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アルステナの箱庭~仮想世界で自由に~  作者: 神楽 弓楽
一章 始まりの4日間
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36話 「初フレンドはルカ」


――『始まりの町』東大通り


「うーん。そう言えば、その忍び娘ちゃん? とやらがどこにいるのか私たちには分からないわね」


「そうですね……。こういう時、フレンド登録をしておけば連絡がつけれるんですが、私はまだ無音(むおん)ちゃんとフレンド登録してないので、フレンド通信が使えないんですよね」


 噴水広場から東門へと続く東大通りをルカ、ルルル、ユリの3人が歩いていた。

 ルカは、ユリの腕に自分の腕を絡めてユリを引っ張っていた。ユリはもう諦めたのか、されるがままだった。



「使えないなら仕方ないわ。取り敢えず、その()が居そうな場所を探さないと……」



 その時、歩きながら話していたルカは「あっ! 」と、突然大きな声を上げて立ち止まった。耳元で響いた突然の大声にユリはビクッと肩を跳ね上げさせて驚いた。




「ルカさん、どうかしたんですか? 」


「忘れてた……忘れてたわ! すごい重要なこと! 」


「え? なんですかそれは? 」


 ルカにとって何か衝撃的なことに気付いたようで、ルルルの質問に答えずルカは、ユリの方に勢いよく振り返った。


 絡めていた腕を解いてルカは、ユリの手を両手でがしっと握んだ。


 そして、素早い動きで目の前に表示されたウィンドウを操作し、何かを押す仕草をするとルカは、よく響く綺麗な声でユリに言った。


「ユリちゃんフレンド登録しましょ!! 」


 その言葉とともにユリの目の前に一つのウィンドウが表示された。


『RUKAからフレンド登録を申し込まれました。許可しますか? Y/N』


「「え? 」」


 ユリは突然目の前に現れたウィンドウに、ルルルは自分の予想の斜め上をいく展開に、思わず疑問形で声を漏らしてしまった。




「……これ、どうすればいいの? 」


「YESのボタンを押せばいいのよ! ほら早く早く」


「あ、ああ」


 ユリは、ルカに急かされてYESを押した。


『RUKAがフレンド登録されました。新しく「フレンド」の項目が追加されました』


「これで良し」


 ちょっとついていけてないユリとルルルを置いて、ルカはユリとフレンド登録できたことを1人で満足そうに微笑んだ。


「フレンド登録してなかったんですか……? 」


「フフフ、いろいろあってね。忘れてたのよ。私がユリちゃんの最初のフレンドよ」


 ルルルにルカは嬉しそうに答えた。ユリの一番最初のフレンドが自分というのがよっぽど嬉しいことなのだろう。


「……ルカ姉、フレンド登録って何?」


 喜んでいるルカにいまいち状況が分かっていないユリが尋ねた。『フレンド』という言葉から何となく意味は伝わってくるが、今までユリのしてきたゲームにはそんなものはなかった。


「ああ、ユリちゃんはフレンド登録知らなかったのね。いいわ。私が教えてあげるわ! フレンド登録は、登録したプレイヤー同士で連絡ができる『フレンド通信』っていう機能を使用する為にフレンドリストに親しくなったプレイヤー同士で登録することよ。そうすることで、そのプレイヤーがログインしていればいつでもフレンド通信が出来るようになるし、フレンド通信がくるようになるわ。つまり登録しておけば、いつでもどこでもユリちゃんと連絡できるようになったってことよ。『フレンド』の利点はそれ以外にもあって―――」


 フレンド機能とはつまり携帯電話みたいなもので、留守電機能もあるので戦闘中にかかってきてもかけなおすことができる便利機能の一つだ。

 フレンド登録の仕方は、「プレイヤー」と書かれた項目の中にある「フレンド登録数」を押すと現在登録しているプレイヤー名と一番下に「フレンド登録を申し込む」と記載されたのが表示される。相手のプレイヤーの一部分に触った状態で、それを押せばそのプレイヤーにフレンド登録を申し込むことができる。一般的にお互いが握手をしてすることが多い。


 フレンド登録は、チュートリアルでNPC相手に実際にやるのだが、その際に『フレンド』がメニューの一覧に追加されるので、そこからフレンド登録の申し込みが簡単に出来ちゃうので、チュートリアルを受けた者ならば誰でも「プレイヤー」項目からのフレンド登録の仕方は知っていたが、実際に使う人はほとんどいなかった。


『テイムモンスター』という項目と同様に『フレンド』項目も初めはメニューの一覧に表示されていない理由は、謎だった。



「――と言うことよ。ユリちゃん分かった? 」


「うん。大体分かった」


ルカの説明にユリは納得したように頷いた。


「ユリさん、チュートリアルを受けずにやってたんですね」


 横で聞いていたルルルは少し驚いたような表情でユリを見る。そんな人がいたのか、というような驚きだった。それぐらい正式稼働からの人がチュートリアルを受けていないことは珍しかった。


「あ、ついでにユリさん、私とも登録しましょう」


 軽い調子でルルルがユリに手を差し出してきたので、ユリはその手に自分の手を重ねて軽く握手をした。ルルルが慣れた手つきでウィンドゥを操作してユリにフレンド登録を申し込む。ユリがそれを受けて、ユリのフレンドリストに新たにRRRが登録された。


「よし、ルルルとも登録が出来たみたいだし、探索を再開しましょう! 」


「なんでルカ姉はそんなに張り切ってるの? また今度でいいじゃん」


「まぁまぁユリさん。そんなこと言わずに一緒に探してくださいよぉ。お願いします。捕まっちゃったら私の自信作が消滅しちゃうんです。 それだけは()なんです。どうかお願いします。それに無音さんがPKした理由も気になります。……あの子そんなプレイはしない子でしたから。きっと何か理由があるんです」


 以前から無音(忍び娘)のことを知っているというルルルが不満そうなユリに頼み込むようにお願いする。


「あーまぁ仕方ないなぁ、乗りかかった船だし。でもまぁ、あの忍び姿なら納得だな。正に暗殺者って感じで」


 ユリが自分のことを棚に上げてその少女の見た印象の感想を言う。


「いやいや、格好って……ユリさんも色違いですけど同じ格好なの分かってます? 」


 ルルルはユリの発言に突っ込みを入れた。


「ほら早くユリちゃん行くわよ。―――ん? ちょっと待ってランちゃんから通話が入ったわ」


 再びユリを引っ張って歩きだそうとしたルカだが、ランからフレンド通信がきた。

 なんだろう? と思いつつルカがランの通信を許可した。


『あ、ルカ姉? 今、カッコ可愛い忍びちゃんを森で捕獲したんだけど見に来ない!? 』


 それはランからの無音捕獲の知らせだった。




14/8/14 17/07/08

改稿しました。

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