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つれづれに
『つれづれに』
私の前に一本のギターがある
赤い血の色のようなギターだ
ネックを握り持ち上げる
私の退屈が滴り落ちるような音がした
つれづれに
周囲を見渡すと
私が生きている気配がする
白い蛇が目の端をかすめて
飛んで行く龍のしっぽが空へと消えていった
つれづれに
忙しい日をたまに離れて
自身の現在地を発見する
そこから空までは遥かに遠くて
しかし確かに繋がっていた
ギターを爪弾けば
確かにここには音があった
いつか懐かしく思い出すような
新しい音色が
響いた
アイルランドの懐かしい歌のように




