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封入石

 それほど広くはない室内に、もうもうと湯気が立ち籠める。

 最近はすっかり朝晩が冷え込むようになったレバンティスの街。だが、その部屋の中だけは氷の精霊に忌避されているかのごとく暖かだった。

 その部屋の中で一糸纏わぬ二人の女性が、のんびりと身体を伸ばして寛いでいる。

「ごめんね、我が儘言って。でも、一度でいいから朝風呂ってものに入ってみたかったのよ。まさか、こんな贅沢ができる日がくるなんて、故郷にいた頃は思いもしなかったわね」

 温かな湯の中で、気持ち良さそうに身体を伸ばすのはミルイルだ。その隣には、やはり気持ちよさげなカルセドニアの姿もある。

 ミルイルは以前、辰巳やエルから日本では朝から風呂に入ることもあると聞いたことがあり、一度でいいからこうして朝風呂に入ってみたかったのだ。

 それをカルセドニアに相談したところ、彼女は二つ返事でクリソプレーズ家の風呂場を提供してくれた。

 本来ならばカルセドニアが自ら水を作り出し、湯へと変えればいいのだが、現在、彼女は魔法を封じられている。

 そのため、今朝の風呂はクリソプレーズ家の使用人に用意してもらった。クリソプレーズ家ともなれば、魔法の使える使用人が数人はいる。

 レバンティスの街にはあちこちに町湯があるが、さすがに朝からは営業していないのだ。同じように、〔エルフの憩い亭〕の風呂も夕方からしか──有料ではあるものの──利用できない。

「女将さんも、お風呂に入ってから出かければ良かったのに」

「仕方ありませんよ。お祖父様から何か頼まれていたようですし」

 朝方、王城へと呼び出されたジュゼッペは、出かける際にエルに何かを話していたようだった。その後、エルは自分の店へと向かったので、おそらくジュゼッペから何らかの依頼があったのだろう。

「しかし……タツミたちが以前にいた国……えっと、ニホンだっけ? 聞けば聞くほど信じられない所よね」

 ミルイルやジャドックたちは、日本という国について辰巳やエルからいろいろと聞かされている。そして、その国がラルゴフィーリ王国よりも遥かに豊かで発展しているらしいことは、この国で暮らすミルイルたちには俄には信じられない。

「この国だってかなり豊かな大国なのにそれ以上って……一体、どんな夢の国なのかしら?」

「いや、あの国も結構あれこれと問題があるからな。決して夢の国ってわけじゃないぜ?」

 突然聞こえてきた、聞き覚えのない第三の声。その声に、カルセドニアとミルイルは途端に警戒態勢を取る。ミルイルは背後にカルセドニアを庇うような位置に身体を移動させると、声のした方へと鋭い視線を向けた。

