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第1章-18  SIDE東門&南門

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皆々様ありがとうございます。

----東門SIDE----


 これはまずいことになった。ゾンビ達の行動が速すぎる。予定ではひしめき合いながら攻めて来るゾンビに対し、範囲魔法で大打撃をあげてからテンマに遊撃として動いてもらうはずじゃったのに…最悪なのはこやつらのボスは、戦術を考えるだけの知能があるという事じゃ。


「マーリン様、またゾンビが動き出しました。さきほどの生き残りと合わせて3000程です」


 また増えたか、厄介じゃのう。まだ一気に向かって来てくれた方が魔法の節約になるんじゃがのう。


「わしがファイヤーストームを三発放つ、その後は瀕死の個体は無視して、ダメージの少ないゾンビに矢を放つのじゃ」


 そう言いながらファイヤーストームをゾンビの群れ目掛けて放つ。しかし1000体程しか殺せていない。


(これはまずいのう、日の出まではまだ6時間以上あるというのに)


 目の前には1000体減らしたぐらいでは、大して気にしていないかのように攻めて来るゾンビ達、


 塀に到達するゾンビも増えてきたのう、魔力はまだ余裕があるが先に体力の方が尽きそうじゃ。

 

「煙で視界が悪くなっておるから撃つ場所には気を付けるのじゃぞ!」


 今度はエアブリットを10発ほど連射しながら指示を出す。ここに残った魔法使い達の魔力が危ういかもしれん。


「魔法使い達は少し手を休めて、魔力ポーションを飲むのじゃ!」


 他の魔法が止んだ所でウインドカッターを数発放っていく。巻き起こる風で煙が散らされていくが、現れたゾンビの数はあまり変化がないようだった。


「小型のゾンビはゴーレムに任せるんじゃ!中型と大型のゾンビに矢を集中させてダメージを与えるのじゃ!」


 小型のゾンビは数が多く比較的動きが速いためすぐに塀までやってくるが、魔法攻撃の余波やゴーレムの一撃で簡単に死んでいく。中型以上になると頭にある程度のダメージを直接与えないことには倒れはしなかった。


「中型以上のゾンビがだいぶ増えてきたのう」


 マーリンの言葉通りに、最初の頃は小型の中に中型がたまに見えるくらいだったのが、今では小型6に中型以上が4、といった感じになってきている。

 数は先程から増えもしないが減りもしないといった感じで、常に3000程がゆっくりとこちらの方へ向かって来ている。


 その時、北門で大きな火柱が上がり砦の付近を照らした。


「敵襲か」

「なんだあれは!」

「北門は無事か!」


 次々に辺りから声が上がる。中には敵の新手だと騒ぐ者もいた。


「落ち着くのじゃ!あの火柱はテンマの魔法攻撃に違いない!」


 と周囲に説明をしたが騒ぎはなかなか収まらなかった。


「マーリン様、いくらテンマが上級魔法を使えると言っても、あんな魔法は聞いたことがありません!」


 一人の魔法使いがそう上ずった声で話してくる。


「あれは間違いなくテンマじゃ。テンマの魔力は既にシーリアを越えておる。才能だけならわしも敵わんじゃろう。しかも、あの年で既にいくつかのオリジナル魔法を完成させておる。あれもその内の一つじゃろう」


 と説明した。その言葉に皆は半信半疑だったが伝令による、天馬が魔法で北門に集まっていたゾンビ達、およそ4000をほぼ壊滅状態にして西門へと向かった。との知らせに歓喜の声を上げていた。




