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敵地
『敵地』
敵地でのびのびと出来る人は、強い
味方のいない街で、素性を知られないように暮らしながら、
敵地で平常心の生活を送れる人は、プロだ
それはプロの人間なのだと、そう思う
平穏の地など求めずに、自分でそれを作り出せる
人の間でしれっと生きる、それはプロの技である
誰もバカにすることなく、己を卑下することもなく、
人の間にしれっと紛れ込む、敵地でも心を乱さず生きている
砲弾が飛ぶのはむこうの方向だ
自分に当たることはない
母には当たるだろう、父は砕けるだろう
それでもしれっと、生きていく
敵は大勢いるが、味方はいない
その人の愛はどこにあるのだろう
誰も愛していないのか、
己を愛しているのか、
それともすべてを愛してしまったのか、
砲弾の行方が
それを教えることはない




