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年の差カップルと赤髪ペアの実地研修 3/5




 出発前に少々揉めたものの、冒険者の実地研修はつつがなく進行した。


「いやー、素晴らしいお天気で良かったよなー」


 鉄板のお天気ネタをはじめとしたウィットに富んだ会話を交えながら、目的地へと向かう。

 オクサードの街の近くには、魔物が定期的に出現するスポット――――「森」と「ダンジョン」が存在する。

「森」の外側が初心者向け、内側が中級者向け、そして「ダンジョン」が上級者向けと、徘徊している魔物が明確に違っている。

 また、魔物の種類も豊富で、様々なアイテムがドロップされるのも特徴だ。

 このように、使い勝手がとても良いため、多くの冒険者が集まってくるらしい。

  

「なるほどなるほど、だから『冒険者の街』って呼ばれているんだな」


「街に住んでそこそこ経つのにそんな事も知らなかったのかよ」的な視線をコルトとレティア姐さんから頂戴しながら、二人の後をテクテク歩きながら付いていく。

 本日の研修会において唯一の男である俺は浮いているから、女性陣の後方を一人寂しく追いかけるのが当然だと覚悟していたが……。

 予想に反して、俺の隣にはミスティナお姉様が同伴してくれていた。


 しかも、キャバクラ用語である「同伴」のように、ピッタリと寄り添い腕まで組んでくれる。

 その場違いな雰囲気が前を歩く二人の反感を買っているのだが、それは一先ず置いておくとして。

 ぼっち慣れしている俺だが、今日に限っては仲間外れされなくて助かる。

 あまり興味がなかったから、冒険者としての常識に疎く不安だったのだ。


 ミスティナお姉様の原因不明かつ過分な優しさが気になるが、腕に当たるポヨポヨした感触を味わっていると細かい事はどうでも良くなってくる。

 森の中で魔物相手にチャンバラごっことか子供っぽい真似は中止にして、このまま大人の時間に突入したい。

 そういえばラブホテルって、森の近くとかの田舎に多いよな。

 この辺にもあればいいのに。


「コルトはまだ冒険者になってねーのに、もうランク3の魔法が使えるとは有望じゃねーか」

「そ、そんなことないですよ、レティアさんっ」


 どうやら先行組も仲良くやっているようだ。

 今回の指導役の二人とコルトは以前から知り合いらしく、特にレティア姐さんとは男っぽい言動も似ているから相性も良さそうだ。

 俺はボーイッシュな子もイケる口だが、女性らしさを全部捨ててもらっても困る。

 あんまり影響を受けないでおくれよ、コルコル。


「じゅーぶん才能あるから自信持っていいさ。正式な冒険者になったら、あたしらとパーティー組もうぜ、な?」

「はいっ、ぜひお願いしますっ」


 レティア姐さんが言っているように、冒険者の研修会は青田買い的な側面もあるのだろう。