 立ち籠める湯気の中、そこに立っていたのはタツミ……いや、樹美である。

「ちょ、ちょっとっ!! ここはお風呂で、今は私たちが入っているのよっ!! 何を堂々と入って来ているのっ!?」

 カルセドニアを背後に庇い、自らの身体も両腕で隠しながらも厳しい表情でミルイルが問う。

 一方の樹美は、そんなミルイルのことなどまるで気にもかけず、ゆっくりとカルセドニアたちへと近づいていく。

 双方の距離が縮まったことで、それまで湯気で見え辛かった部分もようやくはっきりと見えてくる。

「え……えええええええっ!?」

「…………やはり……」

 自身も風呂に入るつもりだったのか、樹美もまたカルセドニアたち同様全裸だった。

 そして、明らかになる樹美の性別。

 樹美が女性だとは思ってもいなかったミルイルは、目を大きく見開いて思わず彼女の身体に見入ってしまう。

 決して大きくはないミルイルの胸、その胸よりも樹美の胸は更に控え目だった。身体のラインもどちらかと言えば中性的で、女性特有の魅惑的な曲線はあまり見受けられない。

 尻もそれほど大きくはなく、全体的に女性的な魅力には欠ける身体つきと言えるだろう。だが、それでも樹美の身体は、間違いなく女性のものだった。

 だが、樹美を男性だとばかり思っていたミルイルには、その衝撃はやはり大きかった。その反面、カルセドニアは全く驚いていない。

 実を言えば、彼女は気づいていたのだ。はっきりとした確信こそないものの、おそらく樹美が女性であることは推測していたのである。

 彼女がそう思うに至ったのは、初めて樹美と出会った時のこと。

 カルセドニアは突然背後から樹美に抱き締められたのだが、その時彼女の背中には、樹美の胸の柔らかな感触が僅かに伝わっていた。その時から、カルセドニアは樹美が女性であることを確信していたのだ。

 驚くミルイルを余所に、樹美はじっと自分を見つめるカルセドニアに向けてにっこりと嬉しそうな笑みを浮かべた。




 ティーナの口から明らかにされた事実を、辰巳の脳はすぐには受け入れることができなかった。

「え? え? ちょっと待ってください……え? あいつが……もう一人の俺が……女……? そ、そんなのって……じゃ、じゃあ、あいつはどうしてあんなにカルセに執着を……?」

「彼女のカルセ君への想いは、純粋な家族愛だよ。家族に対する愛情だって、恋人や伴侶に対する愛情に決して劣るものじゃないだろう?」

 思わず考えてしまった「もしかしてもう一人の自分は同性愛者なのか」という疑惑を、ティーナに否定されてなぜかほっとする辰巳。

 しかし、もう一人の自分である樹美が女だとすると、他にも疑惑は湧いてくる。

「……た、確かに身長とかは俺よりも低そうだったけど声は……そ、そうですよ! あいつの声は絶対に男の声だったんです!」

 思わず狼狽える辰巳を、ティーナは布団の中からおもしろそうに見上げていたが、ふと何かを思い出して言葉を続けた。

「そう言えば彼女、声を変えるマジック・アイテムを所持していたね。もっとも、マジック・アイテムと言ってもそれほど高価なものではなく、確かペンダント型のもので、喋ると登録してある声に変換されるというものだったはずだ」

 樹美がいた世界でも、魔封具などのいわゆるマジック・アイテムはやはり高価らしい。

 それでも、中には比較的安価な物も存在する。だが、やはり廉価版は廉価版らしく大した効果を持たないものばかり。樹美が所持していた『変声の首飾り』も、特定の声にしか変換されない廉価版であった。

 これが高価なものになると、同じ『変声の首飾り』でも声を好きなように変化させたり、登録するにしても複数種類を任意に登録できるようになるとのこと。

「それほど豊かではない生活の中、多少の無理をしてでもそのマジック・アイテムを購入したのは、やはり女二人の暮らしは何かと物騒だったからだろうね」

 年若い女性が二人だけで暮らすとなると、やはり治安面で不安が残る。

 そこで、表向き樹美は男性ということにして暮らしていたらしい。そのため、どうしても『変声の首飾り』は必要だった。

 ティーナにそう説明されて、辰巳もようやく納得する。

 おそらく、樹美はその首飾りを衣服の下に隠していたのだろう。そのため、辰巳はその存在に気づかなかったのだ。

「まあ、彼女はもともとマニッシュな服装を好んでいたみたいだし、性格もあまり女性的ではなかったから、男性の振りをすることは難しくなかったのだろうね」

 元々その土地で暮らしていた「もう一人のカルセドニア」が、途中で性別を偽ることは難しい。それもあって、ある日突然現れた樹美の方が男性役を演じた、というのも理由の一つである。

「あ、あいつが……もう一人の俺が……女……」

 自分に対して不敵な笑みを浮かべつつ、激しく敵対した樹美の姿を辰巳は思い浮かべる。同時に、何故かその樹美がふりっふりなドレスを着ている姿を想像してしまい、思わず頭を抱え込む。

