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第09話 あれから、10年

 俺が爺ちゃんのもとにやってきて10年が過ぎた。

 その間の俺はというと、まず、最初に爺ちゃんとばあちゃんを伴い王都に赴き大叔父に当たる国王陛下に謁見した。

 どうしてそうなったのかというと、俺の母が平民だが爺ちゃんの跡継ぎでもある。それを国王陛下に認めてもらうためである。

 まぁ、爺ちゃんとばあちゃんによるとそれらは問題ないという、何せ爺ちゃんと国王陛下は士官学園時代の親友であり、ばあちゃんは国王陛下の妹、その2人の頼みを断るような陛下ではないということだった。

 それで、実際に謁見した際、陛下は俺を見てすぐに自身の甥であるスタンリーの息子であることを見抜いてきた。そして、俺にテイル・リップ・ドゥ・カペリオンの名前を与えてくれた。

 ついでに、母さんもミント・リップ・ドゥ・カペリオンの名をもらっている。

 とまぁ、そんなわけで俺は晴れた侯爵の孫としての生活が始まった。


 それからというものの、俺はひたすらに勉強だ。勉強の内容は当然、算術学、歴史、魔法学などから始まり、貴族の礼儀作法などを学んだ。

 算術については前世の記憶のある俺としては全く問題ないし、歴史はまるでファンタジー小説を読んでいるみたいで面白くすぐに覚えることができた。魔法学は言うまでもなく面白いし、母さんという英雄の末裔であり、実は元特Sランク冒険者のおかげで普通の人が知らないようなものまで知ることができている。そうそう、母さんと言えば、魔法のほかにも戦闘技術、主に剣だけど、それを学んでいる。

 そして、最後の礼儀作法だけど、これが少し苦手だ。何せ、前世で普通の人生を歩んできて、こんな堅苦しいことなんて好き好んでやりたくないからだ。


 とまぁ、そんな感じで10年、俺も15歳となり、前世の日本でいうところの中学3年生となった。この世界というかこの国ではこの年になると士官学園という学校に通うことになる。それで、その士官学園に入学するには当然試験があり、憂鬱になりながらもその試験を受けたところ、なんと首席合格をとってしまった。

 これには驚いた。確かに、この10年学んできたものは礼儀作法以外は得意だったし、面白かった。何より、自慢ではないが、前世の俺はそれなりの高校を出ているし、大学もそこそこのところだった。まぁ、それが原因で前世の会社で散々な目を見たんだけど、そんなわけで首席となったらしい。

 そのあと、ちょっとしたトラブルもあったが、爺ちゃんが奮闘してくれて解決。

 さて、いよいよ入学式を待つばかりだと、準備をしようとしたところで、突如爺ちゃんが倒れた。

「爺ちゃん」

「あなた」

「お義父様」

 俺に続いてばあちゃんと母さんが爺ちゃんを必死に呼んでいる。

「「お父様」」

 それに続いて、俺の伯母に当たる人たちもまた爺ちゃんを呼んでいる。

 どうして、そんなにみんなで必死になって爺ちゃんを呼んでいるのかというと、今、まさに、目の前で爺ちゃんが死にかけているからだ。

 これは本当に急だった。つい先日までじいちゃん元気だった。いつものように執務をこなし、俺の勉強を見てもらい、様々な話をしてくれた。

 そんな爺ちゃんが突如倒れた。すぐに教会から治療師たちを呼んで治療させたり、俺も前世の知識をフル活用させたが、無理だった。

「……テレーゼ……」

 そんな爺ちゃんがばあちゃんを呼んだ。

「あなた」

 ばあちゃんはすぐに爺ちゃんの呼び声に応えた。

「……長いこと、よく、ワシに尽くしてくれた。礼を言う」

「何を、今更、当たり前じゃないですか」

「世話になった」

「あなた、それは私の方こそです」

 ばあちゃんは涙を流しながらそう答えた。

「……ミント……」

 今度は母さんを呼んだ。

「なんですか、お義父様」

 母さんも涙をこらえながら尋ねた。

 ちなみに母さんはいつのころからか、爺ちゃんのことをお義父様と呼ぶようになった。

「……テイルを頼んだぞ」

 母さんには俺のことを頼んでいる。

「ええ、任せてください」

 母さんもそれに答えた。

「ミリア、タリア」

 今度は伯母さん2人だ。実はこの伯母さん、双子だそうだ。

「「はい」」

 2人は双子らしく同時応えた。

「2人とも、良く来てくれたな。もう一度、最後にお前たちの顔を見れて、ワシは、幸せじゃよ。婿殿と仲良くな」

「「お父様」」

 2人消え入りそうな声で、それでもはっきりと爺ちゃんを呼んだ。

「……テイル」

 最後に俺だった。

「なに、爺ちゃん」

 俺は努めて明るく返事をした。なんだか爺ちゃんにはそれがいいと思ったからだ。

「……すまんなぁ、お前にはもっと教えたいことがあったんじゃが……」

 それについては俺も同じだ、まだまだ爺ちゃんから学びたいことは山ほどある。

「いいんだよ、爺ちゃん、俺、爺ちゃんから一杯教わったよ」

「そうか、そうか、テイル、みんなとこの領地を頼むぞ」

 最後に爺ちゃんは力強くそう言った。

「任せてくれ」

 だからこそ俺もまた力強く答えた。

「うむ、頼もしくなったのぉ」

 それが爺ちゃんの最期の言葉だった。

「爺ちゃん」

 シルベスタ・エッペルファング・ドゥ・カペリオン侯爵、1人の偉大なる男がこの世を去った。

 どうか、爺ちゃんの来世もまたいいものでありますように。

 転生をした俺としてはそう願わずにはいられなかった。


 それからは、大変だった。

 爺ちゃんの葬式を跡継ぎである俺が取り計らい、多くの参列者の相手をしなければならなく、爺ちゃんが死んだということを悲しむ暇すらなかった。

 また、それにともない急遽俺が侯爵の地位を継ぐことになった。

 というわけで、俺は今王都の王城にやってきていた。

「汝、テイル・リップ・ドゥ・カペリオンに侯爵を授ける」

 陛下がそういった。

「謹んでお受けいたします」

 俺もう膝まづいてそう言った。そのあと陛下が隣にいる宰相から剣を受け取り俺の右肩にその腹を置く、これで襲爵の儀式は終了。

 こうして、俺は15歳という若さで侯爵となったのだった。

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