41・そして、問題点が見つかった
日米開戦という大事なのだが、戦闘らしき戦闘がほぼ起きていない。
米国も宣戦布告をしたは良いが、フィリピンも満州も従わないというのでは、海軍を動かすのに少々困ったことになっている。
まずはハワイに物資を持って行って、そこから出撃して戻って来る事を前提にした準備を始めた段階だという。
日本側もハワイまで長躯、攻めていくには戦力的に厳しい。
空母が一応3隻何とかなるが、3隻でと言っても、九七艦攻や九九艦爆がある訳ではなく、九二式艦攻を空冷から液冷エンジンへ換装した九六式艦攻へと転換がはじめられたばかり。戦闘機すら主力は複葉の九〇式。九六式はようやく機種転換が終った部隊が蒼龍に配備されたばかりという段階でしかない。
と言っても、米国だって台所事情は似たようなもので、まともに動く空母と言えばレキシントンとサラトガ、レンジャーの三隻。ヨークタウンが来年には戦列に加われるかどうかといった状態。
お互い、主力は戦艦だが、日本は38センチ砲戦艦6隻に対して、ワシントン条約で日本をなめ切っていた米国は38~40センチ級戦艦の建造を行わなかった。
その結果、今の米国は「勝てるとは思うが、相手38センチやん?」と、少々躊躇がある状態。
結果、拙速に動こうとはしていない。
唯一、潜水艦を活発に活動させているのだが、それらは巡洋艦搭載の水上機を警戒に飛ばしたり、シコルスキーと川西が共同開発した九五式飛行艇を飛ばして警戒に当たっている。
そして、航空主兵論の残滓として開発されていた双発艦上機、九六式艦上偵察機。
二宮製水冷水平対向12気筒660馬力エンジン2基を積み、九七艦攻程度の軽量小型な機体に仕上げた逸品だ。
時速430kmと案外悪くない。そして、駆逐戦闘機として開発されたことから機首をガラス張りにして旋回機銃を装備する設計となっていた。
しかし、シュナイダートロフィーの記録やH型16気筒エンジン栄の登場によって、開発は立ち往生。
そして、何とか偵察機として完成を見ることになった訳だが、九六艦戦より遅いという問題が出てきてしまう。
結局、偵察機として採用されながら、南部さん開発の九六式25mm高角機銃を装備して、60kg爆雷3発を積むように改造されつつある。
航続距離も結局、九六艦戦と気持ちの差しかなく、速度で負けている以上、偵察機としては使い辛い。
だが、三座で機首がガラス張りなので哨戒機にはうってつけという事になった。
陸軍がコレを見て何を思ったか、偵察攻撃機なる思い付きを川崎に持ち込んで、栄を2基積んで600kmで飛ぶ九八式双発軽爆撃偵察機が開発されるのだからわからん。
九六式偵察機の方がその機体容積と滞空時間の短さから、陸軍の九八双軽をベースにした陸上哨戒機の開発へと転換されるのだが、まあ、何がどう転ぶか分かったもんじゃないね。
そんな訳で、波穏やかな太平洋。
しかし、そうでないところも存在している。
ルーズベルトは言った。豪州侵略が満州侵略を招くのだと。
その言葉を履行するように、豪州への大規模軍事援助を始めている。そこには自国では少量生産に終わったT4戦車をさも最新鋭であるかのように新型砲塔と新式37mm砲を装備して高値で押し付けている。
性能はまあ、BTほどではないが悪くはないみたいだ。
その結果、戦車を持たない西豪州政府軍や駐留日本軍は戦車の配備を要請し、出来たばかりのハゴたんが送り込まれている。
米国による大量軍事援助は豪州での戦いを更に悪化させ、日本が特に交戦していない米国ではなく、西豪州政府の支援を優先する事になった。
さらに、南京政府も日本に宣戦布告。
これが困ったことに、ドイツを介して海防重巡が南京政府海軍に渡っている。
「戦艦で当たれば楽勝でしょ?」
そう、それはもう、あっという間だ。
「いえ、そうなのですが、米太平洋艦隊が秋までには動くと思われますので、動かせる戦艦は安芸のみです。かと言って、27ノットは出る敵艦に対し、安芸では如何ともしがたく」
何とも困ったことに、南京海軍がうろつく台湾周辺に戦艦の派遣が出来ない。
「なら、巡洋艦を向かわせるしかないか」
そうなるのだが、まあ、それはそれで
「はい、それしかないのですが、敵は海防戦艦です。主砲こそ条約規定に適合させては居りますが、装甲は巡洋艦の比ではなく、かなり苦戦するものと思われます」
まさか、戦艦があるから大丈夫と思っていた相手が、ここに来て難敵になっている。
まさか、戦艦をぶつければ簡単と思われていた敵に対し、肝心の戦艦を投入出来ず、巡洋艦を差し向けてどうにかしないといけなくなるとは、正直、誰も思っていなかっただろう。
東シナ海や台湾海峡をうろつく南京艦を捕捉し海戦が発生した。
当然と言うべきか、相手は海防戦艦を名乗るにふさわしい重防御、対して条約型巡洋艦では自身の20cm砲を防ぐのは難しい。
日本側は重巡3隻を投入してのタコ殴りにしたのだが、海防重巡が機能停止した頃には、重巡3隻中2隻は戦闘不能に陥っていた。
たかが1隻に対して3隻を向かわせて何とか仕留める事が出来るというこの状態に衝撃を受けるしかなかった。
「これは、重巡洋艦というのが中途半端という事なのか?準主力艦という売り文句の割に撃たれ弱い気がするが」
そう尋ねると、海軍側の人間は答え辛そうにしている。まあ、仕方がないだろう。戦艦のような防御力など望みようがない。攻撃力も明らかに中途半端。特に、戦艦同様に防御力を十全に考えてきている場合、条約型重巡では分が悪すぎる。
こうして、次期重巡洋艦は手数で勝る事を重視して自動装填式を採用し、防御力も十分に考慮して、随分前に没になった2万t級の大型艦になる事が決まりそうだという。
日本側がそんな右往左往していた10月18日、とうとう米艦隊が真珠湾を出撃したという報がもたらされることとなった。