 コルトが認められるのは大変喜ばしいのだが……。

 何故だろう、胸にぽっかりと穴が空いたような喪失感がある。

 今まで自分しか知らなかったマイナーアイドルが一躍有名になり、嬉しさと同時に自分だけのアイドルではなくなった寂しさを感じているのだろうか。

 それとも、コルトが尊敬する大人が俺だけじゃなかったと知って、嫉妬しているのだろうか。

 こんな風に、何とも言えないモヤモヤ感を抱いていると……。


「グリンさぁんも、冒険者になれると思うからぁ、安心して?」

「お、おう」


「もしもだぁめなぁ時は、わぁたぁしが養うからぁ、安心して?」

「お、おう?」


 俺の左腕にグイグイと乳房を押しつけながら、ミスティナお姉様が慰めてくれる。

 慰めというか、甘やかしっぷりが凄い。

 だだ甘お姉さんである。


 何でこんなに好感度が高いのだろうか。

 最初っから好感度MAXなギャルゲーは多いが、それは過去の積み重ねがあり、後でしっかり説明されるから問題ない。

 だけど、初対面の俺と彼女にそんな因縁はないはず。

 考えても答えが出ない問題は直接聞くしかないのだが、「俺のどこが好きなの?」と問い掛ける勇気がない。

 とにかく、今は味方が一人でも居ることを素直に喜んでおこう。



「それで、今日はどんな所に行くんですかっ、レティアさん?」

「期待してるコルトには悪いけどさー、今回は冒険者になる前の研修だから、一番安全な森の外側をかーるく回るだけだぞ」


「えっ、だったら魔物は?」

「それでもランク1と2の魔物はけっこう出てくるから、あたしらが格好良く倒す姿をちゃーんと見ておけよな、コルト?」

「は、はいっ!」


 仲が良い先輩と後輩みたいな二人が話しているように、今回の実地研修はイージーモードらしい。

 まだ冒険者にもなっていないヒヨッコ向けの研修だから、当然であろう。

 危険は極力抑えつつ、それでも魔物の存在はしっかり認識できるようなコースなんだろうな。


「……簡単なコースらしいが、本当に危険はないのか?」

「森に出現する魔物の行動は大体同じで、イレギュラーは少なぁいわぁ」


 話題欲しさに、ミスティナお姉様に確認してしまった事を後悔する。

 今の会話って、フラグになりそうだよな。

 ただでさえ俺みたいなイレギュラーが混ざり込んでいるのだから、迂闊な言動に注意する必要があるだろう。

 断じて認めたくないが、この世界ではイレギュラー同士が引き合うお約束があるみたいだし。


「もし中級の魔物が出てきても負けねーから安心しなっ」

「んふふっ、年上の男性に頼られるのって、とっても良いわぁ~」


 脳筋と色ボケな教官達は今一つ当てにならなそうで心配である。

 ここはやっぱり年長者である俺がしっかりせねばっ。

 でもやっぱり面倒だからお任せします!