 まるで自分が女装しているかのような樹美のドレス姿は、辰巳の精神にダメージを与えていた。

 結構、大きなダメージだった。




「水臭いなぁ、チーコは。風呂に入るんなら、どうしてオレに声をかけてくれないんだ? 以前はよく一緒に入っていただろ?」

 笑顔を浮かべながら近づいてくる樹美。ようやく我に返ったミルイルは、湯から立ち上がって樹美の前に立ちはだかる。

「近づかないで!」

 今、彼女たちは樹美も含めて当然ながら全員全裸であり、一切の武器もない。しかし、ミルイルにはこの状態でも使える切り札が存在する。

 体内の魔力をいつでも解放できるように準備しながら、ミルイルは注意深く樹美の様子を窺う。

「邪魔するんじゃねえよ。いくらチーコの友達でも、大目にみるのも限界があるってことを覚えておくんだな」

 不快そうに眉を寄せる樹美は、すっと右手をミルイルへと向ける。

「何なら今のその格好のまま、この街のあまり治安のよろしくない路地裏にでも送り込んでやろうか。そうしたら、そこにいるだろう胡乱な連中に、たっぷりと遊んでもらえるぜ?」

 樹美の言葉に、ミルイルは思わず一歩後退する。

 治安のよくない路地裏に裸のまま放り込まれれば、女性であるミルイルがどのような目に遭うか想像するまでもない。下卑た男たちに群がられる自分の姿が脳裏に浮かぶが、ミルイルはそれをすぐさま振り払う。

「やれるものならやってみなさいよ!」

 だが、たとえそうなっても、彼女には《魚人化》という切り札がある。魚人に変身すれば、危険な路地裏から逃げるぐらいはそれほど難しくはないだろう。

「ほう? じゃあ、お望み通りにしてやろうじゃないか」

 樹美の右手に、黄金の光を持つ魔力が集中する。その光はカルセドニアはもちろん、最近の魔法に関する修行のおかげで、魔力光を見ることができるようになったミルイルにも見ることができた。

 樹美の右手に集まった魔力光が一際明るい輝きを放つ直前、それまでミルイルの背後にいたカルセドニアが、すっと樹美とミルイルの間に割り込んだ。

 樹美とは真逆の実に豊かな女性らしい肢体を隠すことなく、カルセドニアは険しい視線を樹美へと向ける。

 言葉は一言もなく、ただ睨み付けるだけのカルセドニア。そんなカルセドニアにどこか困惑するような視線を向けた樹美は、舌打ちだけを残してカルセドニアとミルイルに背中を向けた。

「仕方ねえ、今回はチーコに免じて許してやるよ。それより、今度はオレと一緒に風呂に入ろう。な、チーコ?」

 それだけ言い残し、すたすたと樹美は浴室から出ていく。その姿が見えなくなった途端、ミルイルは大きな息を吐き出しながら湯の中へざばりと座り込んでしまった。

「はぁぁぁぁぁぁ……正直、すっごく怖かった……」

 温かな湯の中にいても恐怖で体温が奪われるような感覚に、ミルイルは知らず自らの身体を抱き締める。

「ごめんね、カルセ。私の方が護衛なのに、結局カルセに助けられちゃった」

「いえ、私の方こそ……ミルイルさんが一緒にいてくれたからこそ、あの人の前に立ちはだかることができたんです」

 実際、カルセドニアにも樹美と対峙する際は恐怖を感じる。カルセドニアにはかなり甘い態度の樹美だが、彼女からは間違いなく狂気を感じるのだ。

 狂人には時として理屈など通用しない。そこが、樹美の最も恐ろしいところだろう。

 改めて湯の中で肩を寄せ合ったカルセドニアとミルイルは、恐怖で冷えた身体をゆっくりと温めた。




 樹美に関する事情を一通り聞き終えた辰巳は、ティーナの治療に使用する医薬品を買うためにアパートの外に出た。

 まだ無理のきかないティーナを休ませるという理由もあり、最寄りの薬局に向かってゆっくりと自転車を漕ぎながら、彼は先程知り得た樹美のことを頭の中で整理する。

 確かに彼女には同情する。自分だってもしもカルセドニアを失ったとしたら、狂気のあまり他のカルセドニアを求めてしまうかもしれない。それほど、「タツミ」という存在にとって「カルセドニア」は重要な存在なのだ。

