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45・そして、緊張は高まっていく

 1938年は欧州の戦雲と共に流れていく。


 そんな情勢を余所に、東ロシアには人がどんどん流れ込んできていた。


 東方移民と呼ばれる人々で、多くはソ連で何らかの理由で捕まった人々も多く含まれている。


 だからと言って、ソ連との関係改善があった訳ではない。


 ソ連としては不要な不穏分子を国外へ追放しているだけ。人が来ることを歓迎する東ロシアも拒む理由がない。


 そんな訳で、関係は険悪ながらも利害の一致から国境は開いている。


 普通に考えて、そんなことをしてはソ連に不利なのではないかと思ったが、そうでもないらしい。


 ソ連が守りたいのは、主にウラルの西側。東側はせいぜい、オムスクで防げたらよいくらいの考えらしかった。


 その程度には東ロシアを警戒しているし、油断はしていない。だが、不穏分子を国内に留めておきたくないから放り出す先としては好都合。そんなところだった。


 いくら相互監視がなされたソ連国内と言えど、地下に潜った不穏分子をすべて監視するのは難しい。ならば、国外に放り出して、侵入のみを監視した方がやり易いと考えているのではないかという。


 それは東ロシアにとってはありがたい面と、工作員が紛れ込むリスクを抱える事にもなりはしたが、東ロシア自体がロシア帝国の後身、その程度の監視体制は当然ながら張り巡らせている。


 その為、どことなく、今の住み分けが自然と成立しているような状態な訳だ。


 そんな東ロシアにおいて、豪州戦役における九五式軽戦車の損害状況は看過できないモノだった。


 九五式の装甲では対戦車砲から防御できなかった。


 ならば、もっと重装甲の戦車が必要になって来る。


 幸いにして、搭載エンジンは八九式に使われた12気筒エンジンを使えばよい。今では改良されて170馬力であったものが250馬力になっている。排気量アップした新型は400馬力にもなるというではないかと。


 その頃、日本も同じ悩みを抱えていた。


 九五式軽戦車はバランスの取れた優秀な車両ではある。しかし、主力足りえないことが判明した。


 そこで、新型戦車開発を始めた。


 日本は戦時体制なのでそう言う決断と作業は迅速である。そこに東ロシアも参加してくれるので、色々やり易いという。


 東ロシアが提案してきたのは、九五式を大型化して野砲を搭載した戦車だった。まんまT34だよね?


 それに対し、日本側では装甲を増した八九式で良いではないかという意見が多かった。まあ、それもT34の亜種ではあるよね。


 そんな考えの違いがあったのだが、いわば、A20とA32と言ったところか。


 そこで、間を採って57mm砲を装備する戦車ではどうかという提案を、南部さんが出した。6ポンド砲を装備して中間的な性能を持つ車両となる。


 双方その案で妥協した結果、急ピッチで試作に入り、来年には制式化出来るらしい。


「殿下、ゲームで遊べる戦車が出来ましたぞ」


 南部さんがそんな斜め上な事を言っている。


 走攻守のバランスが取れた戦車に仕上がっているそうで、砲性能はウォッカ冶金技術を導入した60口径砲と硬芯徹甲弾(HVAP)の運用で並の75mm砲よりはるかに高性能になるという。榴弾威力は75mm砲に劣るが、これまでの47mm砲に比べれば強力になる。


 装甲厚は東ロシア主張の50mmから60mmへと増大、車体サイズは日本が主張した八九式に近いコンパクトなモノとなり、東ロシア案に近い砲塔に57mm砲を装備し、窮屈さを改善。その結果、重装甲にも関わらず20t程度に収めることが出来ている。

 その車体を動かすのは水平対向12気筒400馬力のエンジン。その馬力と変速機の性能も相まって路上45kmを可能にしている。時代を考えれば十分高性能で間違いない。


 日本は東ロシアに引っ張られるように大型戦車を開発、配備している。想定戦場もシベリアなのだから、東ロシアに合わせておいて問題はない。


 そして、海軍は戦艦の進水に沸き立つ中で、空母の増勢にも取り組んでいる。


 そもそも、ワシントン条約締結後に建造した龍驤型空母のオーバーホールを考えると、そのスキを埋める空母が欲しいし、なにより、空母が少なかったことでハワイ攻撃を実行する事が出来なかった事実がある。


 その為、ハワイ攻撃を行うためには6隻の空母を稼働状態に置きたい。そのためには最低8隻の空母が無いと困るという話になった。


 そうして、戦艦建造とは別枠で空母建造が開始され、蒼龍型がさらに追加建造されることになった。


 蒼龍型が完成系という訳ではない。


 それどころか、右舷に2基のエレベータを設けた事で、着艦後の収容に支障が出ている。出来ればもっと前方にエレベータが欲しいが、舷側エレベータにすると波を被る。


 そんな問題が出たため、改良型の設計が進行中だが、その完成を待ってはいられない為、不便に目を瞑って蒼龍型を更に追加建造する事になった。


 今のところ単なるブラフでしかないが、ドイツとチェコスロバキア、更にはハンガリーまで加わった欧州の問題は一つ間違えば大戦の引き金になりかねない。


 そこに深くのめり込んでいる英米関係は一触即発状態。早期に準備しておいて悪いことは何一つないわけだ。


 と言っても、空母の完成は1940年半ば以降の予定だけど。


 そんな日本の状態を余所に、支那では米国が送り込んだ武器、更には兵員によって本格的な戦闘が始まっている。


 だが、増加試作機を次々と投入している陸軍の双軽が防空戦闘機としても大活躍中だ。


 25mm機銃を装備して高速で飛行できるため、大抵の南京軍機を捕捉、攻撃できている。特筆すべきは高速爆撃機としておそれられたSBを事も無げに撃墜した事だろう。


 まあ、世代が違うから仕方が無いか。


 そんな大活躍の最中に、制式化し九八式双発偵察爆撃機となった。追加で戦闘機も名乗らないといけない状態だがな。


 そして、ズデーテン割譲はひと段落したモノの、1939年を迎えてもまだハンガリーとの問題が未解決の中で、ダンツィヒ問題が先鋭化してくる。


 もう、完全に史実をなぞるような状態になっている。


 いや、より悪化しているかもしれない。ドイツには米国という後ろ盾が居るのでもっと安易に開戦しそうである。

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