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あの万能感を、もう一度
『あの万能感を、もう一度』
なんでもできる気がしていた
今はできなくても
できる未来がくる気がしていた
あの万能感はどこへいったの
もう一度、根拠のない自信に満ち溢れたい
雑誌の俳句コーナーで
準入選しただけで
天下を取ったみたいな気分になれていた、中二のあの日
無駄に世間がわかってしまった
無駄に自分がわかってしまった
自分が大したことのない人間だと理解して
自信は根拠にかき消されてしまった
悪いひとたちと遊んで帰っても
叱られるイメージをしながら帰ったら絶対に叱られないと
信じる自分の超能力が働いてパパが何も言わなかったのを
自分は未来には空も飛べると信じた高二のあの日
未来は永遠にある気がしていた
天井なんて、どこにも見えなかった
神に守られた自分は死ぬわけがないと思っていた
あの万能感を、もう一度




