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鬼は自分を鬼だと自覚しているだろうか
にこにこ温和な笑顔を浮かべて
鬼が私の命を削る
鬼は自分が鬼だと自覚しているだろうか
人間のつもりでいるのだろうか
しかもとても優しい類いの
私を気遣うことばとともに
鬼が私の命を削る
鬼は自分を鬼だと自覚しているだろうか
人間のつもりでいるのだろうか
人間として当たり前のことをさせている
そんなつもりなら
やっぱり桃太郎は必要だ
鬼を鬼とわからせるための
やっぱり犬と猿は必要だ
でも私は雉だから
一人じゃなんにもできない雉だから
きびだんごだってほんとうは食べられない雉だから
今は鬼と仲良くしよう
今は鬼の機嫌をとって
にこにこしよう
にこにこする雉であろう
早く来ておくれよ桃太郎
私ずっと
待っているから
待っているだけしか
できないから




