやつらしい。
けれど、この国の王子として民を導き治めていくことだって理解しているし、家族が幸せに暮らすために尽力するのは決定事項だ。成人したら色んなしがらみのせいで自由は感じられないだろう。
だから決めた。
冒険者になることを!
有言実行。
『つくづくショーは、ついてるね。』
真っ黒な毛並みを整えているヤーヌ。見た目は黒猫だが本来の色を擬態してもらっている。光の具合でキレイな金とも深緑色にも見える色に輝く毛並みが自慢らしい。
「なんで?」
『だってぇ、固有魔法がショーに都合のいいもんばっかりだからさ。隠匿魔法に鑑定魔法って、今頃従者のカイカイ泣いてるよ?』
城を抜け出してやって来たのは冒険者ギルド。
つい先日立てた誓いのもと、俺は冒険者ギルドに登録した。ギルドに登録するには試験があるんだけど、俺は頭が良かったし、要領が良くてと言うか、ヤーヌの強運のお陰で合格していた。




