【200回記念】失敗詩編
『セックス』
わからなくていいからね
わかるはずないんだから
わかったフリもやめてね
あなたは他人なんだから
それでも詩は
あなたを浮かび上がらせる
わたしのことばに乗せて
あなたを浮かび上がらせる
わたしのことばは
省略されて
あなたのことばになる
べつのものになる
大丈夫だよ
それはけっして
恥ずかしい自慰行為なんかじゃないからね
あなたは今
わたしとセックスをしているの
『ヨーコ』
ヨーコは今90歳
抱いてほしがる
今でもジョンに
あたしはきっと
彼女になれない
なりたくもない
でもあたしはね
ジョンに抱かれ
愛を囁かれたい
どこにもいない
彼のあの声で耳
に愛を吹きかけ
られたいでもヨ
ーコがいるから
きっとあたしは
彼の息吹さえも
感じることが
できなかっ
たのだ
『眠れない大地』
大地はさびしさに震えている
自身のふるえで眠れないのだ
『バングラディッシュ』
バングラディッシュって
壮絶な名前だね
バンって撃たれて
グラってなって
ディッシュをぶちまける
『君のナビはいらない』
ねぇ、スマホ
君のナビはいらないよ
どうして50メートル左手に見えてるあの建物に
2キロ先まで行ってUターンして入らないといけないの
どうして自転車1台しか通れない細道を
大型トラックに通らせようとするの
どうしてほんのちょっとでも渋滞してたら
まっすぐ行けばいいとこを裏路地へ回らせようとするの
かえって遅くなるよ
ねぇ、スマホ
君のナビはいらないけど
君がいなければ私はもっと道に迷う
『月に刃向かい……』
糞が
糞が
糞が
糞が
『産婆さんのサンバ』
るー るるるー
サンバ
歯を剥いて
さびしげな
笑いの中に
アップする
ダウンもする
またアップする
月へ向かって
お尻フリフリ
行進していく
るー るるるー
るららら るらら
産婆さんのサンバ
『しっとりブルース』
しっとり犬のハウアーが
ハーモニカを首輪にぶら下げて
酔った勢いで歌い出す
とてもしっとりした
しっとりブルース
いぬ
布ナプキン
しりとりブルース
負けたハウアー
『タイトル不能』
ブテスティックな ぶたの色
ふたつに割れて 大わらわ
かそ
かそ
かそ
可塑!
わらわは犬ではありませんぞえ
平安貴族の美人に化けて
過疎化の村を救うは
すごいおデブさん
アメリカへ行けば
デーブと呼ばれる
とても美人に化けた
おデブさん
『唇のかわき』
唇がかわいてる
腕をすべる自分の腕が電流を起こす
喉から口蓋垂が前へ飛び出して
わたしの息を塞ごうとする
わたしは何処にも行く宛なくて
仕方なしに自分の唇を舐める
ほんとうは
誰かに潤してほしいと
下腹部のあたりで叫びながら
『女の子は何が欲しいの』
女の子
何が欲しいの?
何を待っているの?
間違えたと思ってるの?
それともただ愛せないだけ?
女の子
何を怖がっているの?
心の中で叫び声をあげながら
なぜともわからずに
わたしはただ快楽を求める




