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はじめまして、ようやく会えましたね  作者: あかね


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なぜ彼は渋いおじさまに変貌したのか


「まあ、素敵」


 ふにふにしてる。無限にフニフニできそうな触り心地のお腹があったわ。

 キュートな新しい私のお腹。


「それにしても、ここはどこなのかしら」


 いつもと同じように夜、眠りについたはずなのだけど。そういえば、ちょっとだけいつもと違うこともしたのよね。


 手首についている古いブレスレットは占い師が、あなたの運命だと渡してくれたそれを付けた日。


「確かに運命ね」


 体を入れ替えるなんて、奇跡でも起きない限りないわ!

 優雅にはほど遠い、けれど確かに手入れされた体はフニフニしていたの。赤ちゃんみたいに柔らかい体に不満はなかった。

 男になるというのは、すこしわくわくするくらいよ。


 それにしても。元の私の体はどうなってしまったのかしら。

 そして、この体の持ち主の中身って?


 内装を見る限り裕福ではあるようなの。しっとりと落ち着いたあめ色の家具が配置され、メイドもちゃんと朝の仕事をこなしていった。

 いつもと様子が違うと気がつくと医者の手配が必要かと聞かれたし、朝食の用意もテーブルにしていった。

 心配そうに見つめる目に負けて、お医者さんを呼んでもらったけど正しかったかしら。


「なになに? チェス、変だって聞いたけど……」


 食事をとっている間に、お医者様が来てしまったわ。どうしようか困っている間に、彼は首をかしげていたの。


「え、どこで中身とっかえたの?」


「わかりますの?」


 どうしてかしら、お医者さまはお腹を抱えてふるえているのですけど。


「どこかお加減でも悪いのかしら?」


「だ、だいじょうぶ、だから、ちょ、ちょっと黙ろうか」


 ふるふる震える男性をどうすればいいのかわからず、そのまま黙っていたのですけど。なにげに失礼じゃございません?


「その見た目でお嬢様言葉の破壊力……。

 鏡見てないかと思うけど、40間近のおっさんだよ。しかもぷよんぷよんの! 禿げ上がってきてる」


「このムニムニは可愛らしいじゃありませんか」


「か、かわいらし……。ダメだ笑い死にする」


「まぁ」


 失礼ね!

 彼が黙るまで朝食を再開することにしたわ。ちょうどよく作られたスクランブルエッグなんて何年ぶりかしら。火で炒めるのではなく、お湯で温めて作るんですって。お湯で作るなんて魔法かしらと思ったのだけど、シェフは笑っていたわ。


 皮の硬いパンもバターをたっぷりつければ、贅沢な品に早変わり。ミルク感と強めの塩気がおいしいわね。

 付け合わせのベイクドビーンズもおいしい。いつもは、おいしくないなと思って食べるのにトマトの酸味がきつくなくて程よく甘い。


「……食べ方見てると貴族のお嬢さんって感じだけどあってる?」


「違いますわ。既婚ですの」


「へ?」


「夫がいます。でも、その夫は愛人に夢中ですけど」


 本当に、残念ですけど。愛人に他の女の名を名乗らせて身代わりのつもりのようですけど、似てはいるものの本人とは違うことくらいバレているでしょうに。

 頭が悪いとしか言いようがありませんわ。社交界で笑われているのにも気づかないなんて幸せですわね。


「そう。お嬢さん、名前は?」


「ユーリカと申します。ところでこの方は」


「チェスター。ベレッド家の長男にして、放蕩のチェスター、ちなみに未婚。彼女いない歴年齢だろうと思う三十八歳。家は十個下の弟が継ぐ予定」


「色々ございますのね」


「後妻がやり手で、廃嫡されちゃった。とか言ってたけど、面倒だから放棄したんだと思う。当主も骨抜きにする後妻業の女の相手なんてしてらんね、ってのはわかる」


「それにしては、慕われておりません?」


「弟も後妻も性格きつくて、チェスのようなまぁるいのは癒しみたいよ。なんやかんやで、責められている使用人にフォローしたり慰めたりとか。

 でも、モテない」


 ちょいちょい下げてまいりますわね? 他人事ながら腹が立ってきましたわ。


「そういう反応、本人がいるうちに見たかったんだよねぇ。いらっともしないんだわ。あいつ。へらりと笑ってそうだねぇって。ほんとさー、困っちゃう。

 で、覚えていること洗いざらいしゃべってくれる?」


 お医者様は尋問のプロでした。怪しい占い師のあたりで頭を抱えてましたけど。


「じゃあ、がんばって、本人が来るまでちゃんとしよう!」


「はい?」


「いやぁ、中身がいない間にダイエットしようぜ! 健康に悪い」


「い、いやですわっ! この魅惑のお腹は死守しますの!」


「ふざけんな、寿命伸ばすほうがだいじだろうがっ!」


「ぷにぷに赤ちゃんでかわいいですのっ!」


「そこをなんとかっ!」


 ……ぜはぜはと言い合う私たちは大層滑稽だったでしょう。幸いにして、人払いしていたので誰も来なかったのですけど。


「よぉく、わかった。三日だ」


「なにが三日ですの?」


「三日たてば俺の言ったことがわかる」


 ふふんと得意げに言って、お医者様、ハイランド様は去っていきました。どういうことですの?


 このままでも大丈夫、とおもったのですけど。

 現実的には、すぐに息切れし疲れやすいからだには困惑した。あと重たい。くっと涙を呑んでハイランド様の提案を受け入れたのは予告通り三日後のことでした。

 チェスター様、さすがにこれは体に悪いですわよ……。


 それから一か月、バランスの良い食事、それから運動と規則正しい生活を心がけて行くことになりました。

 お仕事のほうは、しばらくお休みということになりました。残念ですけど、私にはできることはなさそうなので、他の人に振れるものはすべてお任せしてしまいます。

 なぜか、部下の方々はほっとしているようなのです。

 この機会に休暇でもと勧められる始末。働きすぎなのですと力説されるに至って、ようやく理解しました。

 ワーカーホリックなのですね……。


 本当にチェスター様、早死にしますわよ。


 理由はよくわからないですけど、お体を借りている以上、健康に! そして、イケメンと言わせて見せますわ!


 ハイランド様にはよくわからない闘志といわれましたけれど、構いません。だって、楽しいんですもの!


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