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第06話 カペリオン侯爵

 シルベスタ・エッペルファング・ドゥ・カペリオン侯爵、それが俺の爺さんなわけだけど、その爺さんは俺の名の由来を聞いて、いい名前だとほめてくれた。

 そして、そんな爺さんだからこそ、母さんも自分がテイルミットの子孫であることを話した。

 さすがの爺さんもこれには驚いていた。

「そうであったか、なるほど、道理で」

 それから、爺さんは少し考えてからある提案をしてきた。

「うむ、なら、1つ提案なんだが、ミントといったな、そなた、ワシの娘にならんか」

「えっ」

 一体、この爺さん何を言い出すんだ。

「そなたがワシの娘となり、我が孫、テイルをこれからも育ててもらいたいのじゃ」

 爺さんの次の言葉で納得した。俺としては、ありがたい提案だ。問題は母さんがなんて答えるかだろう。

「で、でも、私は、平民です」

「そうじゃな。じゃからこそじゃ、ワシも年じゃし、テイルをどこまで育て上げられるかはわからぬ。じゃが、そなたがいてくれれば百人力じゃろう」

「か、考えてみます」

「うむ、そうしてくれ。それと、村長、どうせじゃ、この村ごと、ワシの領地に来ぬか、ちょうど、ワシの城、後方にここと似たような草原が広がっておるからの。それに、テイルも友人と離れるのはいやじゃろうしな」

 そんなことを言い出した。本当に何を考えているんだろうか。まぁ、ありがたいから何も言わなけどな。

 そうして、爺さんはいったん村長宅にある貴賓室に入っていった。

 この貴賓室というのは、実はどの村にも存在しているそうだ。その理由はこういう場合、つまり貴族などそれなりの客人が来たときに泊まってもらうためだ。といっても、ほとんどの村でこれが使われることはない。しかし、だからといってこれを作らないわけにはいかないというものらしい。

 とまぁ、それはいいとして、爺さんが去った後俺たちはというとどうするかの会議となった。

 俺は、爺さんの孫だし、爺さんのもとに行くことは決定だろう、後は母さんがどうするか、村としてどうするかという問題だ。

 だから、俺としては、もう家に戻ってもよかったんだが、気になったので参加することにした。

「さて、まずは、テイルよ」

「なに」

 村長が、俺に何かを尋ねてきた。

「お前が、あのころの記憶を持っていた、ということにも驚いたが、何より、侯爵閣下の孫とは、いやはや、驚きを通り越す事態だ」

 それに関しては、俺も同意見だ、まさか、俺も転生した先が侯爵の孫とはな。

「うん、僕も驚いた」

「だろうな、して、お前としてはどうしたい、まぁ、孫である以上閣下のもとに行くことは避けられんだろう」

 そういって、村長は少し申し訳なさそうにした。

 そんな顔をしなくてもいいと思う、村長だって俺と同様今知ったんだからな。

「うん、わかってる。でも、僕、あの、おじいちゃん、好きだと思う」

 これも本音だ。あの爺さん、貴族という割にかなりいいひとそうだし、何より俺が持つ貴族のイメージとかけ離れている。

 それは、当然母さんから聞かされていた、タラベロ侯爵と比べてもけた違いだろう。

「そうね。私も侯爵というのにはあまりいいイメージはないけど、カペリオン侯爵は別よ」

「何か知っておるのか」

 母さんの言葉に村長たちは食いついた。

「ええ、噂だけどね」

 そういってから母さんが言ったことは間違いなく噂ではないだろう。元冒険者である母さんならではの情報網で知っていることだと思う。

 その内容は、あの爺さん、領民からの評判はこの国でもダントツにいいらしい。なにせ、税金が安い、他の領主はなんだかんだである程度はとるのに対して、爺さんは必要最低限しかとらないらしい。それに、領民からの陳情もある程度は聞き入れてくれるという、何よりも領民のことを第一に考えてくれるそうだ。

 よく考えれば当たり前のことだが、この当たり前ができない領主が結構多い。

 実際、この村が属する領主も高額の税金を課している。

「……だから、私としては、ここにいるより、侯爵閣下の話に乗ったほうがいいわよ。まぁ、私が、娘になるというのは別にしてもね」

 母さんとしてはいまだ悩んでいるようだ。それはそうだろう、俺の親ならまだしも侯爵の娘というのが引っかかる。

「そうか、それほどか、それなら安心だな。テイルよそういうことなら安心してもよさそうだ。孫として快く迎えてくれるだろう」

「うん、僕もそう思う。みんなも来るでしょ」

 俺はそういってみた。

「うむ、そうだな。確かに、ミントの言う通りだとしたら、ここよりずっといいだろう」

 村長がそういったが、それでも、ちょっと待てという人もいて、その後話は白熱していった。

「テイルは、お家に戻ってなさい」

 母さんにふとそう言われて、後は大人たちに任せ俺は家に戻っていることにした。

 さて、話し合いはどうなったのか。

 そう思って待っているが、なかなか母さんが帰ってこない、そうして、しばらくして、疲れた表情の母さんが帰ってきた。

「ただいま」

「おかえり、どうなったの」

「まだ、一旦休憩にしようって、みんな帰ったわ」

 どうやら、決めかねているらしい、その理由としては、やはりさすがに爺さんを信じられないという意見、しかし、これは意外にも少ないようだ。また、生まれ育った故郷であり先祖代々住んできた土地を離れることがためらう原因らしい。

 まぁ、気持ちはわかる、俺だってまだ5年しか住んでいないけど、この土地を離れるのはちょっと寂しい、もっと長く住んでいる大人たちはもっとだろう。

「ねぇ、テイル」

 俺がそんな風に考えていると不意に母さんが話しかけてきた。

「なに、お母さん」

「テイルは、お母さんや、みんなと一緒がいい?」

 どうやら、母さんもまた悩んでいるようだ。その理由は故郷を離れたくないとかではなく、たぶん侯爵、俺の爺さんの娘となるということだろう、テイルミットの末裔として、侯爵という爵位には少なくとも忌避を感じているのかもしれない。

「お母さん、一緒じゃないの」

 精神が5歳に引っ張られている俺は素直に本音を言える。俺としても母さんや村のみんなと一緒がいいからな。

「テイル、そうね。そうよね。わたし、テイルのお母さんだもんね」

 どうやら母さんの中で決心がまとまったようだ。

 それから、すっきりした顔で俺を抱きしめてから、母さんは再び村長宅へと向かって行った。

 そうして、数時間後、村長から村人たちに発表が行われた。

「みんな、集まったな。これより、村の決定を教えるぞ、我らは、カペリオン侯爵様の誘いに乗り、村ごとカペリオン侯爵様の領地へ引っ越すことにする」

 その言葉を聞いて村人たちは、えっ、まじで、って顔になったが、そのあと村長の説明を聞いたことで、村人たちからの反対意見は出なくなった。

 こうして、俺たちリップ村は村をあげての引っ越しをすることになった。

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