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意味がわかると怖い詩
『意味がわかると怖い詩』
夜はしずか
立ち並ぶ家には気配なく
世界に一人取り残されたような
妄想の中を歩く
振り返っても誰もいない
どこか遠くで話し声
電話の中のようなその声が
私をフィクションの住人に変える
家はどこだっけ
私の帰る場所はどっちだっけ
蛙の鳴き声に誘われて
記憶の捏造の中を進む
バッグに穴が空いていて
数分前に落とした財布の音を聞く
きっと誰も拾ってはくれないと
抱いていた期待は見事に裏切られる
月は静かに今ここにあり
影は熱を帯びて前へ伸びる
重なるふたつの存在に
私の悲鳴を小骨は聴いた




