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アルステナの箱庭~仮想世界で自由に~  作者: 神楽 弓楽
一章 始まりの4日間
51/138

50話 「イベント発生」






ユリが廃墟から出た頃、ログイン中の全プレイヤーの視界に赤いウィンドウが表示された。





◆◇◆◇◆◇◆




大規模イベント『襲いかかる黒きモンスターの襲撃』


『始まりの街』周辺に大規模のモンスターの集団が攻めてきた。

襲いかかるモンスターから北門、西門、東門、南門、転移門を死守せよ!



勝利条件:全てのモンスターの殲滅、モンスターの敗走


敗北条件:全ての門の陥落、転移門の破壊、プレイヤーの全滅


参加条件:今から『23:58』分後までに『始まりの街』、【初心者の草原】、【ゴブリンの草原】、【豊かな森】、【深底海湖】、【アント廃坑】いずれかにいるプレイヤーのみ参加できます。


補足:

イベント中『始まりの街』とその周辺エリアは新規のプレイヤーが出入り不可になります。

イベント開始と同時に『始まりの町』は、非戦闘エリアから一時的に戦闘エリアに変わります。

イベント参加中に戦闘不能になった場合、転移される場所は『イベント中継場』となります。再び、イベントに参加することは不可能です。

また、参加されないプレイヤーは、『始まりの町』以外の街の転移門から『イベント中継場』に行くことが可能です。



◆◇◆◇◆◇◆



 ウィンドウを見たプレイヤーの多くは、突然に発生した大規模イベントに驚きと歓喜の声を上げた。


 『コエキ都市』にいた多くのプレイヤー達は『始まりの町』に引き返す為に、装備を整えに店に走ったり、仲間と連絡を取り始めたりと忙しなく動き始めた。


 『始まりの町』にいたプレイヤー達は、スキル上げの為に戦闘エリアにでたり、装備を整えるために街の中を忙しく移動するプレイヤーが多くみられるようになった。


 衛兵や一部のNPCもプレイヤーと同時期にモンスターの襲撃を知ったのか慌ただしく対処に追われていた。


 このイベントがゲーム内のプレイヤーに告知されたほぼ同時刻にSMOのHP(ホームページ)にも最新のお知らせとしてアップされ、ログインしていなかったプレイヤーも知ることとなった。



 正式稼働から4日目にして初の大規模イベント。


 攻略者、初心者、元βテスター含めて、ほとんどのプレイヤーがイベントに参加をする為に動き始めたのだった。





◆◇◆◇◆◇◆




――『コエキ都市』冒険者互助組合支部


「なんじゃとっ!? どういうことじゃ! 」


 事務員から報告に老人は部屋に響き渡る程の大声を出して驚く。


「は、はい。数多くの冒険者の報告から考えられる事態は、モンスターの襲撃です。ま、また報告の中には、そのモンスターの集団内に体毛が黒い『異常種』のモンスターが複数確認されているという報告もあります」


 焦った様子の事務員は早口で、老人、組合の支部長ガユンにモンスターの襲撃を報告した。


「バカな……あれもいると言うのか」


 最近、組合で問題になっている『異常種』も多数確認されているという報告にガユンは俯き頭を抱える。


「街は……襲われると予想される街はどこじゃ」


「は、はい。冒険者の報告をまとめますと、すべてのモンスターは『始まりの町』の街へ向けて進行しているようです。何組かの冒険者が交戦したらしいですが、撤退するとモンスターは冒険者を追撃せず、すぐに群れに戻り進行を続けたそうです」


「始まりの町、か……」


頭を抱えたままガユンは、絞り出すような声を出す。





「ん、おいしい」


 ガユンの対面に座っていたシオンは、こんな状況にも関わらず全く表情を変えずにチビチビと紅茶を飲んでいた。


 シオンを放置してガユンは頭をフル回転させて考える。そして、ガユンは事務員の報告に一つの疑問を抱く。


「戦闘をしたにも関わらず、モンスターは追撃をしてこなかった? ……交戦したモンスターは何だったのじゃ? 」


「報告によりますと、剣兎(ソードラビット)、ゴブリン、森狼だったそうです」


 逃げれば追ってこないモンスターは存在するが、事務員が上げたモンスターたちはどれも好戦的な性格をしていて、逃げても執拗に追ってくるモンスターだった。


「やはりこれは普通の襲撃ではないな。……おそらくモンスターを操っている者がいる。おい、そのような報告はなかったか」


「いえ、そのような報告は現在ありません」


「早急にそれを調べるんじゃ! その者がモンスターを操っているのならその中に混じっている『異常種』とも何か関わりがあるはずじゃ! 急ぐんじゃ!! 」


「は、はい!」


 ガユンが大声で指示を出すと、事務員の男性は部屋を飛び出していった。



「ふぅー……どうしたものか……」


 事務員がいなくなるとガユンは、力が抜けたようにソファに座り込み、重いため息をついた。



――カチャ……


 チビチビと飲んでいた紅茶を飲み終えたシオンが、カップを置く音が静まり返った部屋に響いた。


 その音でガユンは、完全に忘れていたシオンの存在を思い出した。


「おお、そうじゃった。ネームレス、よくぞ依頼を無事に果たしてくれた。お主が盗ってきたもの(・・・・・・・)の情報が確かならあの者も終わりじゃ。お主が犯罪者となっている件は、こちらが手を回しておく。気にせず街を出歩けばよい。それと、森で暴れていた森熊の異常種も被害が出る前に討伐してくれたこと、感謝する」


 ガユンがシオンのことを『ネームレス』と呼ぶのは、初対面の時にシオンが『名前、決めてない。好きに呼んで』と答えたのに由来する。


「そう。で、新しい依頼はある? 」


「本来なら最近、出没する『異常種』の調査を頼みたいところじゃったが、想定外のことが起きた。ネームレスにはできれば、始まりの町でモンスターの襲撃に急ぎ備えて欲しい」


「元からそのつもり」


「そうか。ならば、一つ依頼を頼めるか? 」


「なに? 」


「モンスターを裏から操っている存在の調査じゃ。危険が伴うと思われるが頼まれてもらえるか? 」


「……わかった」


「ならば、よろしく頼む」


 ガユンがそう言うと、シオンはコクンと小さく頷いた。


「それじゃ……」


 ガユンから依頼を受けたシオンは、そう言って音もなく部屋から出て行った。





「……以前から異変が起きている報告は受けていた。じゃが、始まりの町付近の調査は、剣兎の異常種のせいで難航してた。やはり、始まりの町には支部を再設立させなければのう……」


 独白するガユンは、椅子から立ち上がった。


「こうしてはおれん。儂もここの支部長として動かなければならんな」


 大騒ぎになっているだろう一階に自らも対応に回るためにガユンは部屋を出た。


ユリの偶然によるイベント発生の影響で、勝利条件があいまいになっていたり、情報が不足していたりしています。本来、クエストを進めていくうちに分かる情報が途中のためです。



14/8/19 18/03/30

改稿しました。

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