22・そして、新たな文化が芽吹いている
中島さんがなんか暴走してるが、まあ、いつもの事らしい。
その中島さんだが、航空エンジンについては星形ではなく、V型でいきたいらしい。まあ、レースエンジニアだからだろうね。そして、自動車にも飛行機にも21世紀も存在する水平対向だとか、英国の戦闘機に搭載されていたH型というのも興味があるとか。
ちなみに、中島さんが走らせていたフォーミュラカーのエンジンも水平対向だと言ってカバーを外してくれたが、布張り?
「飛行機作っているので、その辺りは技術や素材というよりも、飛行機に慣れておく意味で採用しています」
と、意外な返答が。
そして、見せてもらったエンジンは良く分からん。何かラッパが4つ出ているのだけは分かったが。
「キャブレターも開発してます。飛行機用、自動車、産業用、そして、競技用」
そう言って、そのラッパを指さす。
まだまだ自動車も走っていない国でレースってもなぁ~と思ったのだが、「だから、今から教化するんですよ」と怪しい事を言う中島さん。教化って、宗教かナニカ?
「日本は一時的なブームとしてのスポーツカーブームはありましたが、素地としてのモータースポーツ文化が無いですから、自動車の普及以前から、カートやフォーミュラを浸透させると面白いかと思うんですよ」
と、怪しい事を言っている。何で怪しい人しか来ないんだろうね。
そんな中で唯一マトモと信じている乃木さんが軍人から政治家へと転身するらしい。
本来政治の世界へ行くのは中島さんだったはずだが、残念ながら、今の中の人は政治には興味がない。それに、あの知識を政治に時間を費やして無駄にするのももったいない。
そんな訳で、適任である乃木さんが政界進出を果たすことになった。
欧州派遣軍参謀としての名声を引っ提げての政界進出だけに、国民の人気もある。
そうそう、その点でも史実と違うらしいよ。
欧州派兵があって、それに付随する報道などにより、それまでとは違う軍への見方が生まれたらしい。
そんな訳で、この時代は史実だと軍人は肩身が狭かったという。
そらあ、不満をため込んで暴発もするわなと、なんとなく思った訳だ。
実際、その様な報じ方をしたのも、軍人の不満解消という面があるらしい。
「私や山本さんはその点を随分気にしていましたから。それと殿下、殿下や妃殿下も日本の意識改革に役立っていますよ?」
と言われた。
確かに、アナスタシアとの結婚によって、いわゆる「開かれた皇室」というものが作られている。
ロシア皇室では皇女が戦場に慰問に行ったり、看護兵として実際に看護に当たってリもしていたらしいので、アナスタシアは日本でもその様に振舞い、震災の際にも活動しており人気も高い。
それなのに、声をかけて来た女性活動家を徹底的に論破してしまったとか。国がああなったので社会主義的な考えを毛嫌いしてるんだろう。
上総宮家は全く伝統的な宮家ではない家で、少々浮いた存在と化しているが、兄や甥は理解があるし、どうやら東ロシア皇帝であるアレクセイ帝に内親王を嫁がせることも決まっている。
もう、完全に東ロシアと婚姻関係になる気満喫やで、今の日本。
そうなると、欧州王家とも血のつながりが出来て来るので、戦友としての縁、王族間の関係と、日本と欧州がものすごく近くなりそうだ。
もちろん、欧州の王侯貴族全てが賛同しているとは思えないが、東ロシアが日本との関係を重視するのは国家存続のために必須だし、英国も表立って反対はなく、歓迎している。
まあ、そんな状況で乃木さんは政治家となった。
すでに陸軍において彼の父を超える存在はなく、山本さんの寿命も史実通りなら10年を切るという事で、乃木さんの活躍に期待している様だ。
「殿下にも、そのうち復帰してもらいますのでよろしくお願いします」
と、乃木さんがあいさつにもやって来たっけな。
さて、中島さんだが、日本に自動車を普及させる準備として、軍の基地に教習コースを作るという。
欧州ではトラック輸送が戦場を支えた事は周知の事実であり、これからは鉄道だけでなく、自動車も軍の移動手段となる事が明白となった。
そうなると、自動車の運転が出来なければ兵士が務まらなくなる。
昨今ではフォードも日本と満州に工場を作ったし、二宮も参入する。他にも国内で自動車製造を始める人が出てきている。
では、誰がどこで運転を教えていくのか?
最適なのは各地に駐屯する軍隊だと言う中島さん。
本心は、軍隊なら人が多いのでカートをやる人が出て来てくれるという物らしいがね。
そして、上総宮リンクにも自動車教習場が作られ、村人の講習が始まっている。
ただ、上総村で最も走っているのは自動車ではなく、昭和30年代を舞台にした有名映画に出て来たテーラーで台車を引くあのタイプだ。
速度もそんなに出ず、何となれば簡単に操作が可能。
ただ、それでも事故は起きるし交通ルールは教える必要がある。
その為の教習車にカートを用意した中島さん。
「農機具に使う小型ガソリンエンジンを使うカートです。誰でも安全に乗れて、操縦感覚を覚えるのに最適ですよ」
と言って去って行った。
やはりというか、うちの嫁が飛びついた。
そのうち、全国の教習コースではグランプリなるカートレースが開催され始め、上総宮リンクでも開催された。
初年度チャンプは、分かるね?
そんな訳で、新聞の取材を受ける嫁。
その後、全国で女性が教習所の門をたたいてカート人気が盛り上がった。
中島さんの笑いが止まらないよ。
そして、更にはフォーミュラによるレースも始まり、嫁が参戦。日本一決定戦に集まった参加者の3割が女性であったのには驚いたよ。
何でも、自動車の運転を習えばトラクターやテーラーの運転も出来る様になるので、農作業もそれだけ効率が上がるから、盛んに講習を受けているらしい。
当然だが、昨今は全国で農業企業や法人による経営が始まり、農機具導入や農地整備も始まっている状態だ。
「軍人と共に農家は自動車に触れる機会が多い職業ですから、広まってもらわないと困ります」
などと供述する中島さん。
まだまだ自家用車は高級品だが、トラックを多量に扱う軍やトラクターや運搬車を利用し始めた農家が、上総宮杯を頂点とするカートやフォーミュラによるレースに部隊や企業から選手を送り込み、早くも活況を呈している。