----南門SIDE----


 南門には4~500m程先にゾンビ達が7000匹ほど群れている。


「こちらのゾンビ達の動きはどうなっている!」


 リカルドの問いにシーリアは森から這い出てくるゾンビ達を睨みながら、


「今のところは目立った動きはないわ、不気味ね」


 と難しい顔をしながら答えた。


「ゾンビだから不気味なのは当たり前だろ」


 とリカルドはわざと軽い調子で話しかけるが、シーリアは真面目な顔で、


「違うのよ、そういった不気味じゃなくて行動が怪しいって事なの。何かを待っているみたいにじっとしているの」


 と返事を返してきた。確かにゾンビ達はかなりの数が森から出てきているのに、こちらとわざとに距離を取っているようにも見える。


「なにかってのはなんだと思う?」


「わからないけれど、こちらにとっては嫌な事でしょうね」


 と話していた時、東門から魔法を連発する音と光が見えた、


「東門との同時侵攻か!」


 とリカルドは構えたがゾンビ達に動きはない、拍子抜けするリカルドだったがすぐに、


「確かにこれは不気味だな」


 とシーリアの予感に同意する。


「シーリア、魔力は大丈夫か?」


「ええ、さっきポーションを飲んだからほぼ満タンよ」


 と話をしているとゾンビ達がゆっくりと前進を始めた。


「全く、ゾンビの思考回路はどうなっているんだ?」


「そうね、なぜ東門と同時にかかってこないのかしら。まあだからこそ不気味なんだけれども」


 と不可解な部分もあるが二人は行動を開始する。


「魔法使い達は横一列になって俺の合図にあわせてファイヤーボールを放ってくれ、戦士組は待機だ」


 と指示を出す。ゾンビが200m程まで近づいた時、


「放てー!」


 リカルドの合図が出た。それに合わせ魔法使い達が魔法を放って行く。


「続けていくぞ、今度はさっきよりも先のところを狙え。放てっ!」


 そう言って5回合図を出す。それによって2000匹近いゾンビを殺すことに成功する。


「このまま単純作業で終わってくれたらいいんだがな」


 とリカルドは呟いた。それを聞いたシーリアは、


「そうなったらいいけど。まず無理でしょうね」


 と切り捨てた。その間もゾンビ達は仲間の屍を踏み越えて向かってくる。


「さっきと同じ戦法で行くぞ、放て!」


 ゾンビ達は相変わらず密集隊形で、門を目指して向かってくる。


 魔法を放ち、ゾンビを焼き屠り、一息いれ時々ポーションを飲む。これを繰り返し1万を越えるゾンビを殺していき半ば作業になり始めた頃、リカルドの元に伝令が届く。


「なにっ、北と西にゾンビの群れだと!」


 同じことの繰り返しで感覚がマヒしていたところに、突然奇襲がかけられた。

 普通のゾンビにはそのような戦法を取れるわけがない、と思い込まされていた分だけ周りの混乱は大きかった。


「すぐに北と西に待機している魔法使いと戦士を出すように伝えてくれ!」


 とすぐに指示を出そうとしたが、伝令から北には天馬が向かっているから、待機中の魔法使いは西へ送るようと伝言を頼まれた、とのマーリンの指示を聞かされすぐに指示を変える。


「北には戦士だけ向かってくれ!待機中の魔法使いは全て西に行くんだ!」


 リカルドの指示ですぐさま待機組は動き出す。


「シーリア、こちらの魔法使いはよそに向かわせられそうか?」


 と聞いてみたがシーリアからは、


「無理ね、ゾンビ達はこれを狙っていたみたい。向かってくる速度が上がったわ」


 と返ってきた。ゾンビ達は先程までは密集隊形だったのが今は間をあけてこちらへ向かっている。


「さっきまでの攻撃は演技だったのか」


「信じたくはないけれど、そうだったみたいね。わざとやられて裏では包囲作戦を進行させていたなんてね。こんなことは歴史上でも初めてのことじゃない?」


 と冗談詰りに言っているが、顔には余裕がない、


「テンマがどこまでやれるかが気がかりだが…」


 ともらすリカルド。しかしシーリアはそんなに心配をしていないような声で、


「それは大丈夫だと思うわ。あの子は私より魔力があるし、いくつかのオリジナルの攻撃魔法を編み出したみたいだから」


 と言ったがリカルドは不思議そうに、


「なんでそんなことを知っているんだ?」


 と訊ねてきた。


「あの子は隠しているみたいだったけれど、たまに不可解な威力のある魔法を使っていたの。ブリットもそうだけど、あの子は私たちが考えつかないような工夫や改良を得意にしていたみたい」


 実はブリット系の魔法は、天馬が前世の記憶から拳銃を想像して編み出して、シーリアたちに教えたものだった。そのほかにも前世の知識を魔法に応用していたため、それを見たシーリアはオリジナルと勘違いをしたのだ。

 しかしそのことを知っているのは天馬本人と神達のみなので、オリジナルと言っても過言ではないのだった。


「ただ、経験が少ないのは確かだからそれだけが心配ね」


 最近のシーリアからは、以前の天馬に対する過保護なところが無くなったな、とリカルドは思う反面、天馬について自分が知らなかった事を知っていたシーリアに対して、少し嫉妬もしていたのだった。


「それなら、ここのゾンビをさっさと全滅させてテンマの応援に行くか!」


「そうね、それを目標にしましょう」


 とファイヤーストームを放ちながらシーリアが返事をしてきた時、北門で大きな火柱が上がった。


「なあ、シーリア。あれってもしかしてテンマの魔法か?」


 突然のことに一瞬の間、南門の防衛にあたっていた者とゾンビ達が動きを止めた。


「多分、そうじゃないかしら…」


 少し引きつったような顔でシーリアが答える。


「ん、シーリア!ゾンビ達の動きが止まっている。今の内に魔法攻撃だ!」


 その言葉にシーリアがファイヤーストームを5発立て続けに放つ。他の魔法使い達も続いてボール系の魔法を連続で放っている。


 なぜだかは分からないが動きを止めていたゾンビ達は、対応に遅れ次々と魔法により倒れていく。その数は3000を上回る勢いであった。


「よし、かなりの打撃を与えられたぞ!」


 門の近くまで寄ってきていたゾンビのほとんどが死に、ポッカリと空白地帯が出来たようだった。それと同時に西門でも火柱が上がる。あれほどの規模の魔法ならかなりの打撃を与えているだろう。

 リカルド達はこのまま行けば自分たちは生き残れるのではないか、と思い始めていた。


 次の瞬間に森の奥から、薄黒い光線が放たれるまでは……


もうそろそろ第1章も終わる予定です。

最初はここまで長くなる予定ではなかったのに、気が付けば20話目前となっていました。

しかし、ヒロインを出す暇がねぇ……どないしよう……



まあ2章に乞うご期待ということでお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 頭をたおさな
[一言] 壁]_・)ノ”ヒロインは王様で(笑)
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