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コラム 資料のお話

 歴史物を書く際に作者が突き当たる壁に資料がある。

 はっきり言おう。

 とても高いのだ。


 たとえば、八木直樹著『戦国大名大友氏の権力構造』(戎光祥出版社)という本がある。

 あ、面白そうだなと思って、ぐぐって検索してみる。

 お値段税込みで13200円。

 いや、わかる。わかるけどその価格はちょっとまってくれ。と叫びたくなるのもわかるだろう。

 この手の資料あるあるである。

 他にもこんなのがある。

 鹿毛敏夫・坪根伸也 (両編集)『戦国大名大友氏の館と権力』(吉川弘文館)9900円。

 既に在庫がなく、古本にはプレミアがついて約13000円である。

 歴史物を書く際の壁の一つが、この資料の高さだと私は思っている。


 まぁ、某ソシャゲだとこの価格、最上位レア出るといいねという価格なあたり物の価値が狂っているのでは思ったり思わなかったり。

 話がそれた。


 そういう意味でも、テンプレートは優秀なのだ。

 歴史転生モノのテンプレートはなろう内でおおよそ形ができている。

 あとはお財布にあった形で資料をそろえるだけで、最低限の物語は作れる……とここまで書いて、私はその歴史転生もののテンプレート初期構築者の一人だった事を思い出す。

 私達が書いた物語が舞台を変え役者を変えてここまで大きくなったと思うと、嬉しくもあり、懐かしくもあり……また話がそれた。


 今、書籍化されて3/25二巻発売の『現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変』は何がいいかというと資料がとにかく豊富で安いのだ。

 古書店に転がっているし、ネットに落ちているし、論文が大量にネットに上げられているのがすばらしい。

 その分資料に溺れるとかリアルパイセンにぶん殴られるというデメリットもあるが、とにかく資料のアクセスのしやすさは戦国時代とは比べ物にならない。

 ある程度話が進むことでテンプレート化されて、後進が出てこないかなと楽しみにしているのだが、どうだろうか?


 話がそれっぱなしだが、戦国時代ものを書く際にどのレベルの資料を当たればいいかというのをなんとなく提示しておこう。

 まず『信長の野望』の武将ファイル。

 これはなろう戦国転生ものを書く際には必須と言っていい。

 逆に言えば、これ一冊で最低限のなろう戦国転生モノは書ける。

 それを面白くする際に必要なのが上にあげた高い資料たちなのである。

 だからこそ、なろうにおいて戦国転生ものを書くのならば、完結させてあとから資料を読む事をお勧めする。

 そうでないと、資料の持つ意味に気づかない。

 具体的に言うと、『大友の姫巫女』を書いている際には三好家が何で畿内を抑えていたのかを理解できなかった。

 その後で書いた『修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない』であれだけ三好家が出てきたのはそれだけ資料を読み込んだ裏返しでもある。

 次に『歴史群像』。

 これは古書店に転がっているから買いやすかったのと、雑誌の方をとにかく集めまくった。

 雑誌は戦国時代だけでなく歴史ものとして第二次世界大戦や武器・兵器の考察などそのときには使わないけど後で使うかもしれない知識が身につくからオススメである。

 で、軽視しがちだが大事なのが地図。

 特に今の日本地図は海岸が埋め立てられているので注意。

 距離感は特に大事で、合戦描写に直結する。

 私が九州の大友家周りを書いていた際には、できるだけ現地に行って距離感と地形を頭に叩き込んでいた。

 軍の移動というのは合戦の肝だから、ここを意識すれば合戦描写は格段に上がる。

 これを読んで戦国転生モノを書く作者が資料を手に取るのならば嬉しい限りである。



補足

 山に登る際には筋肉痛に気をつけよう。

 扇森稲荷神社と高塚不動尊の階段で足が……足が……

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― 新着の感想 ―
[良い点] そうなんですよね〜、歴史物の短編を書いてみて長編化させようとプロット作りをスタートした時、頭が壊れるくらいの情報の量と玉石混交、通説と現在の研究での差異(例、織田信長は革新的な魔王では無か…
[良い点]  いつも勉強させて戴いております。  誠に有難きテキストにて。 [一言]  >私はその歴史転生もののテンプレート初期構築者の一人だった  仰る通りかと。  私も二日市とふろう (旧名:北…
[一言] ヤンマガで連載され続けている「センゴク」の作者も古戦場を歩いているようですし、地形の把握というのは大事なのでしょうね。
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