ドーナツのカス
『ドーナツのカス』
おやつにドーナツ
食べただけの思い出の夏
他にも楽しかったことは いくつかあったはずなのに覚えてさえいない小さな出来事の数々
うだる熱
命を脅かす喉の渇きに口にする薄いカルピス
同時に口に運んだフレンチクルーラーのドーナツ
ポロポロとテーブルの上に敷いたティッシュの上に落ちるカス
それを見ながら思ってしまったんです
私のようだと思ってしまったんです
そのカスの一粒一粒が私の日々のようだと思ってしまったんです
今までの人生で一番美味しかったと思えたあのドーナツ
まるでそれはこれからの人生を生きるためのチュートリアル
その甘さとサクふわ食感の他にも含まれていた何かのエッセンス
あー ごちそうさまっす
でもなんだかまだうっすらスキッパラっす
冷凍庫から取り出し食べるキャラメル味のハーゲンダッツ
いただきます
カスを見ながらいただきます
ごめんなさい私はカスです
カスがハーゲンダッツ食べてごめんなさいっす
見つめる明日
そこには何にもなかったっす
ドーナツは食べ終えたしハーゲンダッツもすぐになくなりまっす
もう何もすることはないでっす
私にはもう何もすることは
ありませんでした




