18・そして、時代は大きくうねり始める
俺たちが四姉妹を救出した頃のロシアでは革命政権とより過激な勢力との内紛が始まっていた。
そして、それが白だの赤だの緑だのと色分けされたカラー軍団として内戦が勃発する事になった。
もう何が何だか分からない。
そんなロシア情勢に隠れて二つの大事件が起きた。
一つはヤラセ臭い米国民間人が乗り組む貨客船の撃沈事件。
ヤラセ臭いとは言っても撃沈したのはドイツで間違いない事に、ドイツは軍事物資を運ぶ船は中立には当たらないだろ!と米国に猛抗議している。
しかし、米国はあくまで民間有志による人道支援であったと言ってドイツに反論した。
大西洋の深海に貨客船が沈んでいるので、調査は100年くらい先になるんじゃないだろうか?
そんな水掛け論が行われるが、すでにテーハン討伐で沸き立つ米国世論にはちょうど良いガソリンだった。
だから、ヤラセ臭いんだよ。
そんな訳で、米国はテーハンつながりでロシア救援の派兵をまず議会にかけ、賛成多数で可決された。
そのきっかけというのが、テーハン南部の希望の地という話に尾ひれに背びれに胸びれが付いて事実からほど遠い噂としてロシア内を西進していったらしい事だ。
テーハンが広大で肥沃でロシア人を受け入れ可能な楽園であると。まったくそんな広さはないんだけどね?
その話を聞いた混乱に巻き込まれた市民が東方流民となってテーハンを目指して移動を始めているらしい。
そして、ロシア極東もテーハンを切り捨てた革命政府への不信が強く、帝政の存続有無などという思想対立よりも革命政府に代わる東方政府樹立に動き出していた。
実態とかけ離れているとはいえ、テーハンの噂で東方への大移動が始まっている以上、革命政府が手のひら返しで何をやりだすか分からないと考えたらしい。
そうして、カラーを棄てて東軍と名乗りを上げた。
さらに、その動きを日米も支援し、ロシアの発注したフェドロフ小銃や四五式携帯機関銃などが保管されているウラジオストクの倉庫を開放し、彼らへと武器の供給が行われることになった。
日本は親切丁寧に武器の取り扱い法や有用な戦法まで教えて送り出す。
うわさを聞きつけて東方脱出を図ったのは民衆だけではない。
欧州へ逃れる術を断たれた資本家や貴族も押し寄せているという。
そんな彼らが総計で百トン規模の金塊を持っているという情報を英国が聞きつけ、米国に耳打ちした事から、金に目がくらんだ米国政治家がロシア派兵をせっついたのだ。
そんな訳で、米国議会は避難民保護になんと30万もの大兵力の派遣をポンと決め、遼東半島を目指しているらしい。
もう一つの事件はテーハンでの反乱事件やそこから続くロシアの混乱にかき消された感はあるが、大事件だ。
豪州がやりやがった。
太平洋の警備を担当する日本海軍の巡洋艦が豪州の港へ訪れた際、水先案内人がミスをして航路を間違ったと主張しているが、死人に口なしでは真相は分からない。
事もあろうに「航路を逸脱した日本の巡洋艦」に対し、豪軍が発砲。砲弾が艦橋を直撃し、水先案内人を含む艦橋要員を抹殺した。
即日宣戦布告でも問題ないほどの大事件だが、日本の支援を必要としている英国が間に入ったことで日本側は態度を軟化させる。
だからと言って豪州が謝罪したかというと、そんなことはなく、「あれは警告射撃だった。水先案内人に責任がある」などと全く非を認めようとしなかった。
全く埒が明かないのでキレた英国が豪州を脅し、日本へ西オーストラリアにある鉄鉱石や石炭の権益のいくつかを譲り渡すことで手打ちとなった。
これで日本は独自の鉄山を得て、製鉄業も盛んに出来るとみんなが喜んでいる、英国さまさまである。もちろん、鉱山利権を得たのだから、労働者としての移民もだよね?と、ねじ込んだのは当然だ。
そんな二大ニュースに続いて、英国から新たな衝撃の知らせが入った。
何でも、豪州とのもめごとでの借りを返せという。
その内容がまたとんでもなく、革命政府から打診のあったロシア皇帝を含む皇族や貴族の亡命の大半は英国は受け入れない。
ただし、第三国が受け入れるのであれば、英国の通過は認めるし、安全も保障するというものだった。
つまり、日本が亡命を受け入れろというのである。
さらに、噂のテーハンとやらにロシア帝国を再建できないかというのだから無茶振りも大概だ。
その話を聞いてあきれた俺。
喜々として東軍工作に走る伊藤さん。
そんなこんなで、日本が亡命を受け入れ、極東を領土とするロシア帝国継承国を作る事になった。
東軍も立憲君主制なら構わないという意見が多数派であり、どうやら守旧派の取り込みの為にも皇族や貴族が居た方が都合が良いとかナントカ。
そんな訳で、1917年後半から1918年は欧州戦線とは別に、2万5千人の日本軍をシベリアへ派兵しての国づくりが行われることになった。
もちろん、米国が飛びついて来ないはずもなく、口だけだった英国と違い、金も出す米国が付いてくれたことでそこからは順調に事が運んだ。
革命政府が入れ替わり、レーニンが率いるソビエト政府がドイツと単独講和を協議していた頃、東ロシア帝国が誕生した。
もう、色々無茶苦茶すぎる事態について行けなかったが。
その様な混乱の中で、第三皇女のマリアさんが英国貴族に嫁いでいった。亡命は受け入れないが、婚姻は構わんの?第二皇女のタチアナさんも欧州の王族との縁談が決まった。
そして、第一皇女のオリガさんには恋人が駆けつけたらしい。そこには色々なモノがドンとセットで、東ロシア帝国の屋台骨になるんだとかナントカ。
そして、第四皇女アナスタシアは俺のところに嫁いでくるとか。
伊藤さんが走り回って、皇族を説得し、華族も脅し空かしで納得させたらしい。
え~、マリアさんやオリガさんならともかく、じゃじゃ馬かよ。
乃木さんからも祝電が届く。JK嫁爆発よろっておい。




