ジジィ爆誕
そしてその日は突然だった――
「王女様が破水なされたぞ!!」
「大変だ! 早く分娩室へ!!!」
それは眩しい太陽が降り注ぐ真昼間のこと。
予定より少し早く破水した王女は、苦しみながら分娩室へ運ばれた。
「痛い痛い痛い痛い!!!」
「王女様大丈夫です! 冷静に! ゆっくり深呼吸を!」
(なんじゃなんじゃ! これはわし誕生!?)
グラグラと揺れる身体に驚きながら、信介はいよいよかのぉ! とテンションをぶち上げる。
「うう、痛い痛い! スイカ出るスイカぁぁぁっ!!!!」
「王女様深呼吸!!!」
「「「深呼吸!!!」」」
ベットの上に転がされ藻掻く王女の横で助産師は深呼吸! と連呼する。
「ちょ、これ、いた、すぎ!!」
冷や汗を浮かべ、その美しい長髪の黒髪を乱す王女は、もういやぁぁぁっ!! と頭を振る。
その度に深呼吸ー!! と声を張る助産師と共に、信介もまた、頑張れぇぇ!! とエールを送る。
「うーん。ちょっとこれキャパオーバーの可能性があるわね……よし、転移魔法の準備を!」
「はい!」
転移魔法――
それは文字通り物体を転移させる魔法なのだが、スムーズに出産が出来ない時などに使われる事があるのだ。
ちなみに、最初からそうすればいいじゃないと思うかもしれないが、赤ちゃんにいきなり魔力を使うというのは成長に悪影響を及ぼす可能性があるとされており、推奨されていない。今回は王女相手と言うこともあり、母体を優先する判断になったのだ。
「準備出来ました!」
「よし! 王女様! 今楽になりますからね!!」
「はやくぅぅ!!!」
白色のナース服に身を包んだ一人の助産師は、はぁぁぁぁ!! と魔力を集中させ、青色の魔法陣を展開する。
「行きますっ! テレポートッ!」
刹那――
一瞬でお腹を引っ込ませた王女と外に放り出された赤ちゃんの信介。
「うっ――」
「あいたたた、ずっと丸まってたから膝が痛いのぉ……」
そう言ってベットを軋ませる信介は、いてて、と慣れ親しんだ己の膝を摩る。
「え……」
「「「え」」」
「ん? どうしたんじゃ? って、声出とる!」
久しぶりの発声に感動した信介は、そうだ! あの子は! と助産師を横目に辺りを見渡す。
が、
「ふ、不審者だぁぁぁぁっ!!!」
その声の主は助産師達。
何故かパニックに陥る室内のど真ん中に座る信介は、ど、どうしたんじゃ! こんな時に! と助産師達に声をかける。
「話しかけんな気持ちわりぃな!」
「誰だテメェ! くそジジィが! 死ね! 近寄んな!」
「お前いい加減にしろよ! どっから湧いてきた! 王女様に何をした!」
「早く衛兵呼んできて!!!」
「ど、どうしたんじゃ本当に!?」
何故か罵声をあびせられる信介は、なんでじゃぁぁ!?と目を回す。
「不審者は何処だ!」
「コイツです! このくそジジィ!」
「なんだ貴様! どっから入ってきた!」
「いや、わしは何も――ってわし……」
悲鳴を聞きつけ飛んできた衛兵に問い詰められた信介は、気づいてしまった。
違和感に――
「なんでわし、この体なんじゃ……?」
そう。
信介はあの子のお腹の中に転生したのではなく、転移していたのだ――
国外追放まで残り一週間――