 だけど、だからと言ってこのままでいいはずがない。辰巳のカルセドニアが待つ世界へ戻る、という意思は変わらない。

 そんなことを考えながら薬局で、医薬品とついでに昼食用の食糧も買い込みアパートへと戻った辰巳は、ティーナにできる限りの手当てをして昼食の準備をする。とは言っても、簡単なインスタント食品ばかりだが。

 朝食同様にティーナには消化のよいお粥と少しの果物、自分は適当なカップ麺を用意して食事を終える。

 そして、再びティーナが寝ている布団の横に腰を下ろして、今後のことを彼女に相談する。

「そうか……やはり、君はカルセくんの元へ帰るつもりなんだね?」

「はい。俺は……チーコの傍に戻りたいんです」

「このままこっちの世界で、ごく普通に暮らすというのも選択の一つだろうが……君にとって、それは既に選択肢でもなんでもないのだろうね」

 にっこりと微笑むティーナは、痛みを堪えながらも何とか上半身を起こす。

 身体を駆け抜ける激痛に顔を顰めつつ、それでもティーナは姿勢を正して辰巳へと向き直った。

「今回の件は、ボクの不手際以外のなにものでもない。君には本当に迷惑をかけてしまった。この通りだ」

 真剣な表情でそう告げたティーナは、そのまま辰巳に向かって深々と頭を下げた。

「お詫びにもならないかもしれないが、ボクにできうる限りのことをしたいと思う。何か希望はないかね?」

 ティーナのこの言葉に、辰巳は全く迷うことなく自らの希望を告げる。

「俺を……俺をチーコが待つ世界へと送ってください。ティーナさんならできるはずです」

 真剣な表情でそう言う辰巳。だが、ティーナはそれを了承しなかった。

「確かにこんな状態のボクでも、君をあちらの世界へと送ることは難しくはない。だが、それでは意味がないだろう?」

 仮にティーナが辰巳をカルセドニアのいる世界へと送ったとしても、再び樹美に送り返される可能性が高い。

 それどころか、今度は魔力もなく全く知らない世界へと送られてしまうことだって考えられるのだ。もしもそうなってしまったら……何も頼るもののない未知の世界で、辰巳は野垂れ死んでしまうかもしれない。

「そうならないためには、君自身が世界を越えられるようになるしかない。そして、君は外素だけに頼ってはいけないんだ」

 辰巳自身がティーナや樹美のように世界を越えられるようになり、同時に外素以外の魔力を得ることができれば、樹美と対決する際に不利になることもなくなるはずだ。

「世界を越える方はもう大丈夫なんじゃないかな? ボクの見たところ、君が可視範囲にしか転移できなかったのは、まだ君の実力が低かった頃の思い込みが主な原因だと思うんだ」

 辰巳の魔法の「源」というべきものは、そのイメージ力である。辰巳が魔法を使えるようになった初期の頃の、「可視範囲にしか転移できない」という思い込みが、今も彼の転移の妨げになっているのではないか、とティーナは言う。

「君の《瞬間転移》は、もうかなり上達している。今の君ならば可視範囲外の転移だろうと、世界を越えることだろうと難しくはないと思う。後は……君のカルセくんに対する想いこそが、君は彼女の元へと導くだろう。だから、問題は魔力の方だね」

