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第17話 魔人カルロ

 親睦旅行の帰り道、急に馬車が止まったと思ったら、前方に魔人が出現したという。

 魔人というのは、そうそう滅多に出現するものではないし、非常に危険な存在だ。というわけで、俺はその前方たる現場に向かったわけだが、そこにはウレサがすでにおり魔人を見て驚愕していた。

 それはそうだろう、俺だって驚いた。

 何せ、その魔人はフェブロス侯爵の長男で、元跡継ぎであるあのカルロであったからだ。

 なぜ、ここにカルロがとか、なぜ、カルロが魔人に、とかほかにもいろいろ疑問は尽きないが、今はこの場を収めることが先決だ。

 魔人を止めるための方法は通常殺害しかない。しかし、俺としては一度言葉を交わした男だし、フェブロス侯爵という、俺の父スタンリーの友人の息子、そんなやつを魔人になったからといって殺したいとは思えない。そこで、俺が母さんから受け継いだある方法を試すことにした。

 これをすることでカルロを殺すことなく止めることができるだろう。

 ということにしたわけだが、この方法を行うには、魔力をめい一杯練り込まなければならない。魔人となったカルロがそんな俺を待っていてくれるとは思えない。そんなわけで、ウレサとダレスに時間稼ぎを頼んだ。

「ウレサ、ダレス、頼む」

「おう、任せろ」

「任せて」

 さすが幼馴染であり姉弟みたいに育った2人は、俺がやろうとしていることが分かったようだ。

「!?」

 そばに来ていたエレンとスズ、カテリーナ先輩をはじめとした生徒会のメンバーたち、他にもやじ馬に来ていた生徒たちや教師陣は俺が2人に何を頼んだのかわかっていなかった。

「おい、お前たち何をするつもりだ」

 そんなウレサとダレスに待ったをかけたのは俺の担任であるヘーゲル先生だ。先生は、教師陣の中でも最も戦闘能力を持った人だ。その先生でも魔人の相手は死を覚悟するしかない相手となるだろう、そんな中俺たちがその魔人と戦う姿勢を見せれば慌てるだろう。

「問題、ありません。あの2人は強いですから」

 俺はヘーゲル先生にそういってから魔力を練り上げるために深呼吸をした。

「問題ないって、それはどういう……」

 困惑する先生をよそにウレサとダレスがそれぞれ収納魔法内から得物を取り出した。

 ウレサが取り出したのはレイピア、ウレサは元々そこまで力がないために母さんからレイピアがいいだろうということで教わっていた。そして、ダレスはというと、手甲を両手にはめている。

「行くわよ。ダレス」

「おう」

「ちょっ……」

 そういって、2人は止めようとするヘーゲル先生を置き去りにカルロを見据えている。

「「ブースト」」

 ウレサとダレスが同時にそういった瞬間2人が爆発的な勢いでカルロに迫っていった。

「なっ、ブーストだと」

 ヘーゲル先生が驚愕するのも無理はない、2人が使ったブーストという魔法は、簡単に言えば身体強化、効果は自身の身体能力を使用魔力分だけ上げることができるという、近接戦闘術の1つとなるが、これがかなり難しい、というかこの世界の人間はほとんどが使えないものと思っていいだろう。その理由は、単純にこの世界には治療師がいるために医学知識がない。だから、どこをどのように強化すればいいのかわからないからだ。

 その点ウレサとダレスは、母さんからと、俺からみっちり教わったおかげで普通に使えるというわけだ。

 というわけで、ウレサとダレスとカルロの戦いが始まった。

 俺も、魔力を練りながらその戦いを見ている。


 目にも止まらないような速さで飛び出したウレサとダレス、まず足の速いダレスがカルロに接近、鋭い突きを放った。

 カルロはそれをあっさりとよけた。

 カルロとて、仮にも侯爵家の嫡男であった。そのため幼いころから戦闘訓練は受けているのだろう、それが魔人化しても反映されており、なかなか一筋縄ではいかないらしい。

 だが、それは2人も同じ、ダレスはよけられた瞬間すぐに身を引きその場を離脱、そこにすかさずウレサがやってきて一閃。

「やぁ」

 気合とともに放ったそれもカルロは難なくよけた。

「おりゃぁ」

 カルロがよけた先に回っていたダレスが回し蹴りを放った。

 さすがにそれは受けきれなかったらしく、カルロは両手を交差する形で受け止めた。

 しかし、ダレスは俺たちの中でも最も力が強い、そんなダレスの攻撃を受けたカルロはたまらず牽き飛んだ。

「ファイヤーアロー」

 そこにすかさずウレサが右手をかざしてファイヤーアローを放った。

「グゥア」

 そんなうめき声が聞こえたが、カルロは少しのダメージしか受けていないらしく、すぐにウレサをにらみつけた。

「チッ」

 ダレスがそんなカルロに舌打ちをしながら再び突っ込んでいった。

 もちろんその瞬間ウレサも同時に突っ込んだ。

 そして、ダレスが飛び蹴りを入れ、ウレサが足元もを切りつけた。

「グワ」

 これにはたまらずカルロも受けたようだ。

 それを見たダレスが、体を回してその勢いのまま裏拳を放った。

 それからは、左、右と次々に連打。

 いくらか連打を続けたのちダレスが引いた。

 その時、ウレサが再びファイヤーアローを放った。

「ファイヤーアロー」

「グワァァ」


「……すごい」

 そんな光景を見て、俺の隣に板エレンがそうつぶやいた。

 ちなみに、他の者たちは唖然とした表情をしている。

 まさにその時だった。カルロの様子がちょっとおかしい。

「……テ、テイ、ル……」

 なんとカルロが俺の名を呼んだ。

「こいつ、意識が……」

「まさか」

 それにはウレサとダレスも、俺たちも驚いた。

 かつて、魔人化した者たちは、自己を失い暴れていたと聞いた。しかし、今カルロはしゃべった。しかも、なぜか俺の名を、どういうことだ。

「おい、カルロ、お前、意識があるのか」

 ダレスが、思わず手を止めて尋ねた。

「がぁぁぁ」

 そんなダレスにこたえるかのようにカルロがダレスに手のひらから魔力弾を放った。

「うぉう」

 ダレスは何とかそれをよけていた。

「ダレス、今は、とにかくカルロを抑えるわよ」

「お、おう、わかった」

 その光景を横目にウレサがダレスにそういった。

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