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黒いけむり
『黒いけむり』
あの時一瞬だけ吸い込んだ黒いけむりが わたしを蝕んで行く
15時間何も食べなかったことが わたしの体内に歪みを遊ばせてしまった
12km歩き続けたことが わたしの内容を入れ替えてしまった
内臓は焼けただれ
水分は汚水のように濁り
そして記憶は
遠い海のむこうから彼女を連れて来た
白い小舟に乗って
忘れていた歌をうたいながら
青くて白い羽根を広げ
壊れやすすぎる彼女がやって来る
真っ黒に
台無しになったわたしの中を
めざして彼女がやって来る
わたしは何もなくしながら ただその時を待つ
わたしの内容に彼女が触れ 黒いけむりを掻き出してくれるのを
わたしのいつもの日常が いつも通りに続くようにと
わたしがあんなに憎んでいた いつもの日常が戻って来るようにと
黒いけむり 黒いけむり
おまえが中に入ったというだけで
わたしの排泄欲は止まらないのだ
非日常的に わたしは排泄し続ける機械だ