 外素使いである辰巳にとって、自身の魔力がないという問題は以前から指摘されていた。

 師であるジュゼッペにもあれこれと相談したが、問題解決のための有効な手立てはなかなか見つからなかったのだ。

 向こうの世界にも、魔力を蓄えるような魔封具はあまり存在しないらしい。ジュゼッペも可能な限りの伝手を使って探してくれたのだが、結局見つからなかったのである。




 辰巳が「魔力を蓄えた魔封具」が手に入らなかった事情をティーナに説明すれば、彼女は何故か苦笑を浮かべていた。

「実をいうと『魔力を蓄えた魔封具』は、過去にあえて作らないようにしていた時代があってね」

「どういうことですか?」

 ティーナの言うことがよく理解できず、首を傾げる辰巳。そんな辰巳に、どうして「魔力を蓄えた魔封具」の数が少ないのかをティーナは説明する。

 魔法とは、発動に必要な量の魔力さえあれば誰でも使える技術である。実際、辰巳もその外素使いという稀有な才能にものを言わせて、強引に魔法を発動させたことがあるのだから。

 つまり、魔法を発動させるだけの魔力を持たない人間でも、「魔力を蓄えた魔封具」があれば魔法が使えてしまうのだ。

 そのことに危惧を抱いた過去の魔法使いたちは、自分たちの「希少性」を下げないために「魔力を蓄えた魔封具」の制作を自ら制限したのだ。

 そんな事情が現在まで──ややねじ曲がりながら──伝わっており、魔封具を作り出す〈錬〉の魔法使いたちにとって「魔力を蓄えた魔封具」を作ることは禁忌とされ、その製造法までもがほとんど遺失してしまっていた。

 今はごく一部の〈錬〉の流派の魔法使いだけに、細々とその製造法は伝わっているのだとティーナは言う。

 つまり、現在まで残っている「魔力を蓄えた魔封具」は、そのほとんどが過去に作られたものであり、長い時の流れの中で破損したり行方不明になったりして、今では極めて貴重な魔封具となっているのだ。

「それでジュゼッペさんがいくら探しても、なかなか『魔力を蓄えた魔封具』は見つからなかったわけですか」

「そういうわけなんだ。……ああ、悪いがボクが着ていたジャケットを取ってくれないか?」

 ティーナにそう言われ、辰巳は黙ってその言葉に従う。

 彼女が着ていたスリーピースはかなり血で汚れてしまっているので、クリーニングに出すわけにもいかずにハンガーに吊るしてあった。

 見るからにかなり高価であろうこのスリーピースも、もはや廃棄するしかないだろう。

「そのジャケットの内ポケットの中に入っているものを出してくれないかな」

 再びティーナの言葉に従った辰巳は、言われたようにジャケットの内ポケットを探り、その中に入っていたものを取り出した。

 それは、彼の掌ほどの大きさの、薄紅色をした鉱石のようだった。水晶のように透明で、澄んだ薄紅色のその鉱石は、貴石としてもかなり価値がありそうだ。

「それは封入石と呼ばれる特殊な鉱石でね。ボクたちが今いる世界でも、カルセくんたちがいる世界でもない、また別の世界で手に入れたものなんだよ」

 その世界では、人々はこの封入石と呼ばれる特殊な鉱石の中に精霊や魔獣などを封入し、様々な目的に使役しているという。

「確かこの国には、似たようなシステムのゲームがあったよね? あれに登場するボールのようなものだと思えばいい」

 そう言われて、辰巳も封入石がどのようなものか理解する。小学生ぐらいの頃、彼もまたそのゲームに熱中した時代があったのだ。

「それで、これをどうするんです?」

 封入石がどのようなものなのかは分かったが、それをどうするのかまで辰巳には理解できない。しかも、透明な封入石の中には何も入っていないと思われる。

「その石の中に、これを封入するのさ」

 ティーナが取り出して辰巳に見せたのは、先程彼女が捕えた樹美の《使い魔》──すなわち、〈魔〉が取り憑いた雀だった。




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