「――――ここが森の入り口で、こっから先は魔物が出てくるから、その前に昼飯にしようぜ」


 一時間ほど歩いて魔物が出現するスポットの「森」に到着した俺達は、本番前に腹ごなしする運びとなった。

 食べて直ぐ動くと腹が痛くなりそうだが、そんな常識的な忠告をしても意味はないだろう。

 どうせ俺には発言権なんて無いからな。


「出発前に、あんだけデカい口を叩いたんだから、オッサンが作る昼飯にはすっごく期待してるぜ?」


 血の気の多いレティア姐さんが獰猛に笑いながら挑発してくる。

 確かに俺は料理スキルを持っているし、料理への興味が薄いこの世界の住民よりは詳しいと思うが、まともに調理した経験がある訳ではない。

 だからあの時の言葉はそのば凌ぎだったので、本気で期待されても困るのだが。


「ほら、早くしてくれよオッサン?」


 彼女は最初っから俺を「オッサン」と呼んでいる。

 親愛の情が感じられる呼称ではないが、正面からそう呼ぶ子も居ないから案外新鮮で良いな。

 ……などと現実逃避している場合じゃない。

 ここは一つ、味よりもパフォーマンスで誤魔化してみるか。


「準備するから、少し待ってくれ」


 俺は、今回の研修用に背負ってきたバッグの中に手を突っ込み、取り出す振りをして複製魔法で必要な品を出現させる。

 円形に並べて土台にするための石。

 石の輪の中に入れて燃やすための木片。

 火魔法で着火させ、最後に鉄板を取り出しその上に乗せたら準備完了だ。


「鉄板はともかく、石や木までバッグに入れとく必要はねーだろうがよ。その辺に落ちているヤツを使えよな」

「料理がぁ出来る男ってのも悪くなぁいわぁ~」

「本当に大丈夫なのかよ、あんちゃん?」


 騒がしい外野は無視して作業を進めよう。

 たとえ力業でも満足させれば勝ちなのだ。


「準備が出来たから作り始めるぞ」


 さて、ここからはパフォーマンスタイムである。

 俺には最低限の技術しかないが、それでも目の前で豪快に調理すれば、料理なんて作ったことがなさそうなこの三人には新鮮に見えるはず。


「まずは鉄板に油をひいて温め、その後に肉と野菜を投入」


 豚肉とキャベツとニンジンを取り出し、左手で軽く上に投げ、右手に持った包丁を振り回すと。

 バラバラになった肉と野菜とが鉄板の上に落ちてくる。


「肉と野菜を炒めた後は、麺と水を加えて混ぜ混ぜ混ぜ、と……」

「「「…………」」」


「麺がほぐれてきたら、ソースと塩コショウで味付けし……」

「「「…………」」」


「最後に青ノリを添えて、出来上がりだっ!」

「「「…………」」」


 面倒なので焼き加減を気にせず、超火力で簡単に仕上げる。

 これぞ俺が会得している数少ない料理、その名も「焼きそば」である。

 会社や地域のイベントで身に付いた超簡単な男料理がこんな所で役に立つとは思わなかった。

 芸は身を助く、とは本当だよなぁ。

 スーパーに売ってある食材をただ混ぜただけだが、お祭りの屋台程度には美味いと思うのだが。


「なあーオッサンよぉ、あっという間にできたが本当にうめーのかよ、これ?」

「安心してくれ。人体に害を及ぼすような材料は使っていないから、少なくとも死にはしないはずだ」


「……もっと自信を持って言えないのかよ、あんちゃん」

「とっても香ばぁしい匂いがするから、わぁたぁしは美味しいと思うわぁ」


「まあ、とにかく食べてみてくれ。料理ってヤツは出来たてが一番美味いんだぞ?」


 俺が促すと、三人娘は恐る恐るといった感じで食べはじめた。

 この世界には麺料理が無いみたいだから、初めて見る形態に躊躇しているのだろう。

 焼きそばってよくよく見ると、茶色い物体がうにょうにょしていて不気味だからな。

 そのインパクトだけでも成功だろう。


「――――なんだこれっ、本当にうめーじゃねーかっ」

「ちょっと食べにくいけど、刺激的な味わぁいで美味しいわぁ」

「……あんちゃんって、本当に料理ができたんだな」


 レティア姐さんとミスティナお姉様からお褒めの言葉を頂戴した。

 コルトも複雑そうな顔でパクパク食べている。

 珍しい料理を濃いめの味付けにしただけでこれだ。

 異世界人の舌がチョロくて良かった。


 焼きそばは、簡単に作れる料理の中でも特に美味しい方だと思う。

 濃いめの味付けがよく合う料理だし、わんぱくな子供や男が好む料理だ。

 そういえば、一度だけ焼きそば専門店に行ったことがある。

 コシがある特別な麺を使っているとアピールしているくせに、実際には半分をモヤシが占め、結局シャクシャクした食感しか残らなかった。

 しかも一皿八百円もしやがるし。

 スーパーで半額になった売れ残りの焼きそばを食った方がまだマシな気がしたものだ。


 だけど、その専門店もぼったくりしている訳じゃないのだろう。

 単純でも美味しい料理を複雑にすれば、もっともっと美味しくなるはずだと色々試した結果、失敗しただけ。

 シンプルに完成された料理に必要以上の手間を加えるのは愚策なのだ。


「ほら、いくらでも作るから、どんどん食ってくれ」

「……ふん、あたしはまだ認めた訳じゃねーからなっ」


 レティア姉さんは、まだ納得がいかないのか口を尖らせている。

 空になった皿を勢いよく差し出しながら、そんな台詞を吐かれても、なあ?


