ベビ
『ベビ』
振り向かないでね、マミ
あたしまだこの世に産まれてないから
羽根の生えた魚みたいにそっちに向かってるところ
けっして振り向かないでね、あたしが『マミ!』って声をかけるまでは
この世は綿菓子とソーセージでできてるところ
滑るような汗したたらせて
あたしは海を泳いでるよ
そっちはどんなに楽しいところだろう
どんなに苦しいところだろう
そんな想像をすることもまだできないから
教えてね、マミ
なるべく楽しく、楽しいほうでね
あたしの名前はベビ
あなたの名前はマミ
まだそれはきっと誰に認められた名前でもないけど
そんなことはあたしにはどーでもいいんだ
早く会いたいからって
早く空へ出られるわけでもなくて
あんまり早いと壊されちゃうんだって
おかしいね
これからあたしが住む世界なのにね
あたしは今、綿菓子とソーセージの世界にいて
これからそっちに投げ出されるの
なんで投げ出されないといけないのかな
ずっとマミの中で漂っていたくもある
でも、やっぱり会いたいよ
マミの顔って、どんなのか見たいよ
そうなったらあたしたち、他人同士になるんだよね
それでもいいよ
あたし覚悟してるから
マミって呼んで笑うから
ベビって呼んで笑ってね
初めて会う日が楽しみ
でもそれまでは
あなたは死なないように気をつけて
けっして振り向かないでね、マミ
あたしまだ不確定事実なんだから
羽根の生えた魚なんだから、まだ
ベビにもなってないんだから、まだ
気をつけて
気をつけて
脆いあたしを死なせないように
脆いあなたを死なせないように
ベビって呼んで
必ずだよ




