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アルステナの箱庭~仮想世界で自由に~  作者: 神楽 弓楽
一章 始まりの4日間
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72話 「派生スキル」


 それからしばらくクリスを堪能して満足した2人は、クリスをユリに返した。そして、アルが話を戻してユリに質問してきた。


「ところで、ユリさん。【調教】を取ってないって言ってましたが取っていないのは何故ですか? もしかして、僕と一緒で――」


「いや、そんなスキルを知らなかっただけだぞ」


「そうですか……」


 嬉しそうに期待を込めた目でユリを見たアルだったが、ユリにばっさりと否定された途端に残念そうな表情になった。


「何でそこまで残念そうにするんだ? 」


「いえ、何でもないです……でも、【調教】を取った方がテイムモンスターの強化や、新たにモンスターをテイムしやすくなるらしいですけど、ユリさんは取る気はないのですか? 」


 クリスを強化できると聞いて、ユリはそのスキルに興味がわいた。


「強化できるのか。それ、良さそうだな。ちょっと確認してみる」


 虚空に指を走らせて仮想ウィンドウを開いたユリは、【調教】がどういうスキルなのかを確認するためにスキル取得欄を表示した。


「うわ……いっぱい並んでるな」


 膨大な数の取得可能なスキルが無差別に画面に表示されたのを見たユリは、この中から【調教】を探すのかと思ってげんなりとする。


「上のここ(項目)で分類、できる。【調教】は『特殊系』」


 横からその画面を覗いたシオンがユリにアドバイスをする。


「おっ、これで分類できるのか。ありがとうシオン。――ん? この『おすすめ』って何だ? 」


 シオンに言われて分類方法に気付いたユリは、ふと一番右端の『おすすめ』と書かれた項目に興味を抱いた。


「ああ、それですか? それは、その人の今までの行動から算出したその人にあったおすすめスキルですよ。『おすすめ』に表示されるスキルのSP消費量は、通常より少ないですから『おすすめ』の中から選ぶプレイヤーも多いです。因みに、SP消費が少ないのは、そのスキルにそった行動を取ってきたからだそうですよ」


「どういうことだ? もう少し具体的に言ってもらえるか? 」


 アルの説明が今一ピンと来なかったユリは、聞き返した。


「じゃあ、僕を例にして話しますが、僕のスキル取得欄の『おすすめ』は、【鎧】【盾】【剣】【受け流し】【根性】の5つあります。で、その中の【盾】を例に出すと、通常【盾】のSP消費量は10。で、普段盾を使っている僕が【盾】を取得しようとするとSP消費量は5。つまり、【盾】を取得する前に盾を使って行動していると【盾】のSP消費量は少なくなるってことです。で、このSP消費量は盾を使って行動すればする程減っていきます。

 ちなみにですが、最終的にはその消費量は0になって自動的にスキルが取得されます。これを『スキルを習得した』と区別して呼ばれています。僕は習得によるスキルの取得を目標にしているので、このおすすめは、僕にとってはその目安となってます。何か分からないことはありますか? 」


