50・そして、新たな戦端が開かれる
ここの所、何の代わり映えも無く行われる南京政府の空襲。
だが、1941年も暮れという頃にいつもとは違う大編隊がやって来た。
しかも、台湾を狙うのではなく直に九州へである。
九州には九八式双軽の配備はない。まさか来るとは思っていなかったし、いつも通りに数機単位であれば、九六式戦で十分間に合った。
だが、今回は30機という大編隊でやって来た。
レーダーが有るので発見自体は可能だが、迎撃に上がる機体がどうしても少なく、戦闘機の群をすり抜けた爆撃機が八幡を爆撃して去っていくという事件が起きる。
被害自体は大したことはなかったが、撃墜した機体を捜索した結果、搭乗員は当然の様に白人であり、機体も旧来の米独機ではなく、どうやら米国の新鋭機らしいと分かった。双垂直尾翼なのでB25だろうという話だ。
だが、さらに厄介な奴が1942年になると現れた。
4発機である。
B17ではないソレは一直線に九州へ向かうのではなく、かなり余裕のある韜晦飛行をしてやってきた。
そんな事もあって確認が遅れ、大神工廠が被害を受け、建造中の戦艦の工事がストップしてしまう。
さすがにこんなことが連続して起きては困ると98双軽による基地襲撃が計画されるが、B25はともかく、4発機はかなり内陸らしい。
「B17の航続距離はそんなに長くはありません。爆撃任務で飛べるのは2500km程度ですから、双発機と同じ基地に居るはずなんですが、居ませんね」
九八式双軽から武装を取り除いて630kmで飛べる高速偵察機となった百式による偵察でも発進基地が判然としなかった。
つまり、3000kmの航続距離ですら足らない長距離機という事になる。だが、形はB29ではないので、他の機体。
結局、九八式双軽を九州にも配備して対処するという事になり、配備が行われた。
しかし、数には勝てない。完全に防ぎきる事は出来ず、爆撃が繰り返されてしまう。
そんな時、海軍が新型機を投入すると言い出した。
ゼロ戦らしい。
だが、史実の零戦ではない。
この世界、空冷星形は三菱の専売特許みたいなものだが、二宮エンジンが席巻しているので三菱も数を絞って二宮に対抗可能なエンジンのみを生産するようになっている。
そのため、ゼロ戦のエンジンは栄でもなければ瑞星でもなく、金星だった。
金星1200馬力エンジン。現状の栄と似たような馬力であり、それを紡錘形の機体にまとめている。何だかゼロ戦というより雷電なんだが。
このゼロ戦、最高速度は530kmとちょっと中途半端。ただ、空冷エンジンなので軽くは仕上がっている。
史実ゼロ戦との違いは航続距離以外には見出せない。航続距離というか、滞空時間の過剰要求だけは何とか取り下げたらしいが、複葉機時代の曲芸がやりたい連中が関与しているのでまあ、性能は零戦だ。
しかし、エンジン直径が大きくなるので水冷の様に正面空気抵抗を小さくできないという事で、紡錘形を採用したらしい。
だが、その努力を嘲笑うかのような機体を二宮が作ってしまう。
九六式戦闘機の性能向上を行っていたのだが、軽量化のために空冷を搭載してみようとなった。
当然、装備されたのは金星エンジン。
いくら水平対向エンジンと言っても、やはり星形エンジンよりは細身なため、金星搭載には機体の処理に四苦八苦した様なのだが、模型でアアダコウダやってるところに中島さんが助言した。
「側面の段差埋めるんなら、排気を流せばイインダヨ。重量増にもならないし、治具の変更も無くて済むでしょ?」
最初は誰も信じなかったが、実験してみると、どうやらそれをやるとイケるらしいと分かり、エンジン架と側面集合排気管だけしっかり作って機体側は九六式のままとした。
結果、ゼロ戦より速い560kmを記録。海軍側を驚かせたという。
二宮は空冷機を作って海軍に売りこむ気も無かったので、過去に行ったエンジン技術同様に今回の空力技術も提供した。
三菱で何があったのかは知らないが、零戦の後継機が春を過ぎた頃には初飛行してしまうんだから、結構な刺激だったんだろう。その三菱機はどこかF8Fだったが。
ちなみに、ゼロ戦の武装は史実と同じではない。
すでに南部13mm機関銃が陸海軍共通で使われていたし、20mmについても南部銃器が開発していた。
「APIブローバックじゃないからエリコンの製品とは違う」
と南部さんが言い訳しているそれは、たしかに史実九九式一号銃並みの30kgしかない重量でありながら二号銃並みの銃身長を実現していた。
元ネタはウォッカ技術が作り出した傑作、GSh-30-1という超軽量30mm機関砲らしいよ。つまり、50kg前後で30mmを作っているという訳だ。
さすがに発射速度は本家の半分以下らしいが、それでも恐ろしい。
ちなみに、30mm機関砲については余剰生産力のある金星を採用して開発された九六式の兄弟機、二式戦闘機「鍾馗」に採用された。
陸軍としては九八式双軽が大活躍しているのは良いが、如何せん双発で大柄なのでコストが高い。そこを単発機で補う機体は無いかという話となり、二宮の試作機に目を付け、鍾馗の採用となった。
鍾馗に採用された新規設計の翼は当然だが九六式にも使える。
これまで機首に13mm機関銃2門だった九六式もこの新型翼を利用することで翼に6門まで機関銃を増やせるようになる。九六式では大口径は不要だろうと13mm2丁を翼に追加した型が生産されることになった。
日本国内で新型機が開発されている間も南京軍に変装した米軍の爆撃が止むことはない。
これは実際に一度、南京にガツンと制裁を加えるべきだろうという意見がやはり出て来た。
何もしない訳にもいかないだろうと、航空攻撃は許可した。
だが、それがとんでもないことになってしまう。
以前、上海でパナイ号事件があったので各国軍艦の情報をしっかり攻撃部隊に周知してから攻撃を行ったのだが、パナイ号は白いはずの船体が黒くなり、南京軍の艦艇に混じるようにして停泊していた為、攻撃対象となって沈没してしまう。
当然、大喜びするルーズベルト。
日本が攻撃するのを待っていたとしか思えないほどありきたりな声明文が即座に出され、抗議や賠償ではなく、最後通牒を突き付けて来た。
最近の新たな組閣で再度総理大臣になった乃木さんも苦笑している。
俺?そのまま軍務大臣を続けているよ。軍を抑えるには皇族が一番だと言われて。




