表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/62

33・そして、また一つ歴史が塗り替えられた

 1933年も衝撃的な年末となる。


 権兵衛さんが年越しのあいさつにやって来た。


「山本さん、命日過ぎてますよね?」


 先に訪れていた南部さんが無遠慮にそんな事を言う。


「そうだね。12月に亡くなるんでしたっけ?」


 俺に向かって言ってくるが、知らない。


 そして、乃木さんもやって来た。


「山本さん、完全に世界が変わってますね。嫁に先立たれれば男なんて弱って逝ってしまうもんですよ」


 などと言っている。


 しかし、権兵衛さんの反応がオカシイ。


「そうなんだ。そうなんだよ。だが、私には私生活の記憶がない」


 と、不思議な事を言い出す。


「え?山本さんも!」


 南部さんもそうらしい。


「何言ってるんですかお二人とも」


 俺がそう笑いかけて乃木さんを見る。


「そうそう。そんなわけないでしょう」


 乃木さんも一緒に笑っている。


 しかし、権兵衛さんと南部さんはそのことが信じられないらしいが、何やら閃いた顔をしている。


「そうか!という事は、欧州で死にかけて戻って来た中島が結婚しているのも理解できる!!」


 南部さんがそんな事を言った。


 どうやら、権兵衛さんと南部さんの二人、もしかしたら伊藤さんと、俺たち3人は何か違いがあるらしい事が分かった。


 そんな違いが分かった頃、中島さんもやって来た。


 ただ、そこで全員揃ったので、その話は終わりとなってしまう。


 ささやかな宴会の後、南部さんが新たな猟銃だと言って2丁渡してくる。1丁はアナスタシアの分らしい。


「八九式歩兵銃に新型弾薬を適用した試作品です。まずは猟銃として売り出すことになりました」


 そう言うが、その銃のどこがどう、八九式と違うのか分からなかった。


「モノの違いは軍用には着剣装置が有るのに対し、装置を省略していることくらいですね。特徴としてそれ以上の違いは見分けられないでしょう。最大の違いは弾薬ですので」


 という。


「新型猟銃に採用した弾は、280ニューナンブ弾です」


 ニューナンブって、拳銃弾かな?などと思ったが違うらしい。


 何でも、東ロシアがフェドロフ小銃の後継を模索しているらしいが、モンゴルでの戦いでソ連軍の使う7.62mmロシアン弾より射程も威力も低い事に不満が出ているらしい。


「280というのはインチ表示で約7mmを指すのですが、7ミリ拳銃弾とは別の中間弾薬ですよ」


 と説明してくれたところによると、東ロシアでは生産基盤がぜい弱な時代にフェドロフ小銃、三十年式歩兵銃、四五式携帯機関銃と言った6.5mm弾の銃器を導入し、生産基盤も日本から導入したのでそのまま標準化されているのだという。


 日本軍の場合、上海での戦闘では市街戦が多かったこともあって不満はあまり出てはいない。


 そもそも、敵機関銃を攻撃するのは擲弾筒や迫撃砲の役割なので小銃弾の話にはならない。新たに射程が延びた擲弾筒が採用されたことですっかり満足してしまっている。


 ロシアでも機関銃を攻撃するのは基本的に迫撃砲なのだが、モンゴル人民軍が軽機関銃を運用しだしているので対処に困る場面が出ているという。


 しかし、東ロシアにおいても7.7mm弾や7.62ミリ弾を今更小銃に採用しようとは思っていないらしい。


 6.5mm弾と同等の射程で更に扱いやすく威力もあれば良いなと言った要求が出ているらしい。


「そこで、第二次大戦で登場した中間弾ですよ」


 と、南部さんが言う。


 中間弾の発祥はドイツで、そもそもボルトアクション銃主体の歩兵部隊の主武装は小銃ではなく、機関銃だそうで、機関銃による火力支援こそが重視される。


 ところが、軽機関銃と言えど重量は10kgに達するため、4~5kg程度の小銃と同じようには扱えない。


 戦車や自動車による機動戦となった場合、更に機関銃の運用が難しくなり、火力支援が薄くなるのだそうで、それを補うために機関短銃が使われるが、どうしても小銃よりも射程が短いので、市街戦ならともかく、野戦では使い辛い。


 そこで、歩兵戦闘距離である400m前後の射程を持ち、その射程内では小銃弾並みの威力を持つ弾という事で、発射威力を軽減した小銃弾、いわゆるクルツ(短縮)弾というのが開発された。


 拳銃弾よりははるかに威力があるが、小銃弾の様に機関銃でなければ連射が出来ないほどの反動は有しない。


「史実の7.62mmNATO弾はアメリカの無理解で、ただコンパクトにしただけの小銃弾を採用してしまいました。日本の64式小銃など、そもそもの考え方を間違って軽量機関銃を目指して失敗作の烙印を押されてますからね。あの弾は英国みたいにセミオートで使うものですよ」


 という。


 じゃあ、中間弾薬とは何かというと、ドイツが開発したクルツ(短縮)弾やソ連の7.62×39弾M43の事だという。


 そして、クルツ弾の性質を理解した英国が開発していた280ブリ粕弾なのだそうだ。


「クルツ弾もM43も、280ブリ粕も銃口威力はおおむね2000ジュールで似通ってるんですよ。対して、7.62NATOは6.5mm弾に近い2500ジュールあります」


 ヒトラー自身も威力を重視してクルツ弾を使う突撃銃は開発中止令を出したそうだが、現場では開発を継続してMP43として完成させたのだという。


「この280ブリ粕弾を参考に開発したのが280ニューナンブです。280ブリ粕弾が7×43、ニューナンブが7×45。装薬の違いや初速の違いもありますが、おおむね2000ジュール強に仕上げてあります」


 まず、猟銃用の弾として生産設備を立ち上げ、量産体制を敷いて、東ロシアのコンペに挑むらしい。


 日本軍への採用は今のところいつになるか分からないらしいが、自動小銃を未だに採用していない事もあって、まずは海上警備隊の特別乗り組隊あたりに短縮(CQB)モデルを提案するかもと言っている。 


  


  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