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第18話 マジックドレイン

 突然魔人となって現れたカルロ、俺としてはカルロを殺したくはない、そこで、ある方法を試すことになり、その間の時間稼ぎとしてウレサとダレスにカルロの相手を頼んだ。

 2人は、幼いころからともに母さんから戦闘訓練を受けてきたことで、相当に強い、といっても実は、俺と比べるとどうしても俺の方が強いということで、俺たち3人の訓練はもっぱらウレサとダレス対俺という構図が多かった。そのため、あの2人の連携は筋金入りだ。そんな2人の戦いに、この場にいたエレンやスズ、カテリーナ先輩をはじめとして生徒会役員たち、教師陣、他の生徒たちも驚愕している。

 特に、生徒会役員たちにとってはウレサがブースターを使った戦いを見るのは初めてらしくその驚きはひとしおのようだ。

 とまぁ、そんなとき、カルロが突如俺の名を呼んだ。

 魔人は通常膨大な魔素を受けてなるために意識もなく暴れるだけというのが常識、だからカルロが俺の名を呼んだことは驚愕すべきことなんだが、というか、なんで俺の名を呼ぶんだ。そこまでカルロに恨まれる覚えはないんだけどな。

 実際、俺とカルロが会ったのは、あの入学式の日のみ、それもあんな短時間、それだけで、魔人化するほどの恨みを買うとは思えない。

 と、そんなことを考えているうちに、カルロが、2人に対して魔法を放った。

「げっ、まじか」

「ファイヤーボール!」

 カルロが無詠唱で放った魔法はファイヤーボールという魔法だ。これは、先ほどウレサが放ったファイヤーアローの上位版となるもので、ファイヤーアローが炎の矢を放ち対象を焼き払うのに対して、ファイヤーボールは、文字通り炎の球、しかし、この魔法当たると爆発するという危険な魔法だ。

 ドガァァン

「きゃぁぁぁ」

 爆発音に女性陣が悲鳴を上げた。

「あっぶね。まさか、魔法を、ぶっ放してくるなんてな」

「思ったより、やばいわね。テイル、まだ?」

 たまらず、ウレサが俺に進捗状況を聞いてきた。

「もう少しだ」

 実際、あと少しで、俺の魔力が練りあがる。

「早くしてくれよな」

「おう、待ってろ」

 そんな会話をしている間も、3人の戦いはヒートアップしている。

「テ、テイル様、あの2人は、大丈夫なのでしょうか?」

 ここで、2人のことが心配になったのかエレンが俺に尋ねてきた。

「ああ、大丈夫だ。あいつらにはまだ余裕はあるし、もう俺も動ける」

 そう、ようやく魔力が経った今練り終えた。

「ウレサ、ダレス」

 ということでさっそく俺は2人の名を呼んだ。

「おう」

「ええ」

 俺が名を呼んだ瞬間2人はすぐさまカルロから距離をとった。

 それと同時、俺もまた無詠唱でブーストを発動、すぐさまカルロの前に躍り出た。

「よう、カルロ、ちょっと見ないうちにずいぶんと印象が変わったじゃないか、だが」

 俺はそういいつつ、カルロの手をつかみ、そのまま自身の方に引き込み、身を低くしてカルロの懐に滑り込んだ。そうして、右足をあげてカルロの股の間に入れ、そのまま投げ放った。

「ガハァ」

 地面との激突の衝撃でカルロはたまらず息を吐いた。

「終わりだ。マジックドレイン」

 俺はそのままの体制で、右手をカルロの心臓あたりに手を置いて、先ほどから練り込んでいた魔力を使って母さんから受け継いだ魔法、マジックドレインを放った。

 マジックドレイン、これは前世にもゲームとかでよく見かけた通り、相手の魔力を奪う魔法だ。

 ただし、ゲームとかと違い現実の場合、こちらの消費魔力は膨大となる。それはそうだろう、相手の魔力を強制的に奪うんだからな。しかも、相手は魔人、魔力量は人間と比べても圧倒的に多い。そんなやつから魔力を奪うのにこちらの消費魔力が少なくていいなんて都合のいい話があるわけがない。

 そして、この魔法を行使するのが非常に難しい、何せ、俺の保有魔力量と魔人の保有量では違う、下手に取り込みすぎると、俺の保有量を越えてしまう、そうなれば猛毒の魔素が俺の体を襲う。それを防ぐためにある程度したところで体外に魔力を放出しなければならない。

 おっと、そんな間にそろそろだな。

 というわけで、俺は空いた左手を地面において、経った今カルロから奪った魔力を放出する。

「ガァァァァァ」

 魔力を奪われていることで、カルロは苦しそうに叫んでいる。しかし、俺がマジックドレインと同時に、バインドという、魔力の縄で拘束していることで動けない。

 クソッ、多いな。

 マジックドレインで奪い取る量が本当に多い、おそらく俺が持つ魔力の倍近くはすでに奪っているような気がする。

 それでも、俺は集中してカルロから魔力を奪い続ける。

 そうして、だんだんとカルロがおとなしくなってきた。

「よし、もう少しだ」

 俺はそんな気合を入れなおして、魔法をつづけた。

「グワァァァ」

 カルロが最後の雄叫びをあげた。まさにその時、カルロからすべての魔力を奪うことに成功した。

「よし、終わったか」

 俺はほっとしてカルロから手を離した。

「テイル」

「無事成功したようね」

「ああ、といっても、母さんから、聞いていた通りになりそうだけどな」

 俺はすっかり意識を失っているカルロを見ながらそういった。

 念のために、カルロを観察して、魔人化が解けていることを確認してバインドを解いた。

「テ、テイル様。どうなったのですか、その、カルロさんは?」

 とここにエレンが話しかけてきた。

「終わったよ。カルロは、無事人間に戻った。といっても、もう意識が戻ることはないだろうから、無事とはあまり言えないけどな」

 そう、この魔法が未完成である理由はこれだ、魔力をすべて奪わないと魔人化は解けない。でも、そうすると、意識が戻らなくなる。つまり植物状態となってしまう、過去にも同じように魔人化を解いた時、そいつは生涯意識が戻らなかったらしい。

 さて、死んだ方がよかったのか、こちらの方がよかったのか、それは俺にもわからない。

 まぁ、でも、とりあえずカルロは、魔人として生涯を終えることはなくなったわけだけどな。

 その後、駆け付けた教師陣から小言をもらいつつ、感謝され、生徒たちからは絶賛の嵐を受ける羽目となった。

 特に、ウレサは友人であるカテリーナに真の実力を隠していたことに平謝りを繰り返している。

 とまぁ、そんな感じにちょっと締まらないが、カルロ魔人化事件は終わった。

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