第6話 小学生じゃあるまいし
にじファンについてのビックリな告知がありました
まさかにじファン自体が無くなるとは……
二次小説の作者様たちには移転などで続けて欲しいですが、各々のモチベーション次第なのだろうと考えると好きな作品全てが続くわけではないのだろうなと思います
竜輝「好きな作品の最後を考えると悲しい」
冬菜「途中で終わっちゃうって、悲しいよね」
二次小説を書こうかなと思っていましたが、こういうのを目の当たりにすると書けなくなりますね
しんみりしちゃいましたが、本編どうぞ
昼食を済ませた2人だったが別に午後の予定を決めておいたりはしなかったので何となく店で世間話に興じていた。冬菜が話題を振って竜輝が応えるだけ、というわけでもなく冬菜がどんな本を読むか、最近面白そうな本はないかと竜輝が話題を振ることもあった。
冬菜と師弟関係を結んでから竜輝はそれなりの社交性を身に付けたので傍から見れば特に問題のある少年には見えないが、直に話している冬菜には少し物足りない部分が見えていた。
まだまだ竜輝には相手が今の話題に対してどれだけ喰い付いているかが分からないのだ。ちなみに冬菜は自分が読む本を人に話すのは好きではない。自分が好きなものは自分だけの中に留めておきたいのだ。他者にその作品が好きだからと気を遣われるのは苦手だった。
「竜輝君も大分自然に話せるようになったね」
「ありがとうございます。まだ、変だなと思うところもあるんですけどね」
「そうなの?」
「後になってみると、ですけどね」
冬菜が思っている以上に竜輝は鋭かったようで教育のし甲斐があると嬉しくなった冬菜だったが、自分のような素人がこれ以上教えるなんて無理だと判断していた。ただ話す機会を増やすことで自然と身に付けることを期待していただけなので冬菜にとっては今の竜輝でも充分だったりする。
駅前の人気ファーストフード店ということもあり昼時に何も注文していない客からはかなり迷惑そうな表情で見られる。トレーを持って立ち尽くす人を見かけたので2人は店を出ることにした。
「もう1度、図書館に行っても良いかな?」
「え……じゃあ行きましょう、か?」
冬菜の提案に戸惑った竜輝だが特に行きたい所も無いので賛成した。夏の猛暑の中でただ街を歩き回るよりは冷房の効いた図書館でノンビリと好きな本を読むのも良いかと思っていた。
自分の提案を受け入れられた冬菜も竜輝に分からないように安堵していた。図書館で自己紹介をした時に黒岩に言われた言葉が気になっていたのだ。特に予定も無い状態でこのまま図書館に行かないのは黒岩から逃げているような気がして何の根拠も無く図書館に行かないといけないと思ったのだ。
冬菜本人にもよく分からない意地のようなもので無計画に図書館に行くことが決定した。
1日に2度も図書館を訪れる男女2人組の学生は珍しいのか入口の受付で怪訝な顔をされた2人だったがそれ以上気にされた様子も無く図書館に入った。
竜輝自身まさか人を連れて1日に2度も図書館に訪れる日が来るとは思っていなかったので戸惑っている。しかし冬菜が少しだけソワソワしているように感じていたので特に口を挟むことはしなかった。
彼とて冬菜が黒岩を意識していることは分かっていたのだ。何か用があるのかもしれない程度には考えていた。しかし何かをしようとは思わない。余計なことをして冬菜を混乱させるのを避けたのだ。
「じゃあ好きな本でも取ってきましょうか?」
「そうね」
図書館ではお静かに。
この常識を守り冬菜も竜輝も必要以上に話そうとはしない。2人は一緒に本を探すようなことはせずにバラバラに好きな本を探すために別々の方向に歩み出した。竜輝はハードカバーの並ぶ棚に、冬菜は文庫本の並ぶ棚に向けて歩を進める。
竜輝は素直に本棚を物色し始めたが、冬菜は棚の近くで返却された本を並べている黒岩を見つけると本棚から離れて黒岩に小さく声を掛けた。
「こんにちは」
「あら、こんにちは」
緊張している様子の冬菜の囁き声に黒岩は小声ながらも嬉しそうに応えた。
「答えを聞かせてくれるのかしら?」
答えと言われて一瞬何のことだか分からない冬菜だったが直ぐに遊園地に行った時の感想を聞かれていたのだと思いだした。質問されるまで考えもしなかったのだから大分パニックになっていると自覚したが直ぐに収まるものではない。
平静を保てるまではまともに返せないだろうと思い冬菜は小さく深呼吸した。
「緊張していたの?」
「ちょっと。普段は先生や家族以外で社会人の人と話すことなんてありませんから」
「そうね。私が同い年でも同じ反応だったかもしれないわ」
あっさりと共感を示した黒岩はやはり社会経験のある大人なのだと思ったがそれ以上は無意味考えても無意味だと考えて冬菜は黒岩の質問に応えるために少しだけ間を置いて話し始めた。
「竜輝君と遊びに行った時の感想は、今言った方が良いですか?」
どこか挑戦するような、噛み付くような口調になってしまった気がして後悔したが今更言い換えるのもおかしいので黒岩の答えを待つことにした。この時ほとんど睨んでいるような目になっていたことは黒岩は言わなかった。指摘したら混乱してしまうだろうと配慮したのだ。
「今はお仕事の途中だから聞けないかな。アドレス交換でもしましょうか?」
どこか悪戯を思いついたような表情でそう切り返したのだった。
(そう言えば仕事場なんだった!?)
黒岩にアドレス交換を申し込まれた冬菜は自分の意識の低さに愕然とした。
ついさっき社会人なのだと、自分とは違い社会を自分の力で生きているのだと見せ付けられたばかりなのに何をしているんだと猛省したい気分だった。
『仕事中に携帯を弄ってたなんて内緒よ?』と嘯く黒岩と別れた後に冬菜はお経でも読もうかと冗談交じりに考えていた。精神統一に良いと言うし難しい感じばかりなので他のことを考える余裕は無くなるだろうと思ったのだ。
しかし、流石にお経だけをずっと読み続ける女子高校生を想像して不気味な気がした冬菜は竜輝に反省したいときに丁度良い本は無いか聞いてみることにしたのだ。
(流石に竜輝君でも反省したい時用の本は知らないかな?)
知っていたら竜輝の本への知識を疑うのだろうが、今は少しだけ竜輝の無感情な表情を見れば落ち着けるきがした冬菜だった。
(何を話していたんだろうな?)
ハードカバーの棚と黒岩が本を片付けていた棚は近い位置にある。そして本と棚の間から黒岩と冬菜が話しているを見た竜輝は話題が気になっていた。まさか自分が話題の中心に居るとは思わなかったが、冬菜と黒岩の共通の話題は自分以外に思いつかない。それ故に何の話をしているか想像できなかったのだ。
だが直ぐに目的の本が見当たらなくて冬菜が黒岩に聞いたのだろうと思い直し、目に付いた本を手に取る。ハードカバーとはいえ実用書が並ぶコーナーで、題名は『気になる相手を名前で呼ぶ方法』と書いてあった。
(実用書は、実は参考にできた試しがない……)
参考にする方法が間違っているだけなのだが、竜輝は自分に欠陥があってそれが原因なのかと考えていた。
その考え方自体が参考にする方法の間違いだと本人が気付くのは少し先のこと。
竜輝君、速く名前で呼びなさい
竜輝「……善処する」
それしないフラグだから
竜輝「頑張る」
では次回~




