表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/60

第27話 「呆気ない決着」

 ソフィアはそいつが大剣を振り上げるのを、じっと見つめていた。ゆっくりと振り上げられた大剣は、これまたゆっくりと振り下ろされ、自分に迫ってくる。

 これを受ければ、確実に致命傷となる一撃。しかしソフィアは慌ててはいなかった。それは彼女が不死であるという他に、全て見えているというのが理由だった。相手の視線、筋肉の動き、呼吸の仕方、全てが緩慢に見えていた。

 ソフィアは導かれるように右手を動かすと、その振り下ろされた大剣をはじき返す。大きく開く相手の体。ソフィアはそこに右手の刀で切りかかる。同時に三つ。相手の体に傷口を増やす。

 右手側面に形成された刀が喜ぶのがわかった。

 大きくうねり、そして膨らむ。

 これが『恩讐おんしゅう手刀てがたな』の能力だった。

 ソフィアの固有呪術『恩讐の手刀』は、血を吸えば吸うほど巨大化し、威力を増していく。まさに魔剣と呼ぶにふさわしい力を有する。


 それを知らないハイゴブリンは、またしても大きくなった闇に恐れおののき、でたらめに攻撃を繰り出す。

 完全にソフィアのペースだった。

 ハイゴブリンは攻撃を繰り出し、それに対してソフィアは守りつつ反撃する。

 これの繰り返し。

 そのたびに、ソフィアの刀は大きくなっていった。

 そして、刀がソフィアの身長と変わらないほど大きくなった時、彼女は動いた。

 右足を一歩引き、体を大きく開いて刀を構える。

 何かを感じたのだろう。ハイゴブリンはそのタイミングで一気に飛びのき、ソフィアとの距離を十数メトル離した。

 しかしソフィアは距離を縮めるようなことはせず、そのまま言葉を紡ぐ。


「『呪術・恩讐おんしゅう手刀てがたな・一の型』」


 ――これはやばい


 ハイゴブリンがそう感じたときには、もう遅かった。


「『断罪断頭だんざいだんとう!』


 その言葉と同時に振りぬかれた手刀は、ヒュッという風切り音を響かせくうを切る。

 するとハイゴブリンの首筋に一直線の光が入り、次の瞬間、そいつの首は跳ねとんだ。

 呆気ない決着。

 圧倒的な実力の前に、王の頂を目指していたハイゴブリンは、虚しくも敗北した。

 ソフィアはそいつの体が大きな音を立てて倒れるの確認した後、恩讐の手刀を解除する。

 そして。


「はぁはぁはぁ……」


 片膝を地面についた。

 孤独な武王の寂然たる正拳に恩讐の手刀の長時間使用。流石のソフィアでも体力の限界だった。

 本当なら今すぐにでもハルのところに駆けつけたかったが、体が動かなかった。


「少しだけ……休もう…………」


 そしてソフィアは目を瞑るのだった。







 時は少しさかのぼり、鉱山の洞窟内。

 ハルとセレナは狭い道を猛スピードで疾走していた。

 額には大粒の汗が滲み、心臓は悲鳴を上げている。それでも、二人には止まれない理由があった。

 大量のゴブリン。

 それが後ろから押し寄せてきていた。


「ちょっとこれどういうことよ!?」


「僕に聞かないでください!!」


 二人は後ろも見ないで、真っすぐに走り続ける。それでも自分たちを追ってきていることだけは分かった。後ろから聞こえるドドドドドという足音。セレナの上級魔法が使えない今、こんな狭い道で出くわせばその物量に押しつぶされてしまう。

 ゆえに二人は逃走を選択していた。


「セレナさん助けてください!」


「無茶言わないでよ!!」


「何か策はないんですか!?」


「あるにあるけど、愚策なのよ!!」


 ダッシュしながら大声でそう叫ぶセレナに、ハルは「そんなこと言ってられないですよ!!」と叫ぶ。

 二人が走り続けて、すでに十分は経っている。体力の限界だった。このままではゴブリンの大群に押しつぶされる。そう覚悟した時だった。

 視界が一気に開け、少し広い広場に出た。

 このタイミングでセレナは立ち止まり、振り返る。


「セレナさん?」


「本当に愚策だけどいいの?」


 確認の一言。それにハルは、

「この際、仕方ありません。お願いします」

 そう言った。


「どうなっても知らないからね」


 セレナはそう言うと、右手に魔素を集中させる。


 そして。

「『赤妖の舞ファイア・ボム』」

 魔法陣から出現した炎の玉が、合計六つ。


 それらが左手の周りに出現する。


「何をするんですか!?」


「こうするのよ。踊りなさい『赤妖の舞ファイア・ボム!!』」


 左手から放たれた合計六つの炎の玉は、それぞれがクルクルと回転しながら細い通路、今まさに通ってきたそこの天井に直撃し、爆発する。

 すると天井はその直撃に耐えられず、轟音と共に崩れ落ちた。

 ふさがる通路。ほのかに香る炎の香りと共に、洞窟内は静けさを取り戻した。


「帰る道がなくなっちゃいましたね」


「仕方ないでしょ! そうしなかったら、あのままゴブリンの餌食よ」


「それはそうですけど……」


 この後どうしようかと、困り果てる二人に、後ろから声がかけられた。


「誰かいるの?」


 その声に、後ろを振り返る二人。

 そこにいたのは。


「パネッタさん!!」

「パナム様!!」


 二人同時に、別々の声をあげた。


「パネッタって誰よ?」


「えっ? セレナさんこそパナム様って誰ですか?」


「前に説明したでしょ? 貴族の息子の名前よ。彼がそうなの」


「えっ……。ええっ!?」


 状況がうまく理解できないハルに、セレナは一つため息を吐くと、彼をほったらかしてその少年に近づこうとする。


 しかし。

「来ちゃだめだ!!」


 洞窟内にパネッタの声が響き渡ったその時、そいつは現れた。

 最初に見えたのは、赤黒い二つの光。それが揺れ動いたかと思うと、そこから少しずつ輪郭を表していく。

 そして広場の奥、パネッタがいるさらに奥から、闇から生まれたかのようにするりと姿を現したのは、二メトルを超える巨体のハイゴブリンだった。


「なっ!?」


「ここにも!?」


 呆気に取られる二人をよそに、パネッタは声を張り上げる。


「逃げて!! こいつの狙いはあなたたちです!!」


 パネッタの言葉の意味。

 それが理解できず、突然の出来事に固まる二人。

 それを見て、ハイゴブリンがニヤリと笑う。

 そして。


「ヴォオオオオオォォオォォオオオ!!」


 洞窟が崩れるのでは思えるほどの咆哮をあげた。


 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。もし面白いと思っていただけた方は、ブックマーク、評価、感想等いただけると嬉しいです。もちろん、レビューやいいねもお待ちしてます。執筆の励みになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