「あー、まぁ大体のことは分かったかな。ありがとうアル」


 アルの説明を聞いたユリは、興味本位で『おすすめ』の項目をタップして表示させた。



『おすすめ』


・【服】

・【籠手】

・【脛当】

・【槍】

・【剣】

・【調教】

・【釣り】

・【騎乗】

・【鎧】


「お? 意外とあるな。【調教】もある……ん?【騎乗】、【鎧】? 何でだ? 騎乗も鎧を着た記憶はないんだが……」


『おすすめ』にあるほとんどのスキルには心当たりがあったユリだったが、【騎乗】や【鎧】には心当たりがなかった。


「鎖帷子は、【鎧】の効果対象」


「あ、そうだったのか。それは知らなかった。じゃあ【騎乗】は何で? 」


「知らない」


 すぐにユリの疑問の一つを解いてくれたシオンにユリは、期待を込めて【騎乗】の原因も聞いてみたが、流石に無茶ぶりだったようで、シオンは首を左右に振った。


「まっ、いいか。取りあえず【調教】見てみるか」


【調教】

モンスターと特別な繋がりができやすくなる。

絆ができたモンスターには指示を出して共に戦うことができる。


消費SP8


「8か……えっと俺の持ってるSPは28。……微妙だな。まっ、いっか」


 思ったより持ちSPが少ない為に少し悩んだユリだが、他に取りたいスキルもすぐに思いつかなかったユリは【調教】を取得した。


「あ、取ったんですか。因みにユリさんは、スキルを何個持ってるんですか? 」


シオンとは反対側からユリのスキル欄を覗くアルが尋ねた。


「今ので8個目だな」


「じゃあ、まだセットできますね。セットスキルの最大は15ですし」


「結構多いんだな」


 思っていたよりもスキルセットの最大数が多いことにユリは少々驚いていたが、多いからなんだという話なのでそれ以上話を続けることはなく、ユリはスキル欄に戻って控えに表示されている【調教】をセットした。




スキル

【拳LV41】【☆蹴LV50】【★投LV30】【関節LV23】

【調理LV6】【泳ぎLV32】【発見LV27】【調教Lv1】


控え

    なし


称号

【無謀な拳闘家】【ラビットキラー】【見習い料理人】【見習いテイムマスター】【漁師】



「よしっと――ぅん? 何だこれ? 」


 【調教】がセットできたのを確認したユリは、ふと他のスキルを見て、【蹴】と【投】スキルの前に星マークついていることに気付く。

 何となくその☆がついている【蹴】スキルをタップ(押す)してみると目の前に一つの仮想ウィンドウが出てきた。


『このスキルは上限に達しました。派生スキル【剛脚】又は【疾脚】に昇格することができます。

【剛脚】/【疾脚】/N 』


「あっ! 派生スキルか! 」


 このウィンドウを見てユリの疑問は氷解した。


「それにしても【剛脚】に【疾脚】か……うーん悩むな」


【剛脚】

剛よく柔を断つ。

強力な脚力によって繰り出す攻撃は岩をも砕く。


【疾脚】

疾風の如く地を駆ける強靭な足。

素早い動きで敵を翻弄する。


「出来れば、どっちも欲しい……」


 今のユリにとって、攻撃力アップも回避率アップもどちらも欲しい悩ましい選択で、思わず口に出して考え込む。


「……なら2つ取ればいい」


 横で聞いていたシオンは、ボソリと零す。


「いや、1つしか選べないんだけど」


 それをユリは困ったように答える。


「いや、シオンさんが正しいですよ。悩むなら2つとも取れますよ。選択して1つ。スキル取得欄からもう1つ取れますから。ちょっとSP消費量は高くなりますけどね」


 しかし、アルがシオンの言葉を補足するように横から答えた。


「嘘っ!? マジかっ! じゃあ取る! 」


 全く思いつかなかったユリは、歓喜にも似た驚きの声を上げて、【剛脚】を手に入れた。

 そして、すぐにスキル取得欄を表示させ、新たに増えている『派生スキル』という項目を表示させて【疾脚】があることを確認した。消費SPは15と他と比べて高かったがユリは全く躊躇せずに取得した。


スキル

【拳LV41】【剛脚Lv1】【★投LV30】【関節LV23】

【調理LV6】【泳ぎLV32】【発見LV27】【調教Lv1】


控え

【脚Lv--】【疾脚Lv1】


称号

【無謀な拳闘家】【ラビットキラー】【見習い料理人】【見習いテイムマスター】【漁師】


「あれ? 【脚】が残ってる……というか色が他と違って灰色になってるな。何だこれ? 」


「ああ。気になりますよね。灰色になったスキルはセットできなくなるという制限がかかりますが……そのスキルのアーツとかは問題なく使用できるんですよね。何で残るかはまだよく分かってないんですよね」


