合法のじゃロリババア 4/6
俺は、諦めた。
時間が、足りない。
俺が全速力で走っても、猶予がたった一日間だけでは難しい。
空飛ぶ絨毯アイテムでも、そんなに速度は出せない。
転送アイテムは一度行った場所にしか転移できないので、芋虫幼女の故郷に行ったことがない俺が使っても無理。
こうした理由で、潔く諦めた俺たちは、その日はゆったりと観光を続け、ディナーを楽しみ、そのまま街に泊まり、日が昇りきった後に起床し、朝食をたらふく食べた後、幼女に転送アイテムを渡し、到着した。
転送アイテムは、俺が使っても発動しないが、幼女に使ってもらえば彼女の故郷へと移動できるのだ。
初代相棒、一日ぶりに復活である。
「噂に聞いていたけど、転送アイテムとは便利なものなのじゃ」
芋虫幼女が、芋虫の動きみたいな呑気な感想を述べる。
ほんと、呑気としか言いようがない。
怒りを通り越し、逆に感心してしまうレベル。
呑気とは、余裕があってこそ。
いつまでも、純粋な幼女のままでいてほしい。
俺はもう、この幼女について、細かいことを考えるのを止めた。
「ほうほう、中々どうして、立派な集落じゃないか」
呑気な幼女の故郷は、テレビで見る大森林地帯に暮らす集落みたいな風情であった。
周囲は全て巨大な森林に囲まれているが、木造の家が多く建っていて、それなりに立派な村という規模。
彼女の話からすると、この地域で最も力のある種族なのだろう。
巨大な樹木を見上げていると、俺が初めてこの世界に転移してきた場所を思い出す。
あの森の樹はもっと大きくて、上位ランクの魔物がうようよ徘徊していて、誰も住んでいなかった。
森の奥には魔族の幹部である魔人娘が待ち構えていたりと、あまり良い記憶は無いのだが、似た風景を見ていると懐かしさを感じる。
散歩がてら、一度戻ってみるのもいいかもしれない。
閑話休題。
「さて、そろそろ現実を直視しようか……」
そんな訳で、やってきました武闘大会。
そしていまさらだが、自分の行動原理をおさらいしておこう。
俺は物事に理由を付けないと動けないタイプなのだ。
俺が彼女に協力する気になった理由は、三つ。
一つめの理由は、武闘大会なる催しに興味があったから。
やっぱドラゴンボール世代として、天下一武道会には憧れがある。
優勝した暁にはダブルピース決めながら「優勝したもんねーーっ!!」したいじゃんかよ。
二つめの理由は、合法のじゃロリババアに興味があったから。
のじゃロリ娘は、二次娯楽好きには外せない鉄板の属性。
似たような属性の魔人娘を三匹ほど預かっているが、あいつらは変幻自在な化け物枠なので数に入らない。
三つめの理由は、優勝したら合法のじゃロリババアからもらえるご褒美に興味があったから。
その内容は秘密だそうだが、曰く「この世に二つと無い秘宝」らしい。
ぶっちゃけ期待外れに終わりそうだが、ロリから手渡しで何かを賜ること自体が最高のご褒美なので、問題ない。
よしよし、ちゃんと三つの理由があるな。
そんな興味に引かれて、のこのこやって来たのだが……。
「武道大会とはいっても、ステージが用意されているとは限らないのか」
大会は、集落内の大広間で行われるらしい。
その大広間が集落の真ん中にあるので、戦闘中心の生活をしている戦闘民族であることが覗える。
四角形の石積みステージを期待していた俺のテンションは、少し下がってしまった。
セルがやっていたように、自力でステージ作ろうかなぁ。
「すてーじ、とは何のことかえ?」
「戦う舞台のことだ。その舞台上でのみ戦闘が許され、そこから落ちると負けになってしまうんだよ」
「そんな簡単に勝負が決まってしまったら、面白くないと思うのじゃ」
「それを言ったら終わりなんだよなー」
男のロマンは女には理解されないらしい。
まあ、確かに、バーチャファイターでもリングアウトで負けるのは不完全燃焼だったし、ドラゴンボールでも終盤の大会ではステージとして機能していなかったし。
「だが、戦闘エリアが決まっていないと、距離を取る振りして逃げ出す輩も出てくるんじゃないのか?」
「エンプ族に敵前逃亡する者などいないのじゃ」
そうだった、彼女らは戦いで代表を選ぶような戦闘民族。
なんてったって、女だけのアマゾネスみたいな種族だからなぁ。
「もう既に、多くの参加者が集まっているようだな」
「子供と老人を除く全員が参加する、一番大きな大会なので当然なのじゃ」
「それはいいとして。……もしかしてとは思っていたのだが、あんたら種族は全員見た目が子供みたいなんだな」
「うむっ、様々な他種族と交わってもエンプ族の子は、全てこのような背格好になるのじゃ」
濃いなぁ、血が。
身体的特徴にとやかく言うつもりはないが、そうなると武道大会に参加するペアは、エンプ族出身の見た目は幼女と、他種族出身の筋骨隆々なむさ苦しい男、という組み合わせばかりになってしまう。
一見すると、ロリコンに攫われてきたロリにしか思えない。
これだけ多くのロリが集まると壮観だが、世の中にこれほど多くのロリコンが潜んでいたのかと思うと、寒気がする。
この世の地獄かな。
……いや、違うぞ?
