80話 「イベント開始」
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――『イベント中継場』稼働……
――『始まりの町』戦闘エリアに変更……
――転移門の機能停止……
――【深底海湖】【豊かな森】【アント廃坑】【初心者の草原】【ゴブリン草原】の移動制限……
――条件達成、街への侵入困難……
――条件達成、門の耐久値上昇……
――条件達成、モンスター総数減少……
――条件未達成、全モンスター変異……
――条件未達成、【豊かな森】【深底海湖】【アント廃坑】【ゴブリン草原】のエリアボス変異……
――条件達成、癒しの泉使用可……
――条件達成、『コエキ都市』からの援軍、到着まで後『14:59』……
――条件未達成、『水上都市マイス』『カンナ村』『カジバの街』からの援軍なし……
――条件達成、『暴走する黒き欲望』効果限定解除の薬完成、到着まで後『24:59』……
――条件未達成、黒幕の発見・討伐……
――大規模イベント『襲いかかる黒きモンスターの襲撃』開始!!
◆◇◆◇◆◇◆
大規模イベント『襲いかかる黒きモンスターの襲撃』
四方から攻めてくるモンスターから街を死守せよ!!
北門残り耐久値:1156/1200
東門残り耐久値:1200/1200
南門残り耐久値:1200/1200
西門残り耐久値:1032/1200
転移門残り耐久値:4000/4000
モンスター討伐数:--
勝利条件:エリアボスの討伐及び元凶の解決、全モンスターの殲滅
敗北条件:全ての門の陥落、転移門の破壊、プレイヤーの全滅
補足
・街は戦闘エリアになりました。なるべく街を破壊しないよう気を付けましょう。
・『始まりの町』の転移門は使用不可になりました。
・【豊かな森】にある『癒しの泉』又は『始まりの町』にある噴水の水を飲むとHP・MPが回復します。
・この騒動の元凶がいます。その元凶を発見し、倒しましょう。
・エリアボスが異常種に変異しました。ボスの存在によりモンスターの連携は強化されています。なるべく早く討伐しましょう。
・モンスターは全て異常種に変異しました。正気に戻すには薬が必要です。『コエキ都市』から来る馬車に薬が積まれています。馬車を死守しつつ『始まりの町』まで運びましょう。到着まで後『24:59』
・『コエキ都市』から援軍が来ます。到着まで後『14:59』
・イベントの貢献度によって報酬の質は変動します。頑張りましょう。
◆◇◆◇◆◇◆
イベントが開始と同時に、今までは散発的でバラバラだったモンスターたちが異常種に変異し、大群となって濁流の如く街を襲い始めた。
イベントの開始に合わせて、シオン率いる6人は、街の外で異常種相手に戦闘を始めていた。
「UKKII! 」
尻尾に大きな木の実を撒きつけた黒色の猿が、他のモンスターを相手取っていたランの脇をするりとすり抜けた。
「あっ、一体抜けたよ! 」
「私がやります! 」
「お願い! 」
鹿と狼の異常種を相手にしていたランは、自分の脇を抜けてく猿には気付いたが、無理せず後方にいるフーに任せた。
「いきます!《多連脚》」
自らに《疾脚》と《剛脚》を掛けて一時的に速度と威力を増強していたフーの蹴りが、向かってきた猿に連続で当たった。しかし、流石は異常種か、フーの攻撃は猿のHPを6割しか削れず、即座に立ち直った猿は、フーへと飛びかかった。
「甘いですっ」
反撃を予想していたフーは、飛びかかってきた猿を躱すと、猿の後ろ襟首の黒色の剛毛を掴んで、そのまま地面に叩きつけた。
「UGIッ」
「ふんっ! 《震脚》」
堪らず悲鳴を漏らした猿の腹へフーは足を乗せて《震脚》を発動させた。猿のお腹を中心に波紋状に衝撃が走り、体に衝撃を直接撃ち込まれた猿は身動きひとつ取れなくなった。
「UGI……KI……」
「止めお願いお姉ちゃん! 」
身動きが取れなくなった猿の尻尾をフーは、素早く掴んでリンの方へと勢いよく投げた。
「応っ!! 」
そう叫ぶや否や、リンは、戦っていた狼に止めを刺して、返す刀で飛んできた猿を斬り裂いた。猿は、悲鳴を上げる間もなく消滅した。
「流石。フーさん手馴れてるな」
その戦いの様子を見ていたユリは、感嘆の声を上げた。
自分と似た戦闘スタイルのフーは、ユリにとっていい参考になるので、ユリは自然とフーの戦う様子を目で追っていた。反撃を許るす間もなく倒して見せたその手際の良さにユリは、フーに憧れの眼差しを向けた。
「震脚は、あんな使い方も出来るんだな……」
特に《震脚》を使った体の自由を奪う攻撃は、ユリにとってとても参考になった。
「皆さん、βの時は最前線で戦っていたプレイヤーの方たちですから戦闘経験は豊富ですね。それだけスキルやアーツを使った戦い方も多彩ですよ」
「アーツの応用かぁ……今の俺はそんな段階じゃないな」
つい先ほどアーツが使い方を知ったばかりのユリは、自嘲気味に笑った。
「ユリさんも経験を積めばフーさんみたいなことができるようになりますよ。……というより、今の時点でも十分出来てると思いますけどね」
モンスターを投擲武器にして他のモンスターに投げつけたり、モンスターの背に乗って首を絞めながら蹴ったりなど、ユリの突拍子もない戦いをアルは何度か目にしていた。それがスキルをうまいこと活用した結果なのを、見ていたアルにはわかった。
だからだろうか、アルにはユリがイロモノ路線を一直線に行く未来しか想像できなかった。
(ユリさん、今度はどんな面白いことをしてくれるんでしょうね)
そんなことを考えていたアルは、自分目がけて飛んできた飛来物に反応できなかった。
――カシャーン
「あいたっ!? 」
アルの側頭部に当たったポーションは、当たった衝撃で砕けてその中身をアルに浴びせた。多少減っていたアルのHPが回復した。
「他のエリアに行く、早く来て」
投げてきた方を見れば、シオンが無表情で手招きしていた。
周囲を見て回れば、既に周りに異常種の姿は無く、他のメンバーも次の場所へと移動を始めていた。
「あ、はい。わかりましたっ」
アルは頭を擦りながら先に行くシオン達に慌ててついて行った。
シオンたちは、まだ魔術師の手がかりを見つけられていなかった。
14/11/17 18/06/18
改稿しました。