「ふ~ん。仕様か。まぁいいや。じゃ、次は【投】だな」


『このスキルは上限に達しました。派生スキル【投擲】に昇格させることができます。Y/N 』


 ユリは【投】を【投擲】に昇格させた。さっきとは違い選択肢が一つしかなかったためユリは特に悩むことはなかった。


スキル

【拳LV41】【剛脚Lv1】【投擲LV1】【関節LV23】

【調理LV6】【泳ぎLV32】【発見LV27】【調教Lv1】【疾脚Lv1】


控え

【脚Lv--】【投Lv--】


称号

【無謀な拳闘家】【ラビットキラー】【見習い料理人】【見習いテイムマスター】【漁師】



【疾脚】もセットしたユリは満足そうに頷く。


「よし。これでよし。どうやら、☆と★で派生スキルの数を表しているみたいだな」


「ユリさん鋭いですね~。その通りですよ。☆だと派生スキルの数が2つ以上。★だと派生スキルが1つです」


 どうやらユリの気付きは的外れではなかったようで、アルがユリの推論を肯定してくれた。


 そして、アルはユリの前に展開している仮想ウィンドウを横から覗いてポツリと感想を零した。


「ユリさんは、超近接タイプですか。――あ、すみません。本当なら見る前に聞くべきなんですが、つい横からスキル見ちゃいました。すみません」


 すぐに自分の失態に気付いたアルはユリに謝罪する。


「いや、別に全然いいけど」


 特に隠す気もなかったユリは、気にした風もなく許す。


「いえ、最低限の礼儀は必要でした。すみません。――しかし、ランさんは近接。シオンさんも近接。僕も近接。全員前衛ばかりで、攻撃特化ですね。シオンさんの言う残りの2人が遠距離タイプだとバランスが取れそう何ですが―――そう言えばもう9時過ぎてますね。シオンさんまだその2人はログインしてないんですか? 後ランさんも」


 話している途中で、ふとメニューを操作して時間を確認したアルは、未だくる気配のない新たな2人を聞いてみた。


「あ……忘れてた」


「おい」


 アルに言われて思い出した様子のシオンに、ユリは思わず突っ込みを入れた。


「……もう来てた。すぐに電話する。ランはまだ来てない」


 フレンド欄を開いて確認したらしいシオンは、その新たな2人が既にログインしていることをユリたちに知らせた。確認したシオンは、すぐにその内の1人にフレンド通信を始めた。


「もしもし……ごめん。気付くの遅れた。……ん。……嫌……したら刺す。……ん。……西門の近く。……ん。待ってる。……しつこい」


 通話を終えたシオンは、無言でユリの背後に回ると、両脇に差した2本の小刀を鞘から抜いて静かに構えた。


「お、おい。急にどうした? 」


 急にシオンが何かから身を守るように自分を盾にし出したのに戸惑いを隠せないユリは、既に警戒態勢に入っているシオンに尋ねる。


「もうすぐ来るフーは、嫌いではない。でも、時折対応に困ることをしてくる。自己防衛……のようなもの。こうしてればしてこない」


 今一、今の状況が分からなかったユリだが、昔に自分がある人に対して今のシオンと似たことをしたことがあったので、どう答えたらいいか分からず、ひきつった笑みを浮かべた。


「そ、そうか。何もしてこないといいな」


「ん」


 そして、それから1分後


「天使ちゃーーーーーん♪ 」


 甲高い女性特有の声と共に、西大通りを爆走してくる元凶(少女)がやってきた。


さりげなく新たに獲得している称号


【漁師】

水生系モンスターと戦闘時、攻撃力1.05倍

水中戦闘時、移動速度微上昇、攻撃力1.05倍


水生系モンスター累計500体討伐


ほとんど釣りモブと言ってもいい湖の水面付近の魚型モンスターも水生系に分類されカウントされている。


【蹴】と【拳】のカンストが今一分かりにくいと思ったので、表示の仕方を変更しました。


感想待ってます。


14/10/22 15/06/13

改稿しました。

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