俺だけは違うからな?
俺は世間知らずの幼女に請われ、仕方なく慈愛の精神で協力している紳士であって、断じてロリコンなどではないからな!
変態紳士じゃないからな!!
「どうかしたのかえ? 今からそんな疲れた顔をしてたら、本番が心配なのじゃ」
俺のロリが不安そうにしているが、ロリコンの本番ってなんだろう?
……あっ、武道大会の本番って意味か。
ふー、お互いのロリ愛を自慢し合う大会じゃなくてよかったぜ。
そんな大会に参加したら、ノーマルな俺も本物のロリコンになっていたかもしれない。
「いや、ちょっと気になることがあってな。念のため、顔を隠して参加したいのだが?」
優勝して注目されるのは困るし、トップ・オブ・ザ・ロリコンとして顔を覚えられるのも御免だ。
だから、最初から変装しておくのが吉だろう。
ついでに、名前とステイタスも偽装しておこう。
「顔を隠しても問題ないのじゃ。大会の主役はわらわたちエンプ族のメスだから、パートナーのオスは終始鎧姿でもいいのじゃ」
「そりゃあ好都合だ。そういえば、武具の使用制限はないのか? アイテムも使っていいのか?」
「うむ、どれほど高価な武器も、希少なアイテムも、何でも使っていいのじゃ。性能の高い武具を調達するのも実力の一つ。ただし、回復アイテムは、一試合が終わった後、次の試合が始まるまでの間にだけ使ってよい決まりなのじゃ」
「戦闘中の回復が駄目となると、ドルオーラの連発は無理か。それでも、試合後に回復できるなら、次戦を気にせず毎回全力を出せるな。回復アイテムなら俺がたくさん持っているから、あんたはダメージを気にせず全力を尽くしてくれ」
「最初からそのつもりなのじゃ!」
勇ましい返事だが、最初からってことは、もし俺が回復アイテムを持っていなくても、毎回神風アタックするつもりだったってことだよな。
連戦するトーナメント方式だから、もう少し考えてほしい。
他者はともかく、自身についても命知らずで怖い。
頭は幼女、見た目も幼女、年齢だけ大人って、一番駄目な組み合わせだろう。
「ならば俺も、微力を尽くすため、フルアーマーを装備するとしよう!」
そう言って俺は、懐から取り出した鎧を、まるで変身ヒーローみたいに一瞬で装着してみせた。
このアイテムは、どんな武具にも変幻自在だが、能力をアップさせる付与効果は無い。
剣は持たず、構えるのは大きな楯だけ。
この防御特化型のタンクであれば、どんな攻撃に耐えても不自然じゃないだろう。
「おおっ、全身黄色の鎧とは格好いいのじゃっ」
「鎧といえば騎士。ナイトといえばヒーロー。ヒーローといえば黄色だからな」
「しかし、そのような重装備では、攻撃を受け流すお主の秘奥義が使いづらいのではないかえ?」
「あの話は嘘だから問題ない」
「うそっ!? あれほど講釈を垂れておいて嘘っ!? わらわに奢らせた高価な料理の対価なのに嘘っ!?」
「結局俺が奢ったから、相殺だな」
戦うヒーローといえば、アンパンマン。
アンパンマンといえば、赤色と黄色を基調にしているが、赤色は炎の教団撲滅時に使った攻撃特化型なので、今回の防御型では黄色ベースにしてみた。
戦隊ものでも黄色は高確率で出てくるし、ヒーローには欠かせない色だろう。
「俺はこれで準備完了だが、あんたの方は大丈夫なのか?」
「わらわはこの通り、背負っている二つの鎌で戦うから、いつでも準備万端なのじゃ」
「いくらあんたが攻撃役だとしても、最低限の防護具は身に付けておいた方がいいと思うぞ?」
「余計な物を付けると動きにくくなって、攻撃の鋭さが鈍るのじゃ。わらわは常に最高の攻撃を繰り出したいのじゃ」
「……一理あるし、戦闘後は回復できるし、言っても無駄そうだし、それでいいか」
「うむっ、これが万全の作戦なのじゃ!」
攻守の役割分担を決めただけなんですけど。
まあ、やる気だけは誰にも負けない勢いだから、どうにかなるだろう。
こうして、真のロリコンを決める戦いが始まったのである。
ロリコンちゃうわ!
◇ ◇ ◇
武道大会はトーナメント方式で、7回勝ったら優勝。
エンプ族基準の成人なら誰でも参加可能とはいえ、一集落としてはけっこうな参加人数だ。
くじ引きで決められた対戦相手と勝負し、勝ったらまたくじ引きするから、最悪連戦もあり得る。
故に勝ち続けるためには、単純な実力だけでなく、体力を温存する技能や回復アイテム確保が重要。
俺たちペアは、回復手段が万全なので、毎回ダメージを気にせず全力で戦えるという大きなメリットがある。
俺の相棒ことカドールは、参加者の中では最年少なので不利だが、このメリットがあれば十分カバーできるだろう。
「勇敢なるわらわの騎士よっ! いざ出陣なのじゃ!」
「へいへい、仰せのままに、麗しき姫様」
作戦は、至ってシンプル。
試合開始の合図と同時に、敵側の女性へ向かって特攻。
俺は、右手に楯を構え、左手にカドールを抱っこの体勢で、遠距離攻撃を防いだり避けたりしながら接近。
こちらの射程範囲に入ったら、カドールを同族へ向かって投げ飛ばし、後は彼女任せ。
俺は、彼女たちの闘いに横槍が入らないよう、敵側の男の攻撃を防いだり進路妨害したりして引き離す役割に徹する。
女同士と男同士の一騎打ちな構図だが、大会の主役である女が負けると相棒の男も負けになるルールなので、俺が攻撃する必要はない。
なので、タッグマッチとはいえ、勝つか負けるかは俺の愛しい姫君次第。
俺は敵側の男をテキトーにあしらいながら、高みの見物してればいい。
見ているだけで終わる、簡単なお仕事である。
「後は任せたぞー、マイプリンセスー」
「望むところなのじゃっ!」
姫様を守るべき騎士にあるまじき応援を飛ばす。
カドールは特化型なので総合力では分が悪いが、得意とする接近戦に持ち込めば、大抵の相手とは互角以上に戦えるらしい。
接近戦はお互いの表情まで見えるので、絶対に勝とうとする気迫も勝敗に関わってくる。
いくら試合後にアイテムで回復できるとはいえ、敵の攻撃をろくに避けず、笑って流血しながら反撃してくる様は、相手をたじろがせるに十分。
カドールはどうしても勝ちたいらしく、どれだけ血を流そうが肉片が弾け飛ぼうが、決して戦うことを止めない。
気迫を突き抜けた狂気が感じられる。
そんな戦闘風景を見た、俺の感想。
もし仮に、幼女趣味に目覚めたとしても、猟奇趣味だけは理解したくない。
まさか、ロリコンより罪深い性癖があるとは思わなかったなぁ。
世界は、広い。
「やったのじゃ! 勝ったのじゃ! このまま次も勝利するのじゃ!」
「うんうん、勝利の舞を披露するのはいいけど、失血死する前にアイテムで回復しような」
トーナメントを登るにつれ相手は強くなるが、同時に相手のダメージも積み重なっていく。
どうやら、回復アイテムを持っているペアは少ないらしく、精々2~3本用意するのが限度らしい。
アイテムは貴重だから、当然だわな。
それに、同等以上の実力者との連戦で、レベルアップしたことも大きい。
同族殺しでレベリングとは、乱世乱世。
一応ギリギリ殺してないけど。
こうして、復活の呪文付き神風特攻と、鬼畜レベリング作戦が功を奏し、俺たちペアは無事に決勝進出を果たすことができたのだ。
正直なところ、負けたら負けたで早く昼寝できるなぁと思っていたのに、残念。
悪巧みは大抵、上手くいかないものである。
「次はいよいよ決勝戦なのじゃ!」
「よし、もう十分すぎるほど頑張ったから、決勝戦は棄権しよう!」
「ふえっ!? こ、こまで来てっ、どうしてそんなっ!? 何かやむにやまれぬ理由があるのかえっ!?」
「うん、飽きてきた」
「そんな理由でっ!?」
「あと、昼寝したい」
だって、毎回やることが一緒で、レベル差があるから歯応えもなくて、しかも俺の相手はむさ苦しい男どもだから、「あー、俺って何してるんだろうー?」ってな具合に段々とテンションが落ちていくんだよなぁ。
せめて戦闘中にポロリの一つでもあれば集中力が続くのだが、その対象が幼女だと見応えがないし、しかも実際にポロリするのは肉片だからなぁ。
実年齢は大人とはいえ、見た目が幼女同士の武器を使ったガチ戦闘なんて、どこに需要があるんだよ。
これまで何人も殺めてきた俺だが、グロくならないよう注意していたので、グロ耐性が付いていない。
まさか、初めてのスプラッター観覧が幼女になるとは思わなかったなぁ。
幼女がちょっと苦手になりそう。
「あと一回! あと一回! たったあと一回だけのお願いなのじゃ! な! なっ!」
「お、おう……」
土下座で頼んだらやらせてくれるチョロい女みたいな扱いを受けた俺は、しぶしぶ続行を了承する。
芋虫幼女の必死なお願いっぷりが、どこぞの好奇心旺盛なお嬢様みたいで嫌だ。
でも、まあ、決勝戦を棄権したら、今までの苦労が水の泡になってしまうから仕方ないか。
せめてもの口直しに、芋虫幼女からご褒美をもらって帰るとしよう。
――――さあ、次が最後の闘いだ!