 ……結局、何度もお代わりを催促され、危険な実地研修のはずが、リア充な学生がやるキャンプみたいな雰囲気になってしまった。

 そんなに腹いっぱい食べて、動けなくなっても困るのだが。

 とにかく、これで俺が役に立つ男だと全員が分かったはずっ。


「――――よし、これで俺も立派な冒険者に近づいたな!」

「……オッサンは、冒険者よりも料理人になった方がいいんじゃねーのか?」


 それは言わない約束でお願いします。




 ◇ ◇ ◇




 案の定、食べ過ぎた彼女達は……。

 十分な休憩を挟み、やっとこさ重い腰を上げて森の中へ入ると、何とか無事に本番の戦闘パートへと突入した。

 始まるまで、ずっとグダグダな感じだったが、俺の所為ではないと思いたい。


 人類の天敵である魔物とのガチンコ対決とはいっても、ゲスト扱いのコルトと俺は見ているだけ。

 万が一に備え、いつでも逃げ出せるように離れた位置から見学している。

 それに、出現するのは低ランクで小さな魔物ばかりだから、いまいち迫力に欠ける。

 B級のアトラクションでも見ている気分だ。


「す、すっげーーーっ!!」


 それでも、魔物との戦闘を初めて目の当たりにするコルトにとっては、十分すぎるほど刺激的な体験らしく。

 先ほどからずっと、スゲースゲーばかり言っている。


 性格に難ありと思われた指導役の二人は、ああ見えて腕は確からしく、苦戦することなく次々と魔物を倒していった。

 この世界では、見た目と強さが比例しない。

 技術や筋力といった地力よりも、レベルといった遙かに格上の恩恵があるからだ。

 誰よりもその恩恵を受けている俺にはよーく分かる。


 二人だけのパーティーなので若干不安だったが、少なくとも下級の魔物には楽勝のようだ。

 問題があるとすれば、双方とも「ガンガンいこうぜ」主義の超攻撃型であること。

 レティア姐さんは、大きな剣と身体強化魔法を使った超近接型。

 ミスティナお姉様は、通常の剣と近距離からの放出系魔法を交えた近接型。

 どちらもイケイケな前衛タイプなのでバランスが悪いはずだが、それでもランク2の魔物を圧倒しているからレベル以上の手練れなのだろう。


 ここに慎重派でサポートが得意そうなコルトが加われば、程よいバランスのパーティーになりそうだ。

 俺だけのアイドルを取られるみたいで嫌だが、男連中に混ざるよりはずっと良い。

 仕方ないから、あんたらにコルトを任せよう。

 怪我させたら承知しないからな!


「しゃらくせぇっ! さっさと消えやがれっ!」

「ほらぁ、もう逝ちゃいなぁさぁいっ!」


 最後に二人は、決め台詞と共に攻撃を繰り出し、これを正面から食らった魔物があっさりと霧散した。

 この世界では当然だろうが、一応は魔力を使って戦う魔法少女的な存在なんだから、その可愛げのない決め台詞はどうにかしてほしい。



「……ふぅ、今日はこんくらいにしておくか」

「そうね、もう暗くなぁるかぁらぁ、明日に備えて休みまぁしょう」


 余裕だと思っていたが、けっこう疲れていたらしい二人が戻ってくる。

 いくら格下でも殺傷力を持つ相手だから、気が抜けないのだろう。

 

 戦闘と移動とを何度か繰り返していたら、辺りが薄暗くなっていた。

 人族と違い魔物は夜目も利くので、夜間の戦闘は御法度のようだ。

 魔物が常駐する森の中でも、出現しやすい場所としにくい場所があるらしく、その安全地帯でたき火をしながら夜を過ごすこととなった。

 魔物のランクで分別されたエリア構成といい、適度な登場頻度といい、初心者に優しい森だな。

 散々魔法を使って敵を倒してアイテムをゲットしておいて今更な話だが、こんなところもゲームっぽい世界である。


 もしも本当に、この世界がゲームだとしたら……。

 クリア条件は、お約束からするとラスボス――――魔王様の退治だろうか。

 そして、その先にあるのは、エンディング。

 俺はもしかして、元の世界に戻ってしまうのかもしれない。


 ……まあ、ポンコツトリオにさえ手を焼く俺が、多くの魔物や魔人を生み出す力を持った魔王様に敵うとは到底思えない。

 地球の娯楽には未練があるが、今更社畜に戻っても耐えられないだろうし。

 やはり俺は、積極的に行動せず、道楽のためだけに頑張る方がお似合いなのだろう。



「――――やっぱりレティアさんとミスティナさんは凄いですっ。この辺の魔物じゃ相手になりませんねっ!」

「こんくらい大した事ねーよ、コルト。魔物は力が強いヤツが多いが動きはおせーから、低ランクに苦戦してるようじゃ駄目なんだぜ」

「そうなぁのよ、ランク3の魔物を一人で倒せるようになぁったらぁ一人前だぁと言わぁれるわぁ」


 コルトの興奮が留まるところを知らない。

 赤い髪の教官殿の株はウナギ登りである。

 それに比べ、俺は…………。


「お嬢様方、晩飯の準備ができたぞ」

「おおっ、これもうめーじゃねーか。オッサンは長期遠征の時に役立つかもな。もちろん雑用係としてな」


 食事をはじめとした雑用係として地位を固めつつあった。

 ズボラな俺は、今まで他人の世話なんてした事がなかったのだが。

 こうして誠心誠意ご奉仕した後に褒められると、報われたって気がして嬉しい。

 メイド職は様々な技能が求められるが、同じように執事職も万能であるべき。

 料理も戦闘も夜のお供も可能な執事ってのは、案外俺に相応しい職業かもしれない。

 何よりも執事にはダンディさが不可欠だから、俺にピッタリだろう。

 これからは、おっさん執事の時代が来ちゃうかもよ。


「――――そんじゃあオッサン、あたしらは明日に備えて早く寝るから、何かあったら起こしてくれよ」


 燕尾服を着て紅茶を入れる自分の姿を思い浮かべながらニヤニヤしていたら、突然お休み宣言をされた。

 えっ、俺だけを残して、みんな寝ちゃうつもりなの?

 魔物との戦闘で昂ぶった身体を鎮めなくていいの?

 執事な俺は夜の相手もばっちりできますよ?

 コルトには教育に悪いから睡眠薬を飲ませて、残った三人で愉しむべきじゃないかな?


「……非戦闘員の俺だけが起きていても、魔物が現れたら対応できないのだが?」

「この辺はめったに魔物が来ないし、もし出てきても大きな足音を立てるから簡単に気づけるさ。そん時はすぐあたしらが起きて対処するから安心しな」


「……だったら、俺も一緒に寝て問題ないのではなかろうか?」

「オッサンが夜番するって言うから連れてきたんじゃねーかよ」


 そうでした。そんな約束しましたね、最初に。

 その場凌ぎで適当な口約束をしてしまうアホな自分が恨めしい。


「あんちゃんは、いつもいっぱい寝てるから、一晩くらい寝なくても大丈夫だよな?」


 コルトはまだ、怒っているらしい。

 研修の邪魔はしていないつもりだが、やはり保護者同伴みたいで恥ずかしいのかな。

 人は恥ずかしさを知って成長していく生き物なんだぞ?


「ごめんなぁさぁいね。わぁたぁしも、しっかぁり寝ないとだぁめなタイプなの~」


 最後の希望だったミスティナお姉様も、早々に寝てしまった。

 うん、寝不足は美容の敵だから仕方ないよな。

 仕方ない、仕方ない……。


「………………」


 かしましい三人娘が寝てしまうと、一気に静かになる。

 なるほど、これが放置プレイってヤツか。

 レベルたけーな、おい。


「……いやぁ、今日も一日、何事も無くて良かったよなー?」

「うっさいぞオッサン、静かにしろよ」

「はい、ごめんなさい」


 焚き火をしているのに、寒い。

 心が、寒い……。

 

「…………」


 レティア姐さんから「寝顔を見たら斬る」と脅されたので、女性陣に背を向けて体育座りをしながら、一人寂しく火の番に勤しむ。

 ボッチには耐性があるが、本当の一人っきりではなく近くに誰かがいる状態での隔離だと、これまでにない寂しさを感じる。


「…………」


 そんな中、炎をじっと見つめていると、まるで自分自身を眺めているような錯覚に囚われていく。

 ユラユラと不安定に揺らめく己の心の奥底を覗き込んでいるような……。

 今まで気づいていなかった本当の自分が見えてくるような……。

 新しい世界が開きそうな……。

 そんな、予感。


「…………いい」


 放置プレイ。

 癖になりそうだ。





